2024年11月23日
1189 珍人生
この島に、30年前に本土から移住してきた人がいる。
コンクリで立派な家を建て、そのかわり冬場しか島にはいない夏場は本土へ帰るのである。
その家が空き家にならないよう、管理の名目で夏場だけY氏が利用している。
当然30年来、島へ来ているから、年齢的にもも50半ばである。
そのY氏の生き方が変わっている。
冬場はどうするかというと、本土のスキー場でインストラクターをしているという。
冬場にインストラクターで稼いだカネで、夏場は、他人の家を自由に使って気ままに生きているのである。
背丈も高く、顔自体も、結構モテるタイプだ。
そして島の民宿とも顔見知りになり、夏場は水着姿の女の子たちをいろんなポイントへ案内したりして、自由に生活している。
自分の家も持たず、結婚もせず、しかも常に若い女達が回りにはべり、不自由しない、ちゃんと人生が成り立っているのである。
スポーツマンタイプで、女性がかなり群がってくるはずだのに、うまくかわす術もあるようだ。
お金が無くても、自由で気まま、しかも女に不自由しない生活を30年も続けられる、まか不思議である。
団塊世代の人達は、働かざる者、食うべからず、としゃにむに働いて家庭を維持してきたはずだ。
そういう人達から見ると、いかにもこんな人生があるのか、一年だけでも体験したい、と感心させられる珍人生物語である。
M君は、20年前、二十歳の時に、この島に遊びに来た。
ちょうどその頃、島の人が民宿をしていたが、閑古鳥が鳴き、つぶれかかった一軒の民宿を自分が借り切るような形で、経営を引き継いだ。
島の人が民宿をやると、どうしても昔からの島料理であったり、結構虫がいるが、それも全然気にしない。
よってなかなか繁盛しないのである。
M君はかれこれ15年間、コツコツとリピーター客を捕まえ、そして嫁さんも確保、子供もでき、いよいよ自分の民宿を建てる計画を実行した。
土地を確保し、整地していると、どうも古井戸らしいものが出てきた。
誰かが、埋めた跡が残っていた。
村の古老に話を聞くと、確かにここには依然、家があって、間違い無くそれは、古い井戸であるとの事だった。
その古老は、あなたは大変幸運な男だ、島では昔から、井戸を埋めると、子孫末代まで、いいことがないと、言われている。
その井戸を見つけたのだから、ちゃんと生きかえらせれば、君には幸運がもたらされるであろう、と言ったのである。
誰かが埋めた形跡があり、庭も狭くなるので、そのまま埋めてしまおうかと思ったが、古老の話が気にかかり、生きかえらせることにした。
雨水を溜めるための、丸いタンクの使い古しをその井戸にかぶせ、真ん中に穴を開け、鉄パイプで、空気が通るようにし、子供たちにも危険が、及ばないようにしたのである。
コンクリ二階建て、島1番の立派な民宿が出来上がり、営業を開始すると、古老に言われた通り、見事に繁盛したのである。
開業してから2年、今ではお客を断るのが、大変だという。
中には、日程をずらせても宿泊できない、どういうことだと詰め寄るお客もおり、うれしい悲鳴どころか、本当につらいですよと嘆いている。
観光客の中には、その古井戸を見、それは何ですかと尋ねる人もいるという。
これこれしかじか、と話をすると、この古井戸のおかげで、私たちはこんな立派な民宿に宿泊出来たんだと、手を合わせるお客さんもいるという。
M君は、村の古老の話を聞き捨てにせず、おかげで自分は、言われた通り、大変な幸運に恵まれたと、感謝をしているとのことだ。
古井戸や、お客呼び込む、福の神
1188 スケベーじーさん
南の島には、個性豊かな老人達が多い。
自他共に認める、島で一番のスケベーじいさんがいる。
水着姿の観光客、女の子達が集まる休憩所へ何時もちょこちょこ出かけるじいさんで、若いピチピチした女の子を見ると、すり寄っていく。
あんたは肌が白い、顔立ちにも気品がある、京都の生まれであろう、とかなんとか言って、話しかけていく。
観光客も、明らかに島のじいさんだと言う事が分かるので、別に拒否反応も示さず、また南の島ゆえ開放的に色々な話をして過ごす。
じいさん、毎日若い女の子のケツを追っかけ、ばあさんにやきもち妬かれないのか、と聞くと「あはー ばあさんは、とっくに死んだよ」
おい おい 生きている人を殺すなよ!
ばあさんが死んでいたら、あんたはとっくに死んでいるよ!
このじーさん、ボケているのか、ばあさんが世話しなければ、生きて行けないはずだが、脳内プログラム、三途の川、いや海の景色を楽しんでいるようだ。
ワシは若い娘たちから、パワーをもらっているから元気でいられる、と本気でしゃべっている。
そのじいさんがニコニコ笑って、おい! ひかる、この島は格が上がったぞ、と言う。
よくよく話を聞くと、以前は観光客に年寄りが多かった。
しかし最近では、若くてしかも美人だけが、こぞって島へ訪れるという。
だからこの島の格が上がったと、じいさんは主張するのだ。
確かにここ数年で、この島へ訪れる観光客は、若い女の子の比率が格段に上がったことは事実である。
この地区は今、離島観光ブームでかつてない程、沸き上がっている。
石垣市を中心として、黒島には毎日15便ほどの往復便がある。
この島より少し小さいが、竹富島は文化財に指定され、牛車での島めぐり、赤い瓦屋根、道路などの景観が観光客に大人気。
黒島の3倍以上、毎日50便が、石垣島から観光客を運んでいる。
隣の小浜島は、黒島よりちょっと大きいが、NHKの朝ドラちゅらさんドラマの舞台となって、その島も、毎日33便くらいの往復便があり、観光客で沸きかえっている。
また、隣の西表島は、東洋のアマゾンと呼ばれるだけあり、沖縄本島に次ぐ2番目に大きな島であるため、そこも、石垣島より、40便前後の船が往復している。
また、船の大きさも、定員数も格段に違い、黒島便は小さな船が15便しかないということは、いかにこの島が観光地化してないかということが分かる。
また竹富島や小浜島、西表島などは、ツアー観光のコースに取り入れられている。
黒島は民宿の数も少なく、大勢の団体が来た場合、トイレや休憩所など、とても対応できない。
石垣島の離島桟橋で見ていると、三角の旗を持ったツアーガイドが、大声を張り上げ、ムカデのごとく、竹富島や小浜島、西表島などへ渡っていく。
水着に飽きる?
若い人達は、どうしても中高年、団体客、ぺちゃくちゃ食べ、スピッツの如く、しゃべりまくるあの集団には、辟易するようだ。
よって若い観光客が、締め出される形で、今度は黒島へ押し寄せる。
だからスケベーじーさんの言う通り、海岸へ行くと、若いピチピチしたギャルたちが、ごろごろいる。
この島で2、3年も生活すると、誰でも水着に飽きてしまう。
海のない、あまり水着に出会える機会の少ない人達から見ると、嘘だろうというかもしれないが、マジな話だ。
シーズンになると、水着での集落内歩行はやめましょう、との立て看板も熱いので守れない。
また、格安航空券も国内で一番長い距離があるため、割安感があり、東京の人が軽井沢、箱根や伊豆半島へ出かけるように、この地区へ人が集まる。
南島楽園、まだまだ続くようだ。