ITmedia Mobile 9月11日(日)6時10分配信
ポケモンGOが「あえて隠してきた」もの
画像:ITmedia
「Pokemon GO」(以下、ポケモンGO)をキーワードに10〜40代まで幅広い年代を集めた「ポケモンGO座談会」を実施し、さまざまなテーマで話し合った(座談会は8月中旬に実施)。
【画像】ポケモンが隠してきたもの
今回は、同じ米ナイアンティックが開発したIngressを引き合いに出し、「IngressとポケモンGOの一番大きな違い」「IngressにあってポケモンGOから排除されたもの」「ポケモンGOの物足りなさと今後への期待」などについて語った。
(構成:ITmedia村上)
●参加者プロフィール
すずまり:
40代のライターで非ポケモン世代。IngressのコアユーザーでポケモンGOはβテストから遊んでいる。ポケモンGOのレベルは17(座談会当時、以下同)。
鳥羽:
「トバログ」を運営しているブロガー。23歳のポケモン世代で、ポケモンGOはリリースから3日でレベル22に。お気に入りはユンゲラー。
サダタロー:
ポケモンは全く分からないアラフォーの漫画家。ITmediaにてサダタローの「シェアさせていただきます!」を連載中。
Sakai:
Ingressコアユーザーで、ポケモンGOはβテストから遊んでいる。40代の非ポケモン世代だが、ポケモンGOのレベルは20。
あると:
14歳のギリギリポケモン世代。お父さんとIngressをしていた流れでポケモンGOもすることに。そこまでハマっているわけではなく、レベルは10。
村上:
この記事の編集担当。27歳のポケモン世代でポケモンGOのレベルは21。とりあえずピカチュウをゲットするまでポケモンGOを続ける予定。
●ポケモンGOはIngressとここが違う!
村上 Ingressユーザーから見て、ポケモンGOとIngressの一番の違いって何だと思いますか?
Sakai Ingressって基本的に1カ所にとどまって遊ぶゲームではないんですよね。スキャナ(プレイ画面)を見てると、あそこに行かなきゃ、ここ行かなきゃって思うんで、気が付けばすごい距離を歩いてる。それに対して、ポケモンGOってポケストップがたくさんある場所なら1カ所でも成立しちゃいますよね。歩き回るというより、「目的の場所に行く」という感じですね。
すずまり ポケモンGOの「ルアーモジュール」(ポケモンが出現しやすくなる)の効果って30分もあるけど、Ingressなら普通1つのポータルに止まってる時間は5分もかからない程度。それで2、3時間歩き続けて、気がつくと「ここどこ?」って思うこともあります。図鑑を埋めるために新しい場所に行くというのはあるだろうけど、明かにIngressの方が歩くから、最近ではIngressのついでにポケモンGOを起動しておいて、たまごをふ化させてます。2台持ちですね。
Sakai そうです。それが普通のスタイルです(笑)。
あると Ingressは所属する陣営でポータルを取り合ったり、勝ち負けを争ったりと分かりやすいですけど、ポケモンGOは陣営の色を決めても今のところあまり意味はないですよね。だから、私はまだどの陣営にも所属していません。
村上 Ingressみたいに所属する意味が出てきてから初めて陣営を決めるってことですか?
あると はい。それで一番面白そうなところにします。
●IngressにあってポケモンGOにないもの
すずまり そういえば、ポケモンGOって今のところゲーム内でヘイトを買う要素がないですよね。このユーザーが嫌いとか、誰かがいつもうちのポータルを焼きに来て気持ち悪いとか、そういうのが全然ない。 Ingressだと、いつ誰がどこを攻撃したかっていう通知が逐一飛んでくるんで、その通知を受けて家から飛び出し、後をついていって焼き返すなんてことも起こります。一方、ジムバトルは終わるまで誰が倒したか分からないし、リアルでそれっぽい人が立ってても「この人かな?」って思う程度。勢力マップもないから、どの陣営が優勢かとかも分からないし。
Sakai 公園に人が集まってて気持ち悪いっていうヘイトはあるかもしれないけど、特定の誰かに対するヘイトは今のところないかな。調整されていますよね。
すずまり ユーザー層も、Ingressの方が年配の人が多い印象。自分の時間を持っている人が多い。ポケモンGOは子供から親、おじいちゃんおばあちゃんまで、まさに老若男女がやってる感じ。あとは、プレイしてる人のタイプが違うのかなって気がします。
サダタロー ヘイトが少ないってことは、競技性が低いってことですかね。
すずまり そうかも。Ingressだと、自分のポータル、自分の活動エリアっていう所有感がすごい生まれやすいので。自分のエリアを焼かれたから、今度は自分が相手の活動エリアにいって仕返ししてやろうってことが起きやすい。その人の活動範囲も分かっちゃうし。
Sakai ターゲットとなるユーザーが大衆化して最大公約数を取った結果、物足りないと思っていた要素は実は意図して外されていたのかなと思いました。ユーザー同士がぶつかり合う部分、思わず熱中してしまう要素などですね。今後の機能追加でそれらの要素をどこかで入れてくるのかな。全然分からないですけど、ゲームシステムがどう変化していくのかはとても楽しみです。
サダタロー そういう要素を排除した結果、飽きっぽさにつながってるのかもしれない?
Sakai あるかもしれない。Ingressと全く同じようなシステムだったら、ここまで爆発的な人気にならなかったんじゃないかな。最初のうちは特に。
村上 ユーザー層の広がりに合わせて安全になった一方で、とがった要素もなくなってしまったと。トラブルを事前に回避したいという運営の意図ですかね?
すずまり それはあるかと。ここまで大衆化すると、トラブルが起きたときにナイアンティックは抱えきれないと思います。Ingressの細かいトラブルも抱え切れてないのに(苦笑)。仲裁に入るモデレータもいないし。
Sakai ポータルからポケストップができて、インフラができあがって、落ちないサーバができあがって。まさにポケモンGOがブレイクするために、3年間Ingressというβテストをさせられてたというね(笑)。
すずまり IngressはポケモンGOのβテストだったのか(笑)! 確かに前の座談会にもあったけど、Ingressの中で起きたトラブルとか、人間関係の超面倒臭い話とか、そういうのは起きなそうですね。
●ポケモンGOは「手段ではなく目的」だ
Sakai 今のポケモンGOは、(やることが限られているので)ある程度やったらマンネリ化しちゃうかもしれない。でもどんどんアップデートがかかっていくはずなので、いろんな楽しみ方を見つける人たちが出てくるはずです。
すずまり 被災地とのコラボも発表されてるので、何かイベントは絶対ありますね。それこそ、これまで訪問したことがない場所に行く理由にもなるし。Ingressでも被災地を訪れたことが、ささやかながら復興協力になりました。どんな形になるのかは楽しみです。
Sakai Ingressってやりこんでいくと、レベルを上げること、敵より領土を広げること、「ここはオレの場所だ」と主張することなどに固執する時期が出てくる。ただ、ある程度レベルが頭打ちになったときに、「さぁ、これからどうしよう」って立ち止まる瞬間が来るんです。そのままやめちゃう人もいれば、新しい遊び方を見つけてくる人もいる。そういう時期を乗り越えた人たちがみんな口をそろえていうのは「Ingressは目的ではなくて手段だ」ということ。Ingressを通じていろんな人と知り合ったり、いろんな場所に行ったり、新しい発見ができたりっていうところに、Ingressの面白さがあるんですね。ポケモンGOがそうなるのは結構早いと思うんですよ。Ingressという下敷きがあるので。
サダタロー 手段っていうのはよく分かりますね。逆に言えば、僕がネットゲームを苦手な理由はそれなんです。そこでの交流が目的でゲームをしてるんだろうなって感じるので。だから、家で1人で(オフラインの)家庭用ゲームをやってます。
すずまり 職業、年齢、性別を全部超えて仲良くなれる機会があるんですよね。Ingressなら「陣営どっちですか」って聞いて、同じなら「わー! やった!」みたいな。そこで一気に話が広がることも。同じ陣営じゃなくても、同じゲームをやってる仲間ってことで会話ができる。
サダタロー プレイ中に直接会う機会があるっていうのはデカいですね。時間だけじゃなくて場所も共有できるし。ただ、僕は会ったことない人とコミュニティーで仲良くするのはすごい苦手なんですよね。
すずまり Sakaiさんと知り合ったのもIngressです。プレイ中に実際に会った人がいて、その方から地元のコミュニティーに誘われたんですよ。今ではこうして親子で座談会に参加していただいているという。他にもたくさん友達ができました。社会人になってから、お宅に伺えるほど仲良くできるご近所さんってなかなかできないものですよ。安心感もすごくありますし。
Sakai ポケモンGOでは、まだそこまで濃い関係は難しいのかもしれないですけど、「この公園に来ると必ず会える」「あいさつをしたら友達になれた」「ポケGOで恋が生まれた」とか、そういうことがこれから起きてくるかもしれないですよね。
すずまり いいですねー。犬の散歩がてらとかね。人間関係がちょっと広がるきっかけにはなりますよね。「最近この辺は何がとれますか?」みたいな(笑)。
村上 最近、年代を超えた共通の話題ってなかなかないですからね。
すずまり ただ、Ingress民が多い環境に慣れすぎたせいか、最近、IngressもポケモンGOもやってない人と何をきっかけに会話すればいいのか考えちゃうんですよね……。
一同 (笑)。
●「物足りなさ」と今後の期待
全3回にわたってお届けした「ポケモン座談会」では、未プレイの人もいる中、それぞれが自分なりの楽しみ方でポケモンGOをプレイしていることが分かった。女子中学生がポケモンにどんな思いを抱いているのかを知ることができたのもなかなか新鮮だった。
共通していたのは、いずれの世代もどこか不完全燃焼気味であるという点。非ポケモン世代がなんとなくハマりきれてないのは分かるものの、昔のポケモン世代も、ただ図鑑を埋める作業や今のジムバトルには物足りなさを感じているようだった。
現在はトレーナー間でコミュニケーションを取る手段が乏しく、安全である一方で仲間意識やドキドキ感が損なわれており、横のつながりも作りにくい。
Ingressでは、エージェント名をロングタップすると、経験値やメダル、こなしたミッションなどの実績を見ることができる。ポケモンGOでも同じことができると、自分以外のトレーナーの存在を意識しやすくなるのではないだろうか。自分の図鑑の公開設定などがあっても楽しそうだ。日本では捕まえられない限定ポケモンを持っている人がいたら、ポケモンではなく相手を捕まえてどこに行ったのか聞いてみたくなりそうである。
先日もアップデートで「ポケモンを調べてもらう」機能が追加された。周辺ではタマタマを見てもらうトレーナーが続出してかなり怪しい展開となったが、これからもアップデートによる機能追加には期待したい。
筆者も最近やっとレベル21になったので、ポケモンGOを口実に、また新たな飲み会を開催したいと考えている。ポケストップが2〜3個入るリーズナブルなお店を探さなくては! 気心知れた仲間たちと楽しく飲み交わすのが、私のポケモンGOスタイルになりつつある。
(すずまり)
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