『大災難P.T.A.』や『カーリー・スー』などの監督、そして『ホーム・アローン』の脚本で知られるジョン・ヒューズは、80年代を代表する青春映画監督/脚本家/プロデューサー。今でも固定ファンを持ち、語り継がれる『プリティ・イン・ピンク』(製作)などの傑作を世に送り出したジョン・ヒューズの作品を紹介します。
ヒロインを演じた モリー・リングウォルドの人気に火を点けた青春映画。花嫁介添人のピンクのドレスを着たモリ—が超キュートで、もうこれはモリ—のための映画、といってもいいくらい。サマンサのことが大好きで付きまとうヘナチョコ男子役で『ブレックファスト・クラブ』のアンソニー・マイケル・ホールが共演。
乱痴気騒ぎパーティのシーンなどを見ると、日本の高校生は大人しいなぁ、と妙に感心してしまう。80年代当時のアメリカの高校生事情を垣間見ることができて興味深い。発育程度は日本より明らかに早いが。ファッションや音楽などが、80年代バリバリで妙に懐かしく感じる。
大人になってから見ると、意中の男の子の前ではロクに話せなかったことなど些細なことで一喜一憂して、恋愛が一大事だった学生時代を思い出し、甘酸っぱい気持ちになる。チョイ役で、名脇役姉弟ジョーン&ジョン・キューザックが出演してるので探すのも面白いかも。
【胸キュンポイント】
何といってもやはり16本のキャンドルを立てたバースデイ・ケーキ越しに、やっと恋を実らせた二人が初々しいキスを交わすラストシーンでしょうね。王道です
ジョン・ヒューズお得意の濃密な一日を描いたドタバタ劇。要領が良くておまけに強運の主人公フェリス少年を演じるのは『セックス・アンド・ザ・シティ』のサラ・ジェシカ・パーカーを妻に持つ マシュー・ブロデリック。『プラトーン』のチャーリー・シーンも、チョイ役(でもインパクト大!)で出ている。
マシューは『ファミリー・ビジネス』(89)でショーン・コネリー、ダスティン・ホフマンと『ドン・サバティーニ』(90)でマーロン・ブランドと、大物俳優との共演に恵まれ、最近では舞台でも人気の中堅俳優として活躍している。フェリスとは180度違うゲイ役に挑んだ『トーチソング・トリロジー』(88)は、忘れられない余韻を残す秀作だ。
そんな芸達者の彼が、あのおっとりしたオトボケ顔で飄々と皆が羨むような自由な一日を楽しんでしまうお調子者を好演して、この作品をヒットに導いた。そんなハチャメチャながらもそのハメの外しっぷりが小気味よい、子供から大人まで楽しめる、スカッとしたい時に見るには最高の一作だ。
リッチな親友に父親の高級車を持ち出すようそそのかし、結果的に彼を窮地に追い込んでおいて自分はちゃっかり家に戻り「良い子で寝てました」みたいなフリをし通すフェリスは、真面目な日本人から見るとちょっと無責任すぎやしないか、と腹立たしく感じないこともない。いつもお調子者の兄のあおりを喰うことになる妹のイライラの方に共感してしまう。けれど、ここまで調子よく生きられたら人生楽しいだろうな、とも思わずにいられない。人生楽しんだ者勝ちですからねー。
【胸キュンポイント】
この映画の場合、胸キュンというよりも胸スカッて感じです、ひたすら。
着飾ってダンスに興じる卒業パーティ、 プロムに誰と行くかはヤング・アメリカンにとって最大の関心事。そのプロムを前に、恋に悩む純情な女子高生を、当時人気絶頂の モリー・リングウォルドが、優しいけど優柔不断な金持ちのボンボンを アンドリュー・マッカーシーが演じた。
アンディに恋する親友を『恋人ゲーム』でデミ・ムーアと共演したジョン・クライヤーが、ブレーンの嫌味なボンボン友達をジェームズ・スペイダーが演じている。『スターゲート』でブレイクしたジェームズはこの頃、同じような脇役ばかり続いていた。
次の『恋しくて』同様、監督はハワード・ドゥイッチ。製作総指揮を担当したジョン・ヒューズにより、彼の秘蔵っ子としてモリ—は一躍アイドルに押し上げられた。「ピンクといえばモリ—」というほどピンクの似合う彼女を真似て、当時女子高生のピンク着用率が異様に上がったとか。赤いラジカセ、ピンクの電話、薄いピンクのベッドカバーと、ピンクづくしのアンディの部屋は、恋に恋する女子高生らしさ全開。少しエキセントリックだけど、なぜかキュートな彼女のファッションも要注目。
貧富の差による恋の試練は、いつの時代も二人の愛を試す絶好の題材。そして『すてきな片想い』同様、結局ヒロインはちょっとイタい親友よりもハンサムな男の子を選ぶのね、というところがリアル。涙に暮れるヒロインを慰める特権はあっても、最後は彼女の恋のために背中を押すのが親友の役目、実らない恋はどう転んでも実らない…
【胸キュンポイント】
アンドリュー・マッカーシーのファンとしては、気になっているアンディに近付くため彼女のバイトするレコード店に勇気を振り絞って入っていくブレーンのおどおどぶりがキュンキュンくる。そんなシャイな彼も、親友の男の子とプロムに現れたアンディを見て、ついにプライドをかなぐり捨て、心からの「アイ・ラブ・ユー」を告げて去ろうとする。ロマンティックなラストシーン、もう言葉はいりません
恋する気持ちを伝えたいのに、彼は学園のマドンナに夢中で女の子扱いさえしてくれない。キースに頼まれて仕方なく恋の助言をするうちに、自らキスの練習台になったワッツ。初めての好きな人とのキスなのに、彼が思い描いているのは私じゃない…。そんな切ない女心が胸を打つ不滅の青春ラブストーリーだ。
ありがちな設定のラブストーリーを成功に導いたのは『フライド・グリーントマト』(91)、クリスチャン・スレーターと共演した『マンハッタン花物語』(95)などの確かな演技で実力派女優としてブラットパックとは距離を置いたヒロイン、ワッツ役の メアリー・スチュアート・マスターソンの健気な演技と、製作を務めたブラットパックの生みの親ジョン・ヒューズの力だろう。
鈍感な幼馴染キースを演じるのは『エレファントマン』『ザ・フライ』の エリック・ストルツ、そしてキースが憧れる学園のマドンナを『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の リー・トンプソンが演じている。
【胸キュンポイント】
なんといってもワッツが「I don't need to do this, you know.」と憎まれ口をききながらもキスの練習台になるシーン。ああ、切ない〜!と胸キュン。そしてラスト、気を利かせて身を引き、二人に背を向けたワッツがボロボロ泣きながら遠ざかるシーン。ショートヘアのメアリー・スチュアート・マスターソンの可愛いこと!『ゴースト』のデミ・ムーアを彷彿とさせるキュートさだ。
『すてきな片想い』と『プリティ・イン・ピンク』では、親友だった男の子側の恋は報われず、ヒロインはハンサム・ボーイとハッピーエンドだったが、果たしてこの映画の中でヒロインは友情を恋に発展させることができるのか…。胸をキュンキュンさせながら、ぜひ確かめてみてください。独特のファッションと音楽で80年代を思い出しながら。
★次回は、ブラットパッカーの出世頭トム・クルーズの『トップガン』を中心にお送りします。
『新旧ミリタリー映画対決』は こちら へ。
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