『愛と青春の旅だち』VS『トップガン』 言わずと知れたリチャード・ギア トム・クルーズの出世作。ほぼ同じ頃に作られた映画なので新旧といえるほどの差はないのですが、リチャード・ギアはブラットパッカーではないので、同じ 航空士官モノでもけっこう違う中身を楽しんでください。
どちらも好きな映画ですが、やっぱり私は『トップガン』に軍配を上げるかな
★元祖エア・フォース映画であり、ロマンティック・ムービーの金字塔
『愛と青春の旅だち An officer and a gentleman』
(1982/米)テイラー・ハックフォード監督
【ストーリー】海軍航空士官学校の新人ザック(リチャード・ギア)は鬼教官フォリー軍曹のもとで厳しい訓練に励む。そんな彼らに熱い視線を送る町工場の娘たちの一人、ポーラ(デブラ・ウィンガー)と恋に落ちたザック。が、妊娠した恋人と結婚することを決め、訓練を離脱した親友が「士官としか結婚しない」という恋人にショックを受け自殺する事件が発生。「玉の輿を目当てに士官候補生を狙う貧しい娘たち」に注意するようにという教官の忠告を思い出したザックは、卒業を前にポーラの愛を信じられずに悩む。一方、玉の輿狙いだったはずのポーラは、辛い生い立ちのため屈折した内面を持つザックを真摯に愛し始めていた。13週に及ぶ過酷な訓練を終え、晴れて少尉に任官したザックが下した決断は…。
>リチャード・ギア と デブラ・ウィンガーを伝説の域にまで押し上げたロマンティックな元祖 玉の輿映画。
アカデミー歌曲賞を受賞した”Up where we belong”をバックに、真っ白な士官服に身を包んだ凛々しいザックが町工場へ乗り込みポーラを抱き上げるラストシーンはあまりにもロマンティックで、まさに邦題の示す通り万感の想いがこみあげる秀逸さである。
士官の制帽を被せられたデブラ・ウィンガーは可愛らしく、現代のシンデレラとして『プリティ・ウーマン』(90)でジュリア・ロバーツが登場するまでは 玉の輿ヒロインNO.1の座をキープするのだ。ジゴロ役などですでに多くの女性ファンを持っていたギアだが、王子様キャラとして世界中の女性のハートを鷲掴みにしたのは、この映画の大ヒットによってだった。
地道な努力で社会的地位を勝ち取るザックと貧しい娘ポーラとの恋愛を軸に描いたこの作品ではカッコイイ空撮こそ出て来ないが、人生という大きなテーマをロマンティック且つ真摯に描き、ブラットパック映画とは一味違った傑作として未だに根強い人気を持つ名作に数えられている。
リチャード・ギア Richard Gere
これだけ「 リッチで優しいロマンス・グレー」のイメージ路線を順調に歩み続けている俳優はいないだろう。この映画の中では貧しい生れから空軍士官へと這い上がるハングリーな若者を演じているが、町工場の娘から見たら豊かな将来は約束されている成功者の役だ。
この超強烈なお姫様抱っこのラストで女性をノックアウトした王子様キャラが確立されてからは『プリティ・ウーマン』(90)、『トゥルー・ナイト』(95)、『オータム・イン・ニューヨーク』(00)と甘いマスクをいかしたリッチなおじ様役で安定した人気を維持。『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』(15)でも新キャラとしてやっぱり二枚目ぶり健在をアピールしていた。
ギアといえば熱心な 仏教徒としても有名だが、仏教は自分の人生を豊かにしてくれただけでなく、60歳を超えても捨てられない性欲の抑制に役立っている(未だに奥様に欲情してしまうのだとか…)とも語っている。さすが、尽きない性欲というのも素敵なロマンス・グレーで居続けられる要因のひとつなのね
だからこそ『背徳の囁き』(90)、『愛という名の疑惑』(92)、『運命の女』(02) など、巻き込まれ型のちょっとエロティックな映画へのオファーが後を絶たないんだろうなぁ
★リアリティを追求した本格エア・フォース映画の傑作
『トップガン TOP GUN』
(1986/米)トニー・スコット監督
パイロットの挫折と再生を描いたこちらの新空軍モノは、 トニー・スコット監督(『スパイ・ゲーム』)お得意の空撮が圧倒的カッコよさで観客を魅了し、 トム・クルーズを一躍スターの座に押し上げた。空軍の全面協力のもとに撮影されたリアルな戦闘機のシーンは圧巻で、冒頭からゾクゾクさせられる。
玉の輿ロマンティック・ラブに焦点が当てられていた『愛と青春の旅だち』とは違って、こちらは主人公マーヴェリックの人間的成長とリアルなトップガンの世界が主軸。「カッコよさ」だけではないストーリーも、ドラマとして見応えがあると言っていい。
アカデミー歌曲賞を受賞したベルリンの歌う主題歌”Take My Breath Away 愛は吐息のように” や、ケニー・ロギンスの “ Danger Zone” などを収めたサウンド・トラックは驚異の売り上げを記録し、「 サントラ」というものを定着させるきっかけとなった。また、テレビでこの映画が放送されるたびに空軍志願者が増えると云われる。
とにかくスカッとするカッコよさ、そして音楽とともに「やってやるぜ!」的な上向きな気持ちにしてくれるこの映画、数年に一度は必ず見たくなる名作だ。
トム・クルーズ Tom Cruese
『アウトサイダー』(83) 以降、あくまでも「主役」にこだわった野心的なトム・クルーズは、青春群像劇組とは一線を画す独自路線を脇目も振らず突き進んだ結果、ついに3年後のこの映画の大ヒットにより、大スターの仲間入りを果たしたブラットパッカーの出世頭である。
『卒業白書』(83) では熟女 レベッカ・デモーネイ演じる人妻に、『トップガン』では『刑事ジョン・ブック』でのハリソン・フォードの相手役でブレイクした ケリー・マクギリス演じるクール・ビューティ教官に、果敢にアタックしてモノにするトムは、実生活でも最初の結婚相手が ミミ・ロジャースという年上の女優(後に監督業でも活躍)。若い頃は年上キラーで名を馳せた。
オーストラリア映画で目をつけていた ニコール・キッドマンを『デイズ・オブ・サンダー』(90) の共演相手に指名し、めでたく結婚にこぎつけたことでも有名なトムは、一度手に入れると決めたものは、確実に手にしているようだ。
女性にしても、出演、製作映画にしても「こうする!こうなる!」という絶対的な自信と強い意志による ” 実現力 ” の高い人だなぁ、とあの力強い生命力に満ちた目を見るたびに思う。そしてそのための努力も惜しまないのがトム・クルーズという人。この『トップガン』も最初は出演を渋っていたが、出ると決めたらパイロットの資格まで取ってしまう徹底ぶり。超ストイックだ…。
スタントをほとんど使わない『ミッション・インポッシブル』シリーズでも見られる半端ないリアリティは、そういった努力から生まれる。だから彼は次々と精力的に映画に出続け、人々はそれを見ることを楽しみにしているのだろう。私でさえ特にファンではないけれども、トムの映画だったら映画館に足運んじゃおうかな〜、と思いますもん。
主にアクション映画俳優としてのイメージが強いトムではあるが、乱れた生活を送るロック・スターを演じた『ロック・オブ・エイジズ』は意外にハマっていて面白かったので、軽いコメディ映画なんかにも出てくれたら嬉しいなー、と思う。
★『愛すべきブラットパック映画?D 欧米学園モノ対決』は こちら へ。
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