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少し前までスコットランドのコミュニティ、フィンドホーンで暮らしていた、さすらいびとです。 I'm a wanderer who were living in Findhorn community in Scotland till recently.
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2018年07月27日

スペイン巡礼記 ?C 3日目:ロルカの快適な宿 

Pilgrimage in Spain ?C A comfortable albergue in Lorca【4.2011】

Uterga ウテルガ 〜 Lorca ロルカ(20.9km)


ウテルガの村を出ると、プエンテラレイナまで人家のほとんどない山道が続くが、今日は昨日と違って山越えというのではなく、比較的平坦な道のりだったので、1時間4キロのペースで歩くことができ、予定の16キロ地点には12時過ぎ頃着いてしまった。

P1030181.JPG

今日はほとんど誰とも会わないなぁ、と少し心細く感じながら16キロ地点の村の手前のベンチで休んでいると、リンガーハットを被った男の子がリンゴを齧りながら近づいて来た。

今日はどこまで歩くのかと聞くので、目的地は目の前の村なのだがまだ歩けそうだから先へ行くか、雨の予報で途中雨に当たるのも嫌だからここで泊まるか迷っていると答えると、彼は2週間しか休みが取れないので一日40キロ歩かなければサンティアゴ・デ・コンポステラにたどり着けないという。

しかも彼は地図も持たずに自分が今どこにいるかわからないまま歩いているというので、私が地図を見せると「こんな便利なものがあるんだね」と気興味深げにしばらく読みふけっていた。


P1030184.JPG
彼と話しながら再び歩き出し、どこから来たのかとか仕事のことなど話しているうちに、泊まる予定だった16キロ地点の村を通り過ぎてしまったので、ええい、ままよ、もう5.4キロ先のロルカまで行くしかないと覚悟を決めた。

⇐通り過ぎてしまった町

オーストリアから来たというその男の子は一日40キロ歩くだけあってペースが速かったのだが、私が遅れないように気を遣いながら歩いてくれていたので「私はまた休むから先に行って」と途中でお別れした。若い人たちはさすがに健脚だ、羨ましい。

道はその後、山を登り始め、曲がりくねった細い道は次第に険しくなり、石や木の根が目立つ歩きにくい道へと変わっていった。

オーストリア人の男の子の姿はあっという間に消え去り前後に人影が見えなくなると、グレイが濃さを増していく分厚い雲の下、急に心細くなってきた。小さな峠を越えると次は谷底と思われる道へ導かれ、本当にこの道で良いのだろうかと、なかなか現れてくれない黄色い矢印を恨みながらも足早に歩く。

鬱蒼と木々が茂る森の中では、大きな蚊も時々ぶつかってきたりして、一層恐怖心を煽る。スペインに熊はいないのだろうか。

巡礼路が車道から離れて久しく時間が経っている。5.4キロとはこんなにも長いものだったろうか。もうロルカに着いてもよい頃なのに、車の音は全く聞こえない。

どこまでこの森が続くのだろうと半分泣きそうになった頃、遥か向こうの木々がまばらに見える辺りで赤や青がちらつくのを見た気がした。巡礼者の背負うリュックだ。道は合っている、前を人が歩いている!

途端に希望の光を見たように気力が戻って来て、引き摺るようだった足取りも少しだけ軽くなった気がした。

しかし、猶予はない。少し前から顔に雨粒が当たるようになり、ウィンドブレーカーのフードを被らなければならなくなっていた。頭上に覆いかぶさる木々が途切れた所で激しい雨に打たれたら、すぐにずぶ濡れだ。雨合羽と折り畳み傘は持ってはいるが、歩きながら装備するのは非常に面倒くさい、急がなければ。

先ほど巡礼者の背負うリュックが見えていた辺りにさしかかり、急な上り坂を這うようにして登ると、急に道が開けて車道へ出た。

P1030182.JPG


「毎日が賭け I make a bet every day」

5分ほど歩いてついに村へ入ると、道の両側に2軒向かい合ってアルベルゲが建っていた。どちらも7ユーロという看板が出ている。
辿り着いた集落にひとつしかアルベルゲがない場合は簡単なのだが、2軒以上ある場合、どこに入るかによってその晩の快適さは違ってくる。その宿が当たりなのか外れなのかは入ってみなければわからない。毎日が賭けである…。

私は勘にまかせ、右側のドアが開いている方のアルベルゲに入った。結果はアタリ。4人用の部屋に2人だけ。とても快適な滞在となった。

前夜、20人ほどの男女相部屋で、隣のベッドだったヴィッキーの宣言通りの凄まじい鼾で全く眠れなかったため、パンプローナと続いて2晩まともに寝ていないことになる。今夜こそ眠りたいと思っていた私にとってこのロルカの宿は、40日間通しても5本指に入る快適な宿となった。

古い民家や、教会などの施設内にあるアルベルゲは、一つの部屋の収容人数が多いということが、旅を進めるうち徐々にわかってくる。

ロルカの宿は比較的新しく、4人部屋や2人部屋というように少人数部屋がたくさんあるB&Bのようなこじんまりとしたアルベルゲだった。2Fの窓からは、真向かいのアルベルゲの数十のベッドが並ぶ部屋が見えたので、私はまさに当たりくじを引いたのだった。

P1030186.JPG

その夜、バルで夕食のテーブルを囲んだゲストは8人。私と南アフリカからの夫婦を除いて5人がドイツからだった。

前夜ウテルガで案内されるまま12ユーロの夕食を取ったのだが、食事を付けるかどうかは巡礼者の自由である。限られた予算で巡礼する若者の多くは夕食を頼まずに食料品店で買った安い缶詰やフランスパンとチーズといった質素な夕食で済ませていた。

通常アルベルゲで夕食を頼むと、プリフィックスディナーとなる。
第一の皿としてスープかサラダ、第二の皿としてメインの肉か魚、そして飲み物(たいていの人はワイン)とデザートといったスペインのレストランで通常出されるディナーの内容と同じだ。幾つかからチョイスできる宿もあるし、決められたメニューしかない宿もある。値段は宿によるが、大体が10ユーロ前後だった。

しかしリッチな欧米人の、多くは夫婦で巡礼している人々が毎晩とるそのコース・ディナーを毎回食べる金銭的余裕は私にはなかったし、何より量が多いのである。
10ユーロも払って半分しか食べられない私は、何だか損した気分になるのだ。

そこでロルカでは、オーナーに夕食について聞かれた際、バルで軽食をとることはできるかと尋ねたところ、かろうじて英語のわかる彼は私の意図を理解してくれ、メニューは決まっているものしか出せないので、第一の皿だけにして安くあげることも可能だと提案してくれた。
どこでも必ずオイルたっぷりのドレッシングがかかって出てくるサラダは大きな皿に野菜やオリーブがたっぷり載っているので、私にはそれで充分だった。

オーナーがサービスでコーヒーをつけてくれ、その夜は4ユーロでちょうどいい夕食をとることができ、ドイツ語が席巻する中、南アフリカからの夫婦と英語での会話を楽しんだのだった。

そしてプライベートが確保できる完全個室のバスルームも少ない人数で混み合うことなく、夜は静かな環境の中、久しぶりの快適な眠りについた。


★スペイン巡礼記?Dへ続く…
(表題上部の>>をクリックしてください)
タグ: ロルカ
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