4月10日(巡礼10日目) Ciruena シルーニャ 〜 Viloria de Rioja ヴィロリア・デ・リオハ (20km)
「サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダへの浄化の道
The road of purification to Sant Domingo de la Carsada」
シルーニャからサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダへの5.5キロは素晴らしい道のりだった。
出発した時から今にも雨粒が落ちてきそうな雲が低く垂れこめた灰色の空だったのだが、やはり途中から霧雨になり、サント・ドミンゴ・デラ・カルサーダの町に入る頃には、ついに傘をささなければならないほどの降り方になってしまった。
雨が激しく降っている間、ちょうど通りかかったサント・ドミンゴ・デラ・カルサーダのアルベルゲで雨宿りさせてもらい、1時間半後に再び歩き出す。
なのでやっと辿り着いたアルベルゲの入口でリュックを放り出すなり倒れそうになっていると、オーナーの男性が走ってやってきて片手で私の荷物を持ち、片手で私を支えながらベッドへ連れていってくれた。
「グラシアス」とだけ言うのが精一杯の私に「とにかく休みなさい」と言ってオーナーは戻っていった。そして私はほとんど荷物も解かないままリュックから引っ張り出した寝袋にくるまり、やっと体を横たえることができたのだった。
暖かいもてなしのアルベルゲ An albergue of warm hospitality
ヴォロリア・デ・リオハのそのアルベルゲは、巡礼中知り合い結婚したブラジル人とイタリア人のご夫婦が営んでいた。必死に歩き続け、やっと辿り着いたこの家庭的なアルベルゲのダイニング兼リビング・ルームでは明々と暖炉に火が燃えていて暖かく、止まりそうになっていた私の心臓を再び動かしてくれた。
そして夕食は宿泊者全員で一つのテーブルを囲むスタイル。オーナー夫妻から始まって全員が簡単な自己紹介をして、温かいクリームスープや豆とライスの煮込み、サラダなどで心も体も温まる家庭的な時を過ごした。
通常アルベルゲでは料金が決まっているのだが、ここではドネイション(寄付)ということになっていたので、心置きなく全員が温かい食事にありつけるのだった。
コーヒーやココア、ティーなどが常に用意されているフリー・ドリンクもこの宿のホスピタリティの一つだ。公営と違って私営のアルベルゲは、ここのご夫婦のようにカミーノを歩くことで人生が変わった人々が個人の意思で運営していることが多いので、ホスピタリティ溢れる家庭的な宿が多いのだ。
というのも、ドイツから来ている大学生の女の子が英語もスペイン語も堪能で、通訳代わりになって私も会話に加われるよう配慮してくれたからだ。メキシコから来たガハハ、としわがれ声でよく笑う豪快なお姉さんは私の年齢に興味津々で、歳を聞いて目を丸くしていた。そして肩が痛いという私に「よく効くわよ〜!」と薬を塗ってくれた。彼女とはこの先何度か再会することになる。
翌朝、奥さんが私のリュックを調整してくれた。何の知識もなく自己流で背負ってきたので、だいぶ肩に負担がかかっていたらしい。
お腹に合わせてリュックをできるだけ上部にくるよう背負い、お腹と腰骨で支え肩にかかる負担を減らすその調整が功を奏したのか、翌日は休みなしで16キロも歩いてしまった。もう無理、と思ってもバルでお腹を満たし、少し休むときちんと回復して歩き出せる自分がいることに驚かされる。
この宿で、私は初めて犬連れの男性と出会った。しっかりと小さなリュックを背中に巻き付けたブルドックと共に歩いていたのは、南米のコロンビアから来たというガブリエル。
翌日、リュックを調整してもらった私は軽快に歩いていたので、ランチのバルで追いついてきたガブリエルに、「君、意外と歩くの早いんだね。すぐに追いつけると思ったのに」と驚かれた。
★スペイン巡礼記?Mへ続く…
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