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キャッシュ・フロー計算書の見分け方 営業 投資 財務 企業はどのような状態か?優良企業 + - - 黒字・設備投資・返済⇒無借金志向成長企業 + - + 黒字・設備投資・借金⇒事業拡大建て直し - - + 赤字部門を閉鎖して、建て直し中倒産直前 - + - 赤字・投資できず、借金を返済中
2019.06.22
38. 平成17 年会計基準の適用時期について、公開草案では、平成18 年4 月1 日以後開始する事業年度から適用することを提案していた。しかし、その後、会社法の計算書類に関する規定が、当該施行日以後終了する事業年度から適用されることが明らかとなったため、平成17 年会計基準では一律に、会社法施行日以後終了する中間連結会計期間及び中間会計期間に係る中間連結財務諸表及び中間財務諸表並びに連結会計年度及び事業年度に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用するものとした。なお、会社法施行日以後終了する連結会計年度及び事業年度に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用した場合でも、これは平成17 年会計基準及び会社法の定めに基づくものであって、中間期において複数の会計処理が認められている中から選択適用する場合ではないため、いわゆる中間・年度の首尾一貫性が保持されていない場合には該当しないものと考えられる。39. 平成17 年会計基準の適用初年度においては、期間比較を容易にするように、これまでの資本の部の合計に相当する金額を注記することが適当である。なお、適用初年度においては、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うことに留意する。 以 上
2010.01.25
34. 株主資本は、これまでと同様に、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に区分する。資本性の剰余金を計上する資本剰余金は、個別貸借対照表上はさらに、会社法で定める資本準備金とそれ以外のその他資本剰余金に区分する。これまで、その他資本剰余金は、資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金や自己株式の処分差益等がその内容を示す科目に区分して表示されていた。しかし、平成17 年会計基準の適用時期と同時に導入される株主資本等変動計算書があれば当期の変動状況は把握できることなどから、継続的にその他資本剰余金の残高を内容に応じて区別しておく必然性は乏しく、本会計基準では、個別貸借対照表上においても、その他資本剰余金の内訳を示さないものとした(第6 項(1)参照)。35. 利益性の剰余金を計上する利益剰余金は、個別貸借対照表上、利益準備金及びその他利益剰余金に区分する。これまで、利益剰余金は、利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益(又は当期未処理損失)に区分されていた。これは、任意積立金と当期未処分利益を括るだけの区分を設ける実益に乏しいことなどの理由による。しかしながら、会計上は任意積立金の区分を設ける必然性はなく、また、会社法上も利益準備金、任意積立金及びその他の各項目が示されれば足りると解されることから、本会計基準では、利益剰余金の区分を資本剰余金の区分と対称とすることとした。さらに、その他利益剰余金のうち、任意積立金のように、株主総会又は取締役会の決議に基づき設定される項目については、その内容を示す科目をもって表示し、それ以外については「繰越利益剰余金」として表示するものとした。後者は、今後、決算日後の利益処分としてではなく剰余金の配当を行うことができるようになることなどから、これまで利益処分の前後で使い分けられてきた「当期未処分利益」と「繰越利益」に代え、「繰越利益剰余金」と称したものである(第6 項(2)参照)。なお、その他利益剰余金又は繰越利益剰余金の金額が負となる場合には、マイナス残高として表示することとなる。36. これまで、個別損益計算書においては、前期繰越利益に当期純利益やその他当期に生じた利益剰余金の変動額(一定の目的のために設定した積立金のその目的に従った取崩額、中間配当額、中間配当に伴う利益準備金の積立額等)を加減して当期未処分利益が表示されてきた。これを受けて個別貸借対照表では「当期未処分利益」が表示され、決算日後の利益処分を経て、利益処分計算書において当期未処分利益から利益処分額を控除し「次期繰越利益」が示されていた。今後は、平成17 年会計基準の適用時期と同時に導入される株主資本等変動計算書により、前期末のその他利益剰余金に当期純利益や配当額などの当期の変動額を加減して当期末のその他利益剰余金が示されることとなる。37. なお、資本剰余金には、(1)株主からの払込資本を表す払込剰余金のほか、(2)贈与により発生する剰余金(資本的支出に充てた国庫補助金等)や、(3)資本修正により発生する剰余金(貨幣価値変動に伴う固定資産の評価替等)を含むとの考えがある。現状では、(2)については実際上ほとんど採用されていないと思われ、(3)は我が国の現行の制度上生ずる余地がない。したがって、これらの論点については、本会計基準では検討の対象とはしていない。
2010.01.25
27. かつて、資本の部は資本金、資本準備金、利益準備金及びその他の剰余金に区分されていたが、平成13 年における商法の改正により、資本金及び資本準備金の取崩によって、株主からの払込資本でありながら資本金、資本準備金では処理されないものが生ずることとなった。また、同改正に伴う自己株式の取得や処分規制の緩和により生ずることとなった自己株式処分差益も、同様の性格を有するものと考えられている。これらに対応するために、当委員会では、平成14 年2 月に企業会計基準第1 号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」を公表し、資本性の剰余金を計上する資本剰余金の区分を設け、また、これに合わせ、利益性の剰余金を計上する利益剰余金の区分を設けた。28. このような区分は、債権者保護の観点から資本の部を資本金、法定準備金、剰余金に区分してきた商法の考え方と、払込資本と留保利益に区分する企業会計の考え方の調整によるものと考えられる。もちろん、払込資本も留保利益も株主資本であることには変わりはなく、会計上はこの留保利益を含む株主資本の変動(増資や配当など)と、その株主資本が生み出す利益との区分が本質的に重要である。しかし、同じ株主資本でも株主が拠出した部分と利益の留保部分を分けることは、配当制限を離れた情報開示の面でも従来から強い要請があったと考えられる。このため、本会計基準でも従来の考え方を引き継ぎ、株主資本は、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に区分するものとしている(第5 項参照)。29. 財務報告における情報開示の中で、特に重要なのは、投資の成果を表す利益の情報であると考えられている。報告主体の所有者に帰属する利益は、基本的に過去の成果であるが、企業価値を評価する際の基礎となる将来キャッシュ・フローの予測やその改訂に広く用いられている。当該情報の主要な利用者であり受益者であるのは、報告主体の企業価値に関心を持つ当該報告主体の現在及び将来の所有者(株主)であると考えられるため、当期純利益とこれを生み出す株主資本は重視されることとなる。30. 本会計基準では、貸借対照表上、これまでの資本の部を資産と負債との差額を示す純資産の部に代えたため、資産や負債に該当せず株主資本にも該当しないものも純資産の部に記載されることとなった。ただし、前項で示したように、株主資本を他の純資産に属する項目から区分することが適当であると考えられるため、本会計基準では、純資産を株主資本と株主資本以外の各項目に区分することとした(第4 項参照)。この結果、損益計算書における当期純利益の額と貸借対照表における株主資本の資本取引を除く当期変動額は一致することとなる。31. 本会計基準の検討においては、第4 項及び第7 項のように純資産を株主資本と株主資本以外の各項目に並列的に区分するのではなく、株主資本をより強調するように、純資産を株主資本とその他純資産に大きく区分し、その他純資産をさらに評価・換算差額等、新株予約権及び少数株主持分に区分するという考え方も示された。しかし、株主資本以外の各項目をその他純資産として一括りにする意義は薄いと考え、本会計基準では採用していない。また、純資産の部の区分においては、財務分析における重要な指標であるROE(株主資本利益率又は自己資本利益率)の計算上、従来から、資本の部の合計額を分母として用いることが多く、また、この分母を株主資本と呼ぶことも多いため、株主資本、評価・換算差額等及び新株予約権を括った小計を示すべきではないかという指摘がある。しかしながら、ROE のみならず、自己資本比率や他の財務指標については、本来、利用目的に応じて用いられるべきものと考えられ、本会計基準の適用によっても、従来と同じ情報は示されており、これまでと同様の方法によるROE などの財務指標の算定が困難になるわけではないと考えられる。このため、本会計基準では、企業の財政状態及び経営成績を示す上で、株主資本、評価・換算差額等及び新株予約権を一括りとして意味をもたせることが必ずしも適当ではないと考え、これらを括ることとはしていない。32. 新株予約権は、報告主体の所有者である株主とは異なる新株予約権者との直接的な取引によるものであり、また、少数株主持分は、子会社の資本のうち親会社に帰属していない部分であり、いずれも親会社株主に帰属するものではないため、株主資本とは区別することとした(第7 項及び第22 項参照)。なお、本会計基準では、表示を除く会計処理については、従来と異なる定めはしていない(第1 項及び第26 項参照)。このため、従来どおり、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときの新株予約権は、当期の利益として処理し、子会社の時価発行増資等に伴い親会社の払込額と親会社の持分の増減額との間に生ずる差額は、原則として当期の損益として処理することとなる。また、連結貸借対照表上、少数株主持分には、これまでと同様に連結子会社における評価・換算差額等の少数株主持分割合が含められる(第7 項(2)なお書き参照)。さらに、少数株主持分を純資産の部に記載することとしても、連結財務諸表の作成については、従来どおり、親会社の株主に帰属するもののみを連結貸借対照表における株主資本に反映させる親会社説の考え方によることに留意する必要がある。33. 本会計基準では、評価・換算差額等は、払込資本ではなく、かつ、未だ当期純利益に含められていないことから、株主資本とは区別し、株主資本以外の項目としている(第7 項及び第8 項参照)。なお、その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定などは、国際的な会計基準において、「その他包括利益累積額」として区分されている。本会計基準の検討においては、国際的な調和を図る観点などから、このような表記を用いてはどうかという考え方も示されたが、包括利益が開示されていない中で「その他包括利益累積額」という表記は適当ではないため、本会計基準では、その主な内容を示すよう「評価・換算差額等」として表記することとした。また、平成17 年会計基準の公開草案に対するコメントの中には、評価・換算差額等の各項目は株主資本に含める方が妥当ではないかという意見があった。これは、その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定などが、現行の会計基準において資本の部に直接計上されていることなどの理由によるものと考えられる。しかしながら、一般的に、資本取引を除く資本の変動と利益が一致するという関係は、会計情報の信頼性を高め、企業評価に役立つものと考えられている。本会計基準では、当期純利益が資本取引を除く株主資本の変動をもたらすという関係を重視し、評価・換算差額等を株主資本とは区別することとした。
2010.01.25
18. これまで、貸借対照表上で区分されてきた資産、負債及び資本の定義は必ずしも明示されてはいないが、そこでいう資本については、一般に、財務諸表を報告する主体の所有者(株式会社の場合には株主)に帰属するものと理解されており、また、連結貸借対照表における資本に関しては、連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけて、親会社の株主に帰属するもののみを反映させるという親会社説の考え方によることとされてきている。19. また、資産は、一般に、過去の取引又は事象の結果として、財務諸表を報告する主体が支配している経済的資源、負債は、一般に、過去の取引又は事象の結果として、報告主体の資産やサービス等の経済的資源を放棄したり引渡したりする義務という特徴をそれぞれ有すると考えられている。このような理解を踏まえて、返済義務のあるものは負債の部に記載するが、少数株主持分や為替換算調整勘定のように返済義務のないものは負債の部に記載しないこととする取扱いが、連結財務諸表を中心に行われてきている(第14 項及び第15 項参照)。20. このように、資本は報告主体の所有者に帰属するもの、負債は返済義務のあるものとそれぞれ明確にした上で貸借対照表の貸方項目を区分する場合、資本や負債に該当しない項目が生ずることがある。この場合には、独立した中間的な区分を設けることが考えられるが、中間区分自体の性格や中間区分と損益計算との関係などを巡る問題が指摘されている。また、国際的な会計基準においては、中間区分を解消する動きがみられる。21. このような状況に鑑み、本会計基準では、まず、貸借対照表上、資産性又は負債性をもつものを資産の部又は負債の部に記載することとし、それらに該当しないものは資産と負債との差額として「純資産の部」に記載することとした(第4 項参照)。この結果、報告主体の支払能力などの財政状態をより適切に表示することが可能となるものと考えられる。なお、「純資産の部」という表記に対しては、平成17 年会計基準の公開草案に対するコメントにおいて、「株主持分の部」とすべきという意見があった。しかしながら、持分には、単なる差額概念以上の意味が含まれる可能性があり、資産と負債との差額を表すには、純資産と表記することが内容をより適切に示すものと考えられる。また、平成17 年会計基準の公開草案に対するコメントの中には、資本と純資産とが相違することに対する懸念も見られた。これに対しては、以前であれば、株主に帰属する資本が差額としての純資産となるように資産及び負債が取り扱われてきたが、その他有価証券評価差額金を資本の部に直接計上する考え方(第14 項参照)が導入されて以降、株主に帰属する資本と、資産と負債との差額である純資産とは、既に異なっているという見方がある。本会計基準では、資本と利益の連繋を重視し(第29 項及び第30 項参照)、資本については、株主に帰属するものであることを明確にすることとした。また、前項で示したように資産や負債を明確にすれば、これらの差額がそのまま資本となる保証はない。このため、本会計基準では、貸借対照表の区分において、資本とは必ずしも同じとはならない資産と負債との単なる差額を適切に示すように、これまでの「資本の部」という表記を「純資産の部」に代えることとした。22. 前項までの考え方に基づき、本会計基準においては、新株予約権や少数株主持分を純資産の部に区分して記載することとした(第7 項参照)。(1) 新株予約権新株予約権は、将来、権利行使され払込資本となる可能性がある一方、失効して払込資本とはならない可能性もある。このように、発行者側の新株予約権は、権利行使の有無が確定するまでの間、その性格が確定しないことから、これまで、仮勘定として負債の部に計上することとされていた。しかし、新株予約権は、返済義務のある負債ではなく、負債の部に表示することは適当ではないため、本会計基準では、純資産の部に記載することとした。(2) 少数株主持分少数株主持分は、子会社の資本のうち親会社に帰属していない部分であり、返済義務のある負債でもなく、また、連結財務諸表における親会社株主に帰属するものでもないため、これまで、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとされていた。しかし、本会計基準では、独立した中間区分を設けないこととし、純資産の部に記載することとした。23. さらに、本会計基準では、貸借対照表上、これまで損益計算の観点から資産又は負債として繰り延べられてきた項目についても、資産性又は負債性を有しない項目については、純資産の部に記載することが適当と考えている。このような項目には、ヘッジ会計の原則的な処理方法における繰延ヘッジ損益(ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べられるヘッジ手段に係る損益又は時価評価差額)が該当する(第8 項参照)。24. なお、この他にも、例えば、仮受金や未決算勘定、割賦未実現利益、修繕引当金など、損益計算の観点から資産又は負債として繰り延べられてきたのではないかと考えられる項目もある。しかしながら、仮受金や未決算勘定については、将来、収益に計上される可能性ではなく外部に返済される可能性を重視すれば負債に該当すること、割賦未実現利益や修繕引当金については、利益の繰り延べではなく資産の控除項目という見方もあることなどから、貸借対照表の表示を取り扱う本会計基準では、繰延ヘッジ損益以外の項目について、既存の会計基準と異なる取扱いを定めることはしないものとした。25. 本会計基準では、第13 項から第16 項で示した経緯を踏まえ、貸借対照表の純資産の部の表示を定めることを目的としており、表記上、これまでの資本の部を純資産の部に代え(第21 項参照)、その上で新株予約権や少数株主持分、繰延ヘッジ損益を当該純資産の部に記載することとした(第22 項及び第23 項参照)。また、これまで資本の部には、払込資本や留保利益のほか、その他有価証券評価差額金など、払込資本でもなく損益計算書を経由した利益剰余金でもない項目が含まれて表記されていた。このため、本会計基準では、純資産のうち株主に帰属する部分を、「資本」とは表記せず、株主に帰属するものであることをより強調する観点から「株主資本」と称するものとした。26. 貸借対照表の表示に関しては、「企業会計原則」などに定めがあるが、これらの会計基準と異なる取扱いを定めているものについては、本会計基準の取扱いが優先することとなり、自己株式の表示など本会計基準において特に定めのないものについては、該当する他の会計基準の定めによる(第1 項参照)。また、表示を除く会計処理については、既存の会計基準と異なる定めはしていないため、貸借対照表項目の認識及び消滅の認識、貸借対照表価額の算定などの会計処理については、既存の会計基準によることとなる(第1 項参照)。なお、繰延ヘッジ損益については、純資産の部に計上されることとなるため、その他有価証券評価差額金などと同様に、当該繰延ヘッジ損益に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を控除して計上することとなる(第8 項なお書き参照)。
2010.01.24
13. これまで貸借対照表は、資産の部、負債の部及び資本の部に区分するものとされ、さらに資本の部は、会計上、株主の払込資本と利益の留保額(留保利益)に区分する考え方が反映されてきた。14. 平成11 年1 月に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準」(平成18 年8 月に企業会計基準第10 号「金融商品に関する会計基準」として改正されている。)において、その他有価証券に係る評価差額は、損益計算書を経由せず資本の部に直接計上する考え方が導入された。同様に、平成11 年10 月に企業会計審議会から公表された改訂「外貨建取引等会計処理基準」において、在外子会社等の財務諸表の換算によって生じた換算差額(為替換算調整勘定)も連結貸借対照表の資本の部に直接計上することとされている。15. 平成9 年6 月に企業会計審議会から公表された改訂「連結財務諸表原則」(以下「連結原則」という。)において、連結貸借対照表には、資産の部、負債の部、少数株主持分及び資本の部を設けるものとされ、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は少数株主持分として、負債の部の次に区分して記載するものとされている。これは、親会社説の考え方による連結原則の下において、資本の部は、原則として、親会社の株主に帰属するものを示すこと、少数株主持分は、返済義務のある負債ではないことによる。この結果、少数株主持分は、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとされている。16. このように、近年、資本の部に対する考え方の変更や中間区分の設定が見られる中、当委員会から平成16 年12 月に公表された企業会計基準公開草案第3 号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」では、ストック・オプションに対応する金額の貸借対照表上の表示について、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として計上するものとされていた。しかしながら、このような項目の性格についてはいまだに論争が多く、概念上の整理が定着しているとはいえないこと及び個別財務諸表に新たに中間区分を設けることについては、慎重な検討が必要という意見も多いことから、当該公開草案では、「別途早急に貸借対照表における貸方項目の区分表示のあり方全般について検討を行うこととし、その検討の中でストック・オプションに対応する金額の表示区分について引き続き議論することとした。」とされていた。このため、当委員会では、貸借対照表表示検討専門委員会を設置し、当該専門委員会での討議を含め、これらの問題に対する審議を行い、平成17 年8 月に、企業会計基準公開草案第6 号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」を公表し、広く各界からの意見を求めた。当委員会では、寄せられた意見も参考にしてさらに審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、平成17 年会計基準を公表した。17. なお、我が国の会計基準を設定するにあたって、概念フレームワークを明文化する必要性が各方面から指摘されたのを受け、当委員会は、外部の研究者を中心としたワーキング・グループを組織して、その問題の検討を委託し、平成16 年9 月に討議資料「財務会計の概念フレームワーク」を公表している。この討議資料に示されているのは、当委員会の見解ではなく、当委員会に報告された当該ワーキング・グループの見解であるが、今後の基準設定の過程で有用性をテストされ、市場関係者等の意見を受けてさらに整備・改善されれば、いずれはデファクト・スタンダードとしての性格を持つことも期待されている。このため、平成17 年会計基準を検討するにあたり、当委員会では、この討議資料の一部も素材に議論を重ねた。17-2. 平成21 年改正会計基準及びその適用指針の改正は、平成20 年12 月に公表された連結会計基準において、支配獲得時の子会社の資産及び負債の評価は全面時価評価法のみとされたことなどに対応して、技術的な改正を行ったものである。
2010.01.24
9. 平成17 年に公表された本会計基準(以下「平成17 年会計基準」という。)は、会社法(平成17 年法律第86 号)施行日以後終了する中間連結会計期間及び中間会計期間に係る中間連結財務諸表及び中間財務諸表並びに連結会計年度及び事業年度に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用する。10. 平成17 年会計基準の適用初年度においては、これまでの資本の部の合計に相当する金額を注記するものとする。10-2. 平成21 年に改正された本会計基準(以下「平成21 年改正会計基準」という。)は、平成20 年12 月に公表された企業会計基準第22 号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)が適用された連結会計年度から適用する。
2010.01.24
4. 貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部に区分し、純資産の部は、株主資本と株主資本以外の各項目(第7 項参照)に区分する。5. 株主資本は、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に区分する。6. 個別貸借対照表上、資本剰余金及び利益剰余金は、さらに次のとおり区分する。(1) 資本剰余金は、資本準備金及び資本準備金以外の資本剰余金(以下「その他資本剰余金」という。)に区分する。(2) 利益剰余金は、利益準備金及び利益準備金以外の利益剰余金(以下「その他利益剰余金」という。)に区分し、その他利益剰余金のうち、任意積立金のように、株主総会又は取締役会の決議に基づき設定される項目については、その内容を示す科目をもって表示し、それ以外については繰越利益剰余金にて表示する。7. 株主資本以外の各項目は、次の区分とする。(1) 個別貸借対照表上、評価・換算差額等(第8 項参照)及び新株予約権に区分する。(2) 連結貸借対照表上、評価・換算差額等(第 8 項参照)、新株予約権及び少数株主持分に区分する。なお、連結貸借対照表において、連結子会社の個別貸借対照表上、純資産の部に直接計上されている評価・換算差額等は、持分比率に基づき親会社持分割合と少数株主持分割合とに按分し、親会社持分割合は当該区分において記載し、少数株主持分割合は少数株主持分に含めて記載する。8. 評価・換算差額等には、その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益のように、資産又は負債は時価をもって貸借対照表価額としているが当該資産又は負債に係る評価差額を当期の損益としていない場合の当該評価差額や、為替換算調整勘定等が含まれる。当該評価・換算差額等は、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益等その内容を示す科目をもって表示する。なお、当該評価・換算差額等については、これらに係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を控除した金額を記載することとなる。
2010.01.24
3. 本会計基準は、すべての株式会社の貸借対照表における純資産の部の表示を定める。
2010.01.24
1. 本会計基準は、貸借対照表における純資産の部の表示を定めることを目的とする。貸借対照表の表示に関して、既存の会計基準と異なる取扱いを定めているものについては、本会計基準の取扱いが優先することとなり、本会計基準において特に定めのないものについては、該当する他の会計基準の定めによる。また、貸借対照表項目の認識及び消滅の認識、貸借対照表価額の算定などの会計処理については、既存の会計基準によることとなる。2. 本会計基準の適用にあたっては、企業会計基準適用指針第8 号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」も参照する必要がある。
2010.01.24
119. 金融商品については、平成2 年5 月に企業会計審議会第一部会から公表されている「先物・オプション等の会計基準に関する意見書等について」等に基づき、これまで有価証券やデリバディブ取引の時価等の開示が行われてきている。しかし、その後の証券化の拡大や金融商品の多様化等、金融取引を巡る環境が変化する中で、それ以外の金融商品についても時価情報に対するニーズが拡大しており、また、国際的な会計基準でも、時価に関する情報開示は拡大している。120. 本会計基準では、金融資産について、時価評価を基本としつつもその属性及び保有目的に鑑み、そのすべてについて時価評価を行っているわけではなく、また、時価をもって貸借対照表価額としても評価差額を当期の損益としない会計処理も定めている(第65 項及び第66項参照)。金融負債については、原則として時価評価の対象としないことが適当であるとしている(第67 項参照)。これらの取扱いは、企業の経営成績を適切に財務諸表に反映させるという観点から行われていると考えられる。これらをさらに見直すことについては、企業活動の成果と金融商品の保有目的との関係の整理(これには、金融負債の評価における企業自身の信用リスクの取扱いなどが含まれる。)や金融商品以外の資産及び負債(非金融商品)における取扱いとの関係など、なお検討を要する問題が残されている。一方、損益計算とは離れて、市場価格がない場合でも、時価を把握することが極めて困難と認められるものを除き、金融商品の時価を開示することは、投資者に対して有用な財務情報を提供することになるという意見も多い。また、金融商品の状況やリスク管理体制は企業によって異なるものの、企業が現に有する金融商品に係るリスクの測定状況等の情報があれば、当該情報の開示を促すことに加え、会計基準等によって企業の側において金融商品のリスク管理等を一層徹底するインセンティブを高めるためにも金融商品の時価等を開示することに意義があるという意見もある。さらに、国際的な会計基準では、金融商品に係る時価やリスクに関して広く開示が求められている。したがって、このような点に鑑み、平成20年改正会計基準では、金融商品の状況やその時価等に関する事項の開示の充実を図ることとした。
2010.01.23
116. 上記以外の複合金融商品には、金利オプション付借入金のように現物の資産及び負債とデリバティブ取引が組み合わされたもの及びゼロ・コスト・オプションのように複数のデリバティブ取引が組み合わされたものがある。117. このような複合金融商品を構成する複数種類の金融資産又は金融負債は、それぞれ独立して存在し得るが、複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フローは正味で発生する。このため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、原則として、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分せず一体として処理することとした(第40 項参照)。ただし、通貨オプションが組み合わされた円建借入金のように、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要である。118. なお、金融機関のように、経営上、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を継続して区分して管理しており、投資情報としても区分して処理することが経営の実態を表す上で有用な場合には、区分して処理することも認められるものとする。
2010.01.23
112. 新株予約権付社債のように契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分の価値をそれぞれ認識することができるならば、それぞれの部分を区分して処理することが合理的である。個々の複合金融商品の様態及び取引実態において、転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債は払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分が同時に各々存在し得ることから、その取引の実態を適切に表示するため、それぞれの部分を区分して処理することが必要である。しかし、募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権行使時における出資の目的とすること(会社法第236 条第1 項第2 号及び第3号)をあらかじめ明確にしている転換社債型新株予約権付社債については、以前の転換社債と経済的実質が同一であり、それぞれの部分を区分して処理する必要性は乏しいと考えられる。113. こうした考え方に基づき、以前の転換社債と経済的実質が同一である転換社債型新株予約権付社債については社債部分と新株予約権部分を区分せず一体とした処理又は転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債の処理に準じた処理をすることとし(ただし、取得者側については前者のみ認められる。)、転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債については社債部分と新株予約権部分を区分して処理することとした(第36 項から第39 項参照)。114. 新株予約権付社債の発行者が、新株予約権付社債を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分して処理する場合の新株予約権の対価部分の取扱いについて、新株予約権が行使され、新株を発行したときには、当該対価は株式発行の対価としての性格が認められることになることから資本金又は資本金及び資本準備金に振り替えられることとなる。また、権利行使の有無が確定するまでの間は、その性格が確定しないことから、これまでは仮勘定として負債の部に計上することとしてきたが、純資産会計基準により、純資産の部に計上することとなる(第38 項参照)。115. なお、平成13 年11 月に公布された「商法等の一部を改正する法律」(平成13 年法律第128 号)施行前に発行した新株引受権付社債の会計処理については、権利が行使されたときに新株引受権の対価部分が資本準備金に振り替えられる点を除き、新株予約権付社債の取扱いに準ずる。
2010.01.22
111. 複合金融商品については、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品とその他の複合金融商品に区別して、それぞれ処理方法を定めることとした。
2010.01.22
108. ヘッジ対象が消滅したときには、その時点でヘッジ会計が終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を当期の損益として処理することとした。また、ヘッジ対象である予定取引が行われないことが明らかになったときにおいても同様に処理することとした(第34 項参照)。109. これに対し、ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときには、ヘッジ会計の要件が充たされていた間のヘッジ手段に係る損益又は評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる。ただし、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益又は評価差額に関し、見合いのヘッジ対象に係る含み益の減少によりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積り、当期の損失として処理することとした(第33 項参照)。110. なお、ヘッジ会計の要件が充たされなくなったとき以後のヘッジ手段に係る損益又は評価差額を繰り延べることはできないこととなる。
2010.01.22
107. 金利スワップを利用したヘッジ取引には、例えば固定利付債務の支払利息を変動利息に、あるいは、変動利付債務の支払利息を固定利息に実質的に変換するなど、原価評価されている資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されているものがある。当該資産又は負債と金利スワップがヘッジ会計の要件を充たしているものについては、本来、金利スワップの評価差額を貸借対照表に計上する処理を行うが、金利スワップの想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が金利変換の対象となる資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、両者を一体として、実質的に変換された条件による債権又は債務と考え、金利スワップの評価差額を繰り延べる処理に代えて、当該金利スワップに係る金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することも認めることとした。
2010.01.22
106. ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることができる場合には、当該資産又は負債に係る損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する考え方がある。諸外国の会計基準では、このような考え方に基づく処理も採用されていることを考慮し、これを認めることとした(第32 項参照)。
2010.01.22
105. 平成11 年会計基準では、ヘッジ会計は、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる方法によることを原則としていたが、当該ヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、純資産会計基準により、税効果を調整の上、純資産の部に記載することとなる(第32 項参照)。
2010.01.22
103. ヘッジ取引についてヘッジ会計が適用されるためには、基本的には、ヘッジ対象が相場変動等による損失の可能性にさらされており、ヘッジ対象とヘッジ手段のそれぞれに生じる損益が互いに相殺される関係にあること若しくはヘッジ手段によりヘッジ対象の資産又は負債のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される関係にあることが前提になる。104. さらに、ヘッジ会計を適用できるか否かの具体的な判定にあたっては、企業の利益操作の防止等の観点から、「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」における事前テストと事後テストというヘッジ会計の適用基準の考え方を踏まえ、ヘッジ取引時にはヘッジ取引が企業のリスク管理方針に基づくものであり、それ以降は上記の前提の効果について定期的に確認しなければならないという具体的な要件を定めている(第31 項参照)。
2010.01.22
100. ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象には、相場変動等による損失の可能性がある資産又は負債のうち、相場等の変動が評価に反映されていないもの及び相場等の変動が評価に反映されていてもその評価差額が損益として処理されないものの他、相場等の変動を損益として処理することができるものであっても、当該資産又は負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものはヘッジ対象となる(第30 項参照)。101. また、ヘッジ対象には、この他、予定取引(未履行の確定契約を含む。)により発生が見込まれる資産又は負債も含まれる(第30 項参照)。ただし、予定取引については、主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、その実行される可能性が極めて高い取引に限定することとした。102. なお、他に適当なヘッジ手段がなく、ヘッジ対象と異なる類型のデリバティブ取引をヘッジ手段として用いるいわゆるクロスヘッジもヘッジ会計の対象となる。
2010.01.21
96. ヘッジ取引とは、ヘッジ対象の資産又は負債に係る相場変動を相殺するか、ヘッジ対象の資産又は負債に係るキャッシュ・フローを固定してその変動を回避することにより、ヘッジ対象である資産又は負債の価格変動、金利変動及び為替変動といった相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引をいう。97. ヘッジ手段であるデリバティブ取引については、原則的な処理方法によれば時価評価され損益が認識されることとなるが、ヘッジ対象の資産に係る相場変動等が損益に反映されない場合には、両者の損益が期間的に合理的に対応しなくなり、ヘッジ対象の相場変動等による損失の可能性がヘッジ手段によってカバーされているという経済的実態が財務諸表に反映されないこととなる。このため、ヘッジ対象及びヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させるヘッジ会計が必要と考えられる。98. 本会計基準においては、ヘッジ会計を導入することとし、先物取引に係るヘッジ会計の考え方を示した企業会計審議会の「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」を踏まえ、デリバティブ取引をヘッジ手段として利用しているヘッジ取引全般に対応し得るよう、ヘッジ会計に係る処理を包括的に定めることとした。なお、デリバティブ取引以外にヘッジ手段として有効であると認められる現物資産があり得る場合には、本会計基準の考え方に沿って、ヘッジ会計を適用する余地があると考えられる。99. また、多数の金融資産又は金融負債を保有してる金融機関等においては、それぞれの相場変動等によるリスクの減殺効果をヘッジ対象とヘッジ手段に区別して捉えることが困難あるいは適当でない場合がある。このような場合に、リスクの減殺効果をより適切に財務諸表に反映する高度なヘッジ手法を用いていると認められるときには、本会計基準の趣旨を踏まえ、当該ヘッジ手法の効果を財務諸表に反映させる処理を行うことができる。
2010.01.21
92. 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定することができる。また、債務者が既に経営破綻等に陥っている場合には、個々の債権ごとに担保等により回収できない部分を貸倒見積高とすることが必要となる(第28 項(1)及び(3)参照)。93. これに対し、貸倒懸念債権については、一般債権と破産更生債権等の中間に位置し、個々の債権の実態に最も適合する算定方法を採用することが必要である。このため、貸倒懸念債権に係る貸倒見積高の算定方法としては、担保の処分見込額及び保証による回収見込額を考慮する方法の他、元利金の将来のキャッシュ・フローを見積ることが可能な場合、元利金のキャッシュ・フローの予想額を当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と当該債権の帳簿価額の差額を貸倒見積高とする方法を示し、債務者の状況や債務返済計画等が変わらない限り、いずれかの方法を継続して適用することとした(第28 項(2)参照)。94. なお、例えば、劣後債券、劣後受益権及び資産担保型証券のように債権の内容が特殊なものである場合には、当該債権の内容に応じて適切な貸倒見積高を算定する必要がある。95. また、貸倒引当金の対象となる債権には未収利息が含まれるが、契約上の利息支払日を相当期間経過しても利息の支払が行われていない状態にある場合や、それ以外でも債務者が実質的に経営破綻の状態にあると認められる場合には、未収利息を収益として認識することは適当でないと考えられることから、このような状態に至った場合には、すでに計上している未収利息を取り消すとともに、それ以後の期間に係る未収利息は計上してはならないこととした。
2010.01.21
91. 本会計基準では、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を、1経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(一般債権)、2経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(貸倒懸念債権)及び3経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(破産更生債権等)に区分し、その区分ごとに貸倒見積高の算定方法を示すこととした(第27 項及び第28 項参照)。
2010.01.21
90. 旧商法では、金銭債務の貸借対照表価額は債務額とすることとしていたことから、平成11 年会計基準では、社債は社債金額をもってその貸借対照表価額とし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合には、当該差額に相当する金額を、資産(繰延資産)又は負債として計上し、償還期に至るまで毎期一定の方法により償却することとしてきた。ただし、会計上は、金銭債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、この差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとなる。金銭債務についても、その収入額と債務額とが異なる場合、当該差額は一般に金利の調整という性格を有しているため、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることが適当と考えられる。会社法では、債務額以外の適正な価格をもって負債の貸借対照表価額とすることができることとされたことから、平成18 年改正会計基準では、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第26 項参照)。
2010.01.21
88. デリバティブ取引は、取引により生じる正味の債権又は債務の時価の変動により保有者が利益を得又は損失を被るものであり、投資者及び企業双方にとって意義を有する価値は当該正味の債権又は債務の時価に求められると考えられる。したがって、デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務については、時価をもって貸借対照表価額とすることとした。また、デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務の時価の変動は、企業にとって財務活動の成果であると考えられることから、その評価差額は、後述するヘッジに係るものを除き、当期の損益として処理することとした(第25 項参照)。89. なお、デリバティブ取引については、一般に、市場価格又はこれに基づく合理的な価額により時価が求められるが、デリバティブ取引の対象となる金融商品に市場価格がないこと等により時価を把握することが極めて困難と認められる場合には、取得価額をもって貸借対照表価額とすることができる。
2010.01.21
85. 運用を目的とする金銭の信託(合同運用を除く。)については、企業が当該金銭の信託に係る信託財産を構成する金融資産及び金融負債を運用目的で間接的に保有しているものと考えられる。加えて、金銭の信託契約の満了時に、当該金銭の信託に係る信託財産又はそれを時価により換金した現金により支払を受ける場合、投資者及び企業双方にとって意義を有するのは信託財産の時価であると考えられる。また、信託財産の価値を、例えば保有期間中の配当収入と元本部分の価値に分けて捉えることもあるが、両者の合計は時価そのものであり、分けて捉える必要はないと考えられる。したがって、運用を目的とする金銭の信託の貸借対照表価額には、信託財産を構成する金融資産及び金融負債のうち時価評価が適切であるものについて、その時価を反映することが必要と考えられる。86. このため、運用を目的とする金銭の信託については、当該金銭の信託に係る信託財産を構成する金融資産及び金融負債に付されるべき評価額を合計した額をもって貸借対照表価額とすることとした。この際、運用を目的とする金銭の信託に係る信託財産については委託者の事業遂行上等の観点からの売買・換金の制約がないことから、当該信託財産を構成する金融資産及び金融負債については時価評価を行い、評価差額は当期の損益に反映させることとした(第24 項参照)。87. なお、特定金銭信託又は指定金外信託等については、一般に運用を目的とするものと考えられるので、有価証券の管理目的等運用以外の目的であることが明確である場合を除き、運用を目的とする金銭の信託と推定される。
2010.01.21
83. 従来、取引所の相場のある有価証券について、その時価が著しく下落したときには、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とすることとされている。また、取引所の相場のない株式については、その実質価額が著しく低下したときには相当の減額をすることとされている。このような考え方は、取得原価評価における時価の下落等に対する対応方法として妥当であると認められる。本会計基準においても、市場価格の有無に係わらせて、従来の考え方を踏襲することとした(第20 項及び第21 項参照)。84. また、その他有価証券の時価評価について洗い替え方式を採っていることから、その時価が著しく下落したときには、取得原価まで回復する見込があると認められる場合を除き、当該銘柄の帳簿価額を時価により付け替えて取得原価を修正することが必要である。この場合には、当該評価差額を当期の損失として処理することとした(第20 項から第22 項参照)。
2010.01.21
81. 時価をもって貸借対照表価額とする有価証券であっても、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第19 項参照)。81-2. 時価をもって貸借対照表価額とする有価証券のうち、これまで、市場価格のないものは、例外的な取扱いとして取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとしていた。しかし、金融商品の時価情報に関する開示の充実を定めた平成20 年改正会計基準では、当該開示の実効性を高めるために、時価が開示されないこととなる金融商品は、時価を把握することが極めて困難と認められるものに限定されたことから、時価をもって貸借対照表価額とする有価証券に関して、その例外的な取扱いは、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券に限定することとした。82. なお、市場は幅広く定義されているので、例えば、証券投資信託の受益証券で基準価格が公表されていないものであっても、当該証券投資信託の運用する金融資産又は金融負債の時価に基づき取引されるものについては、市場価格のある有価証券に該当し、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券には該当しないと考えられる。
2010.01.21
80. その他有価証券のうち時価評価を行ったものの評価差額は、前述の考え方に基づき、当期の損益として処理されないこととなる。他方、企業会計上、保守主義の観点から、これまで低価法に基づく銘柄別の評価差額の損益計算書への計上が認められてきた。このような考え方を考慮し、時価が取得原価を上回る銘柄の評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄の評価差額は損益計算書に計上する方法によることもできることとした(第18 項(2)参照)。この方法を適用した場合における損益計算書に計上する損失の計上方法については、その他有価証券の評価差額は毎期末の時価と取得原価との比較により算定することとの整合性から、洗い替え方式によることとした。
2010.01.21
(評価差額の取扱いに関する基本的考え方)77. その他有価証券の時価は投資者にとって有用な投資情報であるが、その他有価証券については、事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり、評価差額を直ちに当期の損益として処理することは適切ではないと考えられる。78. また、国際的な動向を見ても、その他有価証券に類するものの評価差額については、当期の損益として処理することなく、資産と負債の差額である「純資産の部」に直接計上する方法や包括利益を通じて「純資産の部」に計上する方法が採用されている。79. これらの点を考慮して、本会計基準においては、原則として、その他有価証券の評価差額を当期の損益として処理することなく、税効果を調整の上、純資産の部に記載する考え方を採用した(第18 項参照)。なお、評価差額については、毎期末の時価と取得原価との比較により算定することとした。したがって、期中に売却した場合には、取得原価と売却価額との差額が売買損益として当期の損益に含まれることになる。
2010.01.21
基本的な捉え方75. 子会社株式や関連会社株式といった明確な性格を有する株式以外の有価証券であって、売買目的又は満期保有目的といった保有目的が明確に認められない有価証券は、業務上の関係を有する企業の株式等から市場動向によっては売却を想定している有価証券まで多様な性格を有しており、一義的にその属性を定めることは困難と考えられる。このような売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式のいずれにも分類できない有価証券(その他有価証券)については、個々の保有目的等に応じてその性格付けをさらに分化してそれぞれの会計処理を定める方法も考えられる。しかしながら、その多様な性格に鑑み保有目的等を識別・細分化する客観的な基準を設けることが困難であるとともに、保有目的等自体も多義的であり、かつ、変遷していく面があること等から、売買目的有価証券と子会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を有するものとして一括して捉えることが適当である。時価評価の必要性76. その他有価証券については、前述の評価基準に関する基本的考え方に基づき、時価をもって貸借対照表価額とすることとした(第18 項参照)。ただし、第75 項に述べたように、その他有価証券は直ちに売却することを目的としているものではないことに鑑みると、その他有価証券に付すべき時価に市場における短期的な価格変動を反映させることは必ずしも求められないと考えられることから、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額をもって期末の時価とする方法を継続して適用することも認められると考えられる。
2010.01.21
子会社株式73. 子会社株式については、事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づき、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした(第17 項参照)。なお、連結財務諸表においては、子会社純資産の実質価額が反映されることになる。関連会社株式74. 関連会社株式については、個別財務諸表において、従来、子会社株式以外の株式と同じく原価法又は低価法が評価基準として採用されてきた。しかし、関連会社株式は、他企業への影響力の行使を目的として保有する株式であることから、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うことが適当であり、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした(第17 項参照)。なお、連結財務諸表においては、持分法により評価される。
2010.01.19
71. 企業が満期まで保有することを目的としていると認められる社債その他の債券(満期保有目的の債券)については、時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がないことから、原則として、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第16 項参照)。72. なお、このような考え方を採用するにあたっては、満期時まで保有する目的であることを債券の取得時及び取得時以降に確認し得ることが必要であり、保有目的が変更された場合には、当該変更後の保有目的に係る評価基準により債券の帳簿価額を修正することが必要である。
2010.01.19
70. 時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(売買目的有価証券)については、投資者にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での時価に求められると考えられる。したがって、時価をもって貸借対照表価額とすることとした。また、売買目的有価証券は、売却することについて事業遂行上等の制約がなく、時価の変動にあたる評価差額が企業にとっての財務活動の成果と考えられることから、その評価差額は当期の損益として処理することとした(第15 項参照)。
2010.01.19
69. 有価証券については、保有目的等の観点から次のように分類し、それぞれ貸借対照表価額及び評価差額等の処理方法を定めた。
2010.01.19
68. 一般的に、金銭債権については、活発な市場がない場合が多い。このうち、受取手形や売掛金は、通常、短期的に決済されることが予定されており、帳簿価額が時価に近似しているものと考えられ、また、貸付金等の債権は、時価を容易に入手できない場合や売却することを意図していない場合が少なくないと考えられるので、金銭債権については、原則として時価評価は行わないこととした。一方、債権の取得においては、債権金額と取得価額とが異なる場合がある。この差異が金利の調整であると認められる場合には、金利相当額を適切に各期の財務諸表に反映させることが必要である。したがって、債権については、償却原価法を適用することとし、当該加減額は受取利息に含めて処理することとした。なお、債務者の財政状態及び経営成績の悪化等による債権の実質価額の減少については、別途、「5.貸倒見積高の算定」において取り扱うこととした(第14 項、第27 項及び第28 項参照)。
2010.01.19
64. 金融資産については、一般的には、市場が存在すること等により客観的な価額として時価を把握できるとともに、当該価額により換金・決済等を行うことが可能である。このような金融資産については、次のように考えられる。(1) 金融資産の多様化、価格変動リスクの増大、取引の国際化等の状況の下で、投資者が自己責任に基づいて投資判断を行うために、金融資産の時価評価を導入して企業の財務活動の実態を適切に財務諸表に反映させ、投資者に対して的確な財務情報を提供することが必要である。(2) 金融資産に係る取引の実態を反映させる会計処理は、企業の側においても、取引内容の十分な把握とリスク管理の徹底及び財務活動の成果の的確な把握のために必要である。(3) 我が国企業の国際的な事業活動の進展、国際市場での資金調達及び海外投資者の我が国証券市場での投資の活発化という状況の下で、財務諸表等の企業情報は、国際的視点からの同質性や比較可能性が強く求められている。また、デリバティブ取引等の金融取引の国際的レベルでの活性化を促すためにも、金融商品に係る我が国の会計基準の国際的調和化が重要な課題となっている。65. また、金融資産の時価情報の開示は、時価情報の注記によって満足されるというものではない。したがって、客観的な時価の測定可能性が認められないものを除き、時価による自由な換金・決済等が可能な金融資産については、投資情報としても、企業の財務認識としても、さらに、国際的調和化の観点からも、これを時価評価し適切に財務諸表に反映することが必要であると考えられる。66. しかし、金融資産の属性及び保有目的に鑑み、実質的に価格変動リスクを認める必要のない場合や直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上等の制約がある場合が考えられる。このような保有目的等をまったく考慮せずに時価評価を行うことが、必ずしも、企業の財政状態及び経営成績を適切に財務諸表に反映させることにならないと考えられることから、時価評価を基本としつつ保有目的に応じた処理方法を定めることが適当であると考えられる。67. 一方、金融負債は、借入金のように一般的には市場がないか、社債のように市場があっても、自己の発行した社債を時価により自由に清算するには事業遂行上等の制約があると考えられることから、デリバティブ取引により生じる正味の債務を除き、債務額(ただし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額)をもって貸借対照表価額とし、時価評価の対象としないことが適当であると考えられる。
2010.01.19
61. 金融資産又は金融負債がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、それらの帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理することとした(第11 項参照)。62. 金融資産又は金融負債の一部の消滅を認識する場合には、当該金融資産又は金融負債全体の時価に対する消滅部分の時価と残存部分の時価の比率により、当該金融資産又は金融負債の帳簿価額を消滅部分と残存部分の帳簿価額に按分することとした(第12 項参照)。63. また、金融資産又は金融負債の消滅に伴って新たに発生した金融資産又は金融負債は時価により計上することとした(第13 項参照)。
2010.01.19
59. 金融負債については、当該金融負債の契約上の義務を履行したとき、契約上の義務が消滅したとき又は契約上の第一次債務者の地位から免責されたときに、その消滅を認識することとした(第10 項参照)。したがって、債務者は、債務を弁済したとき又は債務が免除されたときに、それらの金融負債の消滅を認識することとなる。60. 第一次債務を引き受けた第三者が倒産等に陥ったときに二次的に責任を負うという条件の下で、債務者が金融負債の契約上の第一次債務者の地位から免責されることがある。この場合には、財務構成要素アプローチにより当該債務に係る金融負債の消滅を認識し、その債務に対する二次的な責任を金融負債として認識することとなると考えられる。
2010.01.18
57. 金融資産を譲渡する場合には、譲渡後において譲渡人が譲渡資産や譲受人と一定の関係(例えば、リコース権(遡求権)、買戻特約等の保持や譲渡人による回収サービス業務の遂行)を有する場合がある。このような条件付きの金融資産の譲渡については、金融資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが他に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する方法(以下「リスク・経済価値アプローチ」という。)と、金融資産を構成する財務的要素(以下「財務構成要素」という。)に対する支配が他に移転した場合に当該移転した財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する方法(以下「財務構成要素アプローチ」という。)とが考えられる。証券・金融市場の発達により金融資産の流動化・証券化が進展すると、例えば、譲渡人が自己の所有する金融資産を譲渡した後も回収サービス業務を引き受ける等、金融資産を財務構成要素に分解して取引することが多くなるものと考えられる。このような場合、リスク・経済価値アプローチでは金融資産を財務構成要素に分解して支配の移転を認識することができないため、取引の実質的な経済効果が譲渡人の財務諸表に反映されないこととなる。58. このため、本会計基準では、金融資産の譲渡に係る消滅の認識は財務構成要素アプローチによることとし、金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは次の三要件がすべて充たされた場合とすることとした(第9 項参照)。(1) 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること譲渡人に倒産等の事態が生じても譲渡人やその債権者等が譲渡された金融資産に対して請求権等のいかなる権利も存在しないこと等、譲渡された金融資産が譲渡人の倒産等のリスクから確実に引き離されていることが必要である。したがって、譲渡人が実質的に譲渡を行わなかったこととなるような買戻権がある場合や譲渡人が倒産したときには譲渡が無効になると推定される場合は、当該金融資産の支配が移転しているとは認められない。なお、譲渡された金融資産が譲渡人及びその債権者の請求権の対象となる状態にあるかどうかは、法的観点から判断されることになる。(2) 譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること譲受人が譲渡された金融資産を実質的に利用し、元本の返済、利息又は配当等により投下した資金等のほとんどすべてを回収できる等、譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できることが必要である。したがって、譲渡制限があっても支配の移転は認められるが、譲渡制限又は実質的な譲渡制限となる買戻条件の存在により、譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受することが制約される場合には、当該金融資産の支配が移転しているとは認められない。なお、譲受人が特別目的会社の場合には、その発行する証券の保有者が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できることが必要である。(3) 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと譲渡人が譲渡した金融資産を満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していることにより、金融資産を担保とした金銭貸借と実質的に同様の取引がある。現先取引や債券レポ取引といわれる取引のように買戻すことにより当該取引を完結することがあらかじめ合意されている取引については、その約定が売買契約であっても支配が移転しているとは認められない。このような取引については、売買取引ではなく金融取引として処理することが必要である。
2010.01.18
56. 金融資産については、当該金融資産の契約上の権利を行使したとき、契約上の権利を喪失したとき又は契約上の権利に対する支配が他に移転したときに、その消滅を認識することとした(第8 項参照)。例えば、債権者が貸付金等の債権に係る資金を回収したとき、保有者がオプション権を行使しないままに行使期間が満了したとき又は保有者が有価証券等を譲渡したときなどには、それらの金融資産の消滅を認識することとなる。
2010.01.18
55. 商品等の売買又は役務の提供の対価に係る金銭債権債務は、一般に商品等の受渡し又は役務提供の完了によりその発生を認識するが、金融資産又は金融負債自体を対象とする取引については、当該取引の契約時から当該金融資産又は金融負債の時価の変動リスクや契約の相手方の財政状態等に基づく信用リスクが契約当事者に生じるため、契約締結時においてその発生を認識することとした(第7 項参照)。したがって、有価証券については原則として約定時に発生を認識し、デリバティブ取引については、契約上の決済時ではなく契約の締結時にその発生を認識しなければならない。
2010.01.18
54. 時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(市場価格)に基づく価額をいうこととした。また、例えば、デリバティブ取引等において、個々のデリバティブ取引について市場価格がない場合でも、当該デリバティブ取引の対象としている何らかの金融商品の市場価格に基づき合理的に価額が算定できるときの当該合理的に算定された価額は、公正な評価額と認められる(第6 項参照)。なお、金融商品の種類により種々の取引形態があるが、市場には公設の取引所及びこれに類する市場の他、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等が含まれる。
2010.01.18
61. 金融資産又は金融負債がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、それらの帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理することとした(第11 項参照)。62. 金融資産又は金融負債の一部の消滅を認識する場合には、当該金融資産又は金融負債全体の時価に対する消滅部分の時価と残存部分の時価の比率により、当該金融資産又は金融負債の帳簿価額を消滅部分と残存部分の帳簿価額に按分することとした(第12 項参照)。63. また、金融資産又は金融負債の消滅に伴って新たに発生した金融資産又は金融負債は時価により計上することとした(第13 項参照)。
2010.01.17
52. 本会計基準の適用対象となる金融資産及び金融負債については、適用範囲の明確化の観点から、米国基準等に見られる抽象的な定義によるのではなく、現金預金、金銭債権債務、有価証券、デリバティブ取引により生じる正味の債権債務等の具体的な資産負債項目をもって、その範囲を示すこととした。なお、デリバティブ取引に関しては、その価値は当該契約を構成する権利と義務の価値の純額に求められることから、デリバティブ取引により生じる正味の債権は金融資産となり、正味の債務は金融負債となる(第4 項及び第5 項参照)。このように金融資産及び金融負債の範囲を具体的に定めたことにより、国際的な基準における適用範囲との差異が生じるものではない。なお、金融資産、金融負債及びデリバティブ取引に係る契約を総称して金融商品ということにするが、金融商品には複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされているもの(複合金融商品)も含まれる。53. 有価証券については、原則として、金融商品取引法に定義する有価証券に基づいて、本会計基準を適用するが、それ以外のもので、金融商品取引法上の有価証券に類似し企業会計上の有価証券として取り扱うことが適当と認められるものについても、本会計基準を適用することが適当である。なお、金融商品取引法上の有価証券であっても企業会計上の有価証券として取り扱うことが適当と認められないものについては、本会計基準上、有価証券としては取り扱わないこととする。また、商品先物のような現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引は、本来の金融商品とは異なる面を有するが、通常、差金決済により取引が行われることにより金融商品と類似する性格をもつと認められるものについては、本会計基準を適用することが適当である。
2010.01.17
47. 企業会計審議会から平成2 年5 月に「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」が公表されるなど、先物取引、オプション取引及び市場性のある有価証券に係る時価情報の開示基準等が整備され、その後も、先物為替予約取引及びデリバティブ取引全般についての開示基準等の整備により、金融商品に係る時価情報の提供が広範に行われてきた。しかし、その後の証券・金融市場のグローバル化や企業の経営環境の変化等に対応して企業会計の透明性を一層高めていくためには、注記による時価情報の提供にとどまらず、金融商品そのものの時価評価に係る会計処理をはじめ、新たに開発された金融商品や取引手法等についての会計処理の基準の整備が必要とされる状況となった。48. 企業会計審議会は、国際的動向も踏まえ、平成8 年7 月以降、金融商品部会(平成9 年2月の部会改組以前は「特別部会・金融商品委員会」)において、金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識、金融商品の評価基準、貸倒見積高の算定方法、ヘッジ会計、複合金融商品等、金融商品に係る広範な問題についての審議を重ね、平成11 年1 月に「金融商品に係る会計基準」及び「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」を公表した。49. なお、平成9 年及び平成10 年における、諸般の課題に係る一連の会計基準等の整備は、1内外の広範な投資者の我が国証券市場への投資参加を促進し、2投資者が自己責任に基づきより適切な投資判断を行うこと及び企業自身がその実態に即したより適切な経営判断を行うことを可能にし、3連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制度を構築するとの基本的認識に基づいて、21 世紀に向けての活力と秩序ある証券市場の確立に貢献することを目指すものであり、平成11 年会計基準も、このような基本的認識に沿った会計基準の整備の一環をなしている。50. 平成18 年改正会計基準は、貸借対照表の純資産の部の表示を定めた企業会計基準第5 号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)や会社法及び会社法への対応として公表された複数の会計基準等を踏まえ、これらとの関係で最小限必要な改正を行ったものである。50-2. 平成19 年改正会計基準は、これまで適当と考えられてきた企業会計上の有価証券の範囲を大きく変えないようにするために、技術的な改正を行った(第53 項参照)。これは、金融商品取引法の施行によって同法で定める有価証券の範囲が拡大することに対応したものである。50-3. 平成20 年改正会計基準は、金融取引を巡る環境が変化する中で、金融商品の時価情報に対するニーズが拡大していること等を踏まえて、すべての金融商品についてその状況やその時価等に関する事項の開示の充実を図るために改正を行ったものである。51. なお、金融市場の発展及び金融取引の開発はさらに進んでいくものと考えられることから、企業会計を取り巻く環境の変化に応じ、会計基準等の整備・改善について努力していく予定である。
2010.01.17
42. いわゆるローン・パーティシペーションやデット・アサンプションは、本会計基準における金融資産及び金融負債の消滅の認識要件を充たさないこととなるが、当分の間、次のように取り扱うこととする。(1) ローン・パーティシペーションは、我が国の商慣行上、債権譲渡に際して債務者の承諾を得ることが困難な場合、債権譲渡に代わる債権流動化の手法として広く利用されている。このような実情を考慮し、債権に係るリスクと経済的利益のほとんどすべてが譲渡人から譲受人に移転している場合等一定の要件を充たすものに限り、当該債権の消滅を認識することを認めることとする。(2) デット・アサンプションは、我が国では社債の買入償還を行うための実務手続が煩雑であることから、法的には債務が存在している状態のまま、社債の買入償還と同等の財務上の効果を得るための手法として広く利用されている。したがって、改めて、オフバランスした債務の履行を求められることもあり得るが、このような手続上の実情を考慮し、取消不能の信託契約等により、社債の元利金の支払に充てることのみを目的として、当該元利金の金額が保全される資産を預け入れた場合等、社債の発行者に対し遡求請求が行われる可能性が極めて低い場合に限り、当該社債の消滅を認識することを認めることとする。43. ヘッジ会計の適用にあたり、決済時における円貨額を確定させることにより為替相場の変動による損失の可能性を減殺するため、為替予約、通貨先物、通貨スワップ及び権利行使が確実に見込まれる買建通貨オプションを外貨建金銭債権債務等のヘッジ手段として利用している場合において、ヘッジ会計の要件が充たされているときは、「外貨建取引等会計処理基準」における振当処理も、ヘッジの効果を財務諸表に反映させる一つの手法と考えられるため、当分の間、振当処理を採用することも認めることとする。44. なお、これらの経過措置を必要とすることに関し実務上の制約がなくなったときは、本会計基準に従って会計処理される必要があるため、今後、適宜、当該経過措置の見直しを行うものとする。
2010.01.17
41. 本会計基準の適用は、次のとおりとする。(1) 平成11 年1 月公表の本会計基準(以下「平成11 年会計基準」という。)は、平成12年4 月1 日以後開始する事業年度から適用する。1 その他有価証券については、平成12 年4 月1 日以後開始する事業年度は帳簿価額と期末時価との差額について税効果を適用した場合の注記を行うこととし、財務諸表における時価評価は平成13 年4 月1 日以後開始する事業年度から実施することが適当である。ただし、平成12 年4 月1 日以後開始する事業年度から財務諸表において時価評価を行うことも妨げないこととする。2 平成11 年会計基準のうち、金融商品の評価基準に関係しない金融資産及び金融負債の発生又は消滅の認識、貸倒見積高の算定方法については、実施に関する実務上の対応が可能となった場合には、平成12 年4 月1 日前に開始する事業年度から適用することを妨げないこととする。(2) 平成18 年改正の本会計基準(以下「平成18 年改正会計基準」という。)は、平成18年改正会計基準公表日以後に終了する事業年度及び中間会計期間から適用する。ただし、会社法施行日(平成18 年5 月1 日)以後平成18 年改正会計基準公表日前に終了した事業年度及び中間会計期間については、平成18 年改正会計基準を適用することができる。なお、第26 項ただし書きの適用は、平成18 年改正会計基準の適用初年度において、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うことに留意する。(3) 平成19 年改正の本会計基準(以下「平成19 年改正会計基準」という。)は、金融商品取引法の施行日以後に終了する事業年度及び中間会計期間から適用する。(4) 平成20 年改正の本会計基準(以下「平成20 年改正会計基準」という。)は、平成22年3 月31 日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。ただし、当該事業年度以前の事業年度の期首から適用することを妨げない。なお、金融商品に係るリスク管理体制(第40-2 項(1)3参照)のうち、企業会計基準適用指針第19 号において特に定める事項については、平成23 年3 月31 日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができるものとする。
2010.01.17
40-2. 金融商品に係る次の事項について注記する。ただし、重要性が乏しいものは注記を省略することができる。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。(1) 金融商品の状況に関する事項1 金融商品に対する取組方針2 金融商品の内容及びそのリスク3 金融商品に係るリスク管理体制4 金融商品の時価等に関する事項についての補足説明(2) 金融商品の時価等に関する事項なお、時価を把握することが極めて困難と認められるため、時価を注記していない金融商品については、当該金融商品の概要、貸借対照表計上額及びその理由を注記する。
2010.01.17
40. 契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理する。
2010.01.16
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