2024/01/06
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カテゴリ: 私の本棚




商品を見る→デカ文字文庫 森鴎外 高瀬舟 638円

私は森鴎外の高瀬舟を時々思い出したように読む。
島送りになった罪人の喜助と、護送する同心の庄兵衛。
ふたりが高瀬舟の上で
しみじみとした会話をする場面が好きなのである。

弟殺しの罪で島に送られる喜助は
これまでの貧しい暮らしと決別できると顔をほころばせ
遠島を申し渡された際に与えられた
二百文の鳥目をふところにした幸せを
同心の庄兵衛にしみじみと話す。

喜助の弟は病気で働けず、兄の負担になることを苦にして
剃刀で自害するのだが死にきれずに
『待っていてくれ、お医者を呼んでくるから』
という兄の喜助に
『医者が何になる、ああ苦しい、早く抜いてくれ、頼む』
と剃刀を抜いてくれるよう兄に懇願する。

弟はかみそりを抜いてくれたら死なれるだろうから
抜いてくれと言った。
喜助は弟の苦しむ姿を目の前にして、
苦しみから救ってやろうと思って
剃刀を抜き死なせたのである。

『これが果たして弟殺しというものだろうか
人殺しというものだろうか』
同心の庄兵衛は本当に弟殺しと言えるのだろうかと
思えてならない。

弟はかみそりを抜いてくれたら死なれるだろうから
抜いてくれと言った。
それを抜いてやって死なせたことで
弟を殺したといわれる。
早く死にたいといったのは
苦しさに耐えられなかったからである。

喜助はその苦を見ているに忍びなかった
苦から救ってやろうと思って剃刀を抜いた
それが罪だろうか。

鴎外はこの小説で
『安楽死や自殺幇助は罪なのだろうか』
と疑問を投げかけており
それを同心の庄兵衛の感慨として書いている。

安楽死については議論があるところだ
苦しむ弟を楽にしてやった
と喜助は自分を納得させていた。
はたして、もしもこの場面に立たされた時
私は、そして他の多くの人々はどうするだろう・・・


●高瀬舟を耳でも楽しんで下さい●






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Last updated  2024/01/06 12:40:35 PM
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