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ぼんやり考え込んでいた珠子の耳に、ふと、正樹の不満げな声が聞こえた。
「・・・だったのかあ。 で、珠子、どんなやつよ、そいつ。 同じ高校のヤツ?」
えっ? 正樹ったら、誰の話してるのよ?
と、珠子が声に出すより早く、美緒が話に割り込んできた。
「ははっ! ばっかだねえ、正樹兄ちゃん。 嘘に決まってんじゃん。 ミエよミエ。 お姉ちゃんにカレなんかできるわけないでしょ。 妹のあたしより色気ないのにさ。 お姉ちゃんは昔から正樹兄ちゃん一筋。 チラッとよそ見したことすらないんだから。 妹のあたしが言うんだから間違いない」
そういえばあたし今、ひょっとして、正樹のほかに好きな人がいるような、いないような、微妙な言い方しようとした? 正樹の気をひこうとして?
「こ、こらっ! 美緒っ! 余計なこと言わないの!」
急に顔の熱くなったのを隠そうと、珠子は思い切りラーメンをすすり始めた。
・・・そうよ。 あたしはあたしだもの。 ナナさんとは違う。 あたしはこの街を出て別天地を求めたりはしない。 正樹のいるこの街で、普通の高校生活を送って、普通の仕事をして、普通の結婚をする。 確かに、未来のことなんてわからないけど、少なくとも今は、それがあたしの幸せだという気がする。
遠い空の上から、ミケがにこにこ笑って珠子を見下ろしているような気がした。
そうでございますとも、お嬢さま。 ナナさんはナナさん。 お嬢さまはお嬢さま。 しっかり前を向いて、ご自分の道をまっすぐ歩いていけばそれでいいのでございますよ。 どうぞお幸せになってくださいまし。 にゃあ。
最終回です ( 〃 ^∇^)o_ 彡☆
長い間あたたかく応援していただき、本当にありがとうございました。