音楽を聴いたり、唄ったり、楽器を鳴らしたりする中で、心や身体を刺激し、生活をより豊かにしてゆきます。音楽療法は、音楽を使って、その人のQOL(Quality of life)をより高める援助といえます。モーツアルトを聴くとよくなるなどと、メディアにのると飛びつくという社会の現象があります。けれどもCDを聴くだけでリラックスするとか気分がよくなるというような直接効果のあるものではなく、その人の生きる力、生きる勇気の背中を押すものが音楽療法であるといえます。
音楽療法は、長期療養、精神科、リハビリテーション、小児医療、緩和ケアでの領域で患者だけでなく、家族もスタッフにも全人的なニーズに音楽をもって援助することができます。全人的な援助とは、身体的・精神的・社会的・スピリチュアル的(その人の価値や信念に基づいた生存的なもので、宗教的なケアではなく、命の意味とか、死の意味を大切にしながら、どう生きるかということを考えるケア)であり、医療・看護の最も大事にしている援助の目的です。 音楽は、このスピリチュアルな部分において優位に働きかけることが可能であると考えます。我々は、音楽の中で患者、家族、スタッフと共に在ることができます。これは、病院やホスピス、施設といった建物ではなくて、その患者と"being with a patient"(患者と共に在る)ことが大事といったシシリーソンダース女史の言葉と重なります。