《櫻井ジャーナル》

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

サイド自由欄

寄付/カンパのお願い

巣鴨信用金庫
店番号:002(大塚支店)
預金種目:普通
口座番号:0002105
口座名:櫻井春彦

2012.01.29
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 シリアが民主的な国家だとは言えないだろうが、西側の有力メディアが伝えている内容には疑問がある。シリア政府を一方的に悪役とする一方、反体制派を民主化勢力であるかのように描くストーリーが事実に即しているとは言えない。自分たちの思い描く世界に合わない情報を排除すれば心地良いのかもしれないが、それでは日本人を地獄へ突き落とした旧日本軍の作戦参謀たちと同じだ。

 早い段階からシリアで起こっていることは「民主化運動」でなく、内乱だった。しかも反政府派にはアメリカやトルコなどのNATO加盟国、そしてサウジアラビアやカタールなど湾岸の独裁産油国が関与し、リビアで体制が転覆した後には「トリポリ旅団」のマフディ・アル・ハラティ元司令官をはじめとするLIFG(リビア・イスラム戦闘団)の一部がシリアに入り、戦闘に参加していると伝えられている。しつこいようだが、LIFGはアル・カイダ系の武装集団だ。

 現在、シリアの反政府軍は「SFA(シリア自由軍)」が主力のようだが、この武装勢力は昨年の4月下旬か5月上旬のあたりからアメリカ軍やNATO軍からトルコの米空軍インシルリク基地で訓練を受けているとする情報が流れている。

 ここにきて、 シリアに入っていたアラブ連盟の監視団 は活動を中止するとも言われはじめた。反体制派にとって監視団の目があると動きづらいはずで、いわば邪魔な存在。はやく出国してほしいことだろう。湾岸の独裁産油国が派遣していた監視団のメンバーが早々と引き上げるのは象徴的だ。

 サウジアラビアやカタールなど湾岸の産油国はシリアよりひどい独裁体制にあり、その独裁産油国がリビア、シリア、イランの反体制運動のスポンサーになっている。その産油国で行われている平和的な抗議活動が暴力的に弾圧されても傍観している国、組織、個人がシリアやリビアの人権を云々するのは奇妙な話なのである。しかも、リビアやシリアではアル・カイダ系の武装集団が反体制運動に深く関与している。

 アメリカ国務省がシリアの反体制派に対する資金援助を始めたのは、遅くとも2005年のこと。ジョージ・W・ブッシュ政権の時代。この事実は WikiLeaksが公表した外交文書 の中に書かれている。「MEPI(中東協力イニシアティブ)」や「民主主義会議」といった組織を通して資金を受け取っているようだ。バラク・オバマ政権はシリアとの関係を修復しようとしたようだが、その前に内乱が始まってしまった。

 シリア情勢はイランを抜きに語ることはできない。シリアでもたもたしていると、イランに対する動きも鈍くなる。そうした展開にイスラエルの閣僚も苛立っているようで、例えば、 ユバール・シュタイニッツ財務相はイランを完全に封鎖するべきだと主張 、1月27日には エフード・バラク国防相はイランをすぐにでも攻撃するべきだと語っている

 今のところアメリカ政府はイラン攻撃に消極的で、4月に予定されていたイスラエルとの合同軍事演習「オースティア・チャレンジ12」は延期されたのだが、10月には実施すると伝えられている。10月と言えば大統領選の大詰め。「オクトーバー・サプライズ」としてイランを攻撃する可能性も否定できない。実際、イランの地下施設を破壊するため、国防総省は イラン攻撃用の3万ポンドの「バンカー・バスター爆弾」 を開発したようだ。(まだ威力不足だとも言われているが。)

 しかし、こうした強硬策がアメリカをさらなる苦境に追いやる可能性もある。かつてはアメリカの同盟相手だったはずのパキスタンやサダム・フセイン後のイラクはBRICSに近づいている。アフガニスタンにもBRICSは食い込んでいるようだ。リビアに続き、シリアやイランを破壊したとしても、略奪に成功するとはかぎらない。

 ムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊、新体制がスタートしてからアル・カイダ系の武装集団がシリアへ移動しているようだが、その影響なのか、 リビアで新たな内乱の兆候 が見られる。カダフィが生存中は西側メディアが流していた「幻影」に少なからぬ人が騙されていたが、今では幻術も解けている。新たな内乱に対し、国連がどう動くかは大きな問題になるだろう。再び反カダフィ派、つまりアル・カイダ系武装集団を支援する決議をしたなら、国連が「テロリスト」と手を組むことを宣言するに等しいからだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2012.01.29 23:38:40


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: