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アゾフ海に面したマリウポリは戦略上、重要な港湾都市だ。2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターでキエフを制圧した後、ネオ・ナチ政権は戦車部隊をマリウポリに突入させて建造物を破壊、住民を殺傷している。その様子を撮影した映像を住民が世界に発信していた。 その後、マリウポリはクーデター軍に占領され、少なからぬ住民がロシアなどへ避難し、残った住民の一部はクーデター軍に拘束された。住民が避難したことから空いたスペースに親欧米派が多い西部から入植したが、クーデター体制が崩壊状態になったこともあり、避難していた住民の約30%が戻ったと伝えられている。 クーデターの後、4月12日にCIA長官だったジョン・ブレナンがキエフを極秘訪問、14日にはクーデター政権の大統領代行が東部や南部の制圧作戦を承認し、22日には副大統領だったジョー・バイデンもキエフを訪問、その直後から軍事力の行使へ急速に傾斜していった。そのタイミングでオデッサ攻撃についての会議が開かれたという。 ここにきてイスラエルのフーリガンがアムステルダムで乱暴狼藉を働いて問題になっているが、2014年5月2日にはウクライナ南部の港湾都市であるオデッサでもサッカー・ファンの暴力が引き金になって虐殺事件が起こっている。 その日の午前8時にフーリガンが列車で到着、赤いテープを腕に巻いた一団(UNA-UNSOだと言われている)が襲撃して挑発し、反クーデター派の住民が集まっていた広場へ誘導した。 広場に集まっていた住民は右派セクターが襲撃してくるので労働組合会館へ避難するように説得され、女性や子どもを中心に住民は建物の中へ逃げ込むのだが、その建物の中でネオ・ナチのグループは住民をそこで撲殺、さらに火を放って焼き殺した。皆殺しにするため、屋上へ通じるドアはロックされていたとも言われている。 このとき50名近くの住民が殺されたと伝えられているが、これは地上階で確認された死体の数にすぎず、地下室で惨殺された人を加えると120名から130名になると現地では言われていた。そして5月9日、住民が第2次世界大戦でドイツに勝利したことを祝っていたマリウポリにクーデター政権は戦車を突入させ、住民を殺し始めたのである。 オバマ政権はクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、マリウポリやオデッサを含む東部や南部はヤヌコビッチの支持基盤で、2010年の大統領選挙では有権者の7割がヤヌコビッチに投票していた。 クーデター直後、ウクライナでは軍人や治安機関メンバーの約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。離脱した軍人やメンバーの一部は東部ドンバス(ドネツクやルガンスク)の反クーデター軍に合流したとも伝えられている。 クーデターの状況をいち早く掴んだクリミアでは3月16日にロシアとの統合を求める住民投票を実施、80%以上の住民が参加した投票の結果、95%以上が加盟に賛成した。 クリミアは黒海に突き出た半島で、セバストポリは黒海艦隊の拠点。ロシアはこの拠点を確保するため、1997年にウクライナと条約を結び、基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められていた。この条約に基づき、クーデター当時には1万6000名のロシア軍が実際に駐留していたのだが、ウクライナ軍の約9割が反クーデターだったことから、ロシア軍の存在には関係なく、クーデター政権はクリミアを制圧できなかった。 オデッサと同じで、戦略的に重要なマリウポリはネオ・ナチが制圧したのだが、2022年2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を開始、地下があった都市のひとつ、マリウポリを解放する。 マリウポリのほか、ソレダル、マリーインカ、そしてアブディフカにも地下要塞が存在、それらを結ぶ要塞線がドンバス周辺に2014年から8年かけて築かれた。 キエフ政権が送り込んだ親衛隊が敗走した後、人質になっていた住民が脱出、外部のジャーナリストと接触できるようになった。そうした住民はマリウポリにおける親衛隊の残虐行為を証言、映像をツイッターに載せていた人もいた。その人のアカウントをツイッターは削除したが、削除しきれていない。(例えばココやココ) その後も脱出した市民の声が伝えられている。現地で取材していいる記者がいるからで、その中にはフランスの有力メディアTF1やRFIのほか、ロシアやイタリア人の記者もいたという。ヨーロッパではそうしたジャーナリストに対する弾圧が続いている。 マリウポリにある産婦人科病院を3月9日に破壊したのはロシア軍だという話を西側の有力メディアは広げていたが、そうした「報道」でアイコン的に使われたマリアナ・ビシェイエルスカヤはその後、報道の裏側について語っている。 彼女は3月6日、市内で最も近代的な産婦人科病院へ入院したが、間もなくウクライナ軍が病院を完全に占拠、患者やスタッフは追い出されてしまう。彼女は近くの小さな産院へ移動した。最初に病院には大きな太陽パネルが設置され、電気を使うことができたので、それが目的だろうと彼女は推測している。 そして9日に大きな爆発が2度あり、爆風で彼女も怪我をした。2度目の爆発があった後、地下室へ避難するが、その時にヘルメットを被った兵士のような人物が近づいてきた。のちにAPの記者だとわかる。そこから記者は彼女に密着して撮影を始めた。彼女は「何が起こったのかわからない」が、「空爆はなかった」と話したという。 病院についてはオンライン新聞の「レンタ・ル」もマリウポリから脱出した別の人物から同じ証言を得ている。その記事が掲載されたのは現地時間で3月8日午前0時1分。マリウポリからの避難民を取材したのだが、その避難民によると、2月28日に制服を着た兵士が問題の産婦人科病院へやってきて、全ての鍵を閉め、病院のスタッフを追い払って銃撃ポイントを作ったとしている。 イギリスのBBCは3月17日、ロシア軍が16日にマリウポリの劇場を空爆したと伝えたが、それを伝えたオリシア・キミアックは広告の専門家だ。マリウポリから脱出した住民はカメラの前で、劇場を破壊したのは親衛隊だと語っている。 アゾフスタル製鉄所から脱出したナタリア・ウスマノバの証言をシュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除してしまった。親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難し、戻る場所はドネツクしかないとし、ウクライナを拒否する発言が含まれていたからだ。 シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、ロイターが流した映像は編集で1分間に短縮され、アメリカのジョー・バイデン政権やウクライナのゼレンスキー政権にとって都合の悪い部分が削除されていた。 親衛隊に占領されていた地域から脱出した住民はウスマノバと同じように親衛隊の残虐な行為を非難、ウクライナ軍の兵士も親衛隊を批判している。こうした証言を西側の有力メディアは隠していた。 こうした虐殺の後もクーデター軍はドンバスの住宅街を攻撃、約8年間に住民1万4000人が殺したと言われている。 クーデター軍を恐れて多くのウクライナ人がロシアへ避難、その中にも勿論子どももいたのだが、ICC(国際刑事裁判所)は子どもをウクライナから「強制移住」させたとしてロシアのウラジミル・プーチン大統領と子どもの権利オンブズマンであるマリア・リボバ-ベロバに対する逮捕令状を発行している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.16
情報を不特定多数の人びとへ伝える手段の発達には情報操作という闇の側面もある。こうしたことはマスメディアが登場した当時からあっただろうが、1970年代後半から闇の部分が急速に広がっていることも確かだ。 その闇の側面の一端をアムステルダムでの出来事は明らかにした。アムステルダムでは11月7日にサッカーの試合、マッカビ・テルアビブ対アヤックスが開催されたのだが、イスラエルから来たフーリガンが市街で乱暴狼藉を働き、反撃された。フーリガンは地元住民の家と思われる建物に飾られていたパレスチナ国旗を引きずり下ろした上で引き裂き、燃やし、通りかかったタクシーを襲撃、アムステルダムの市民と衝突したのだ。 それを西側の政府や有力メディアは正しく伝えない。例えば、オランダのディック・シューフ首相は「容認できない反ユダヤ主義の攻撃」だと主張している。また同国のデービッド・ファン・ウィール安全保障相は、例によって証拠を示さず、人びとがユダヤ人だということを理由に攻撃され、脅迫されたのは事実だ主張した。アメリカのジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官は公式声明で、この暴力行為の爆発は「反ユダヤ主義的」だと直ちに宣言している。 事件直後、イギリスのスカイ・ニュースはマッカビ・テルアビブのフーリガンが襲撃したことを伝え、パレスチナの旗を引き裂く様子を流していたのだが、「スカイニュースのバランスと公平性の基準を満たしていなかった」として再編集、視聴者がイスラエルの暴徒に同情的するような内容へ変えられている。 また「マッカビのファンが地元住民を攻撃しているのが見られ、パトカーが通り過ぎるのが見られる」という説明は削除され、「ソーシャルメディアに投稿された動画には、フードをかぶった大勢の男たちが黒い服を着て通りを走り、人々を無差別に殴っている様子が映っている」というように変更され、その夜の出来事と西側諸国の政治家がどのように反応したかの要約もカットされた。 こうした嘘を暴いたいのは市民にほかならない。そうしたひとりが10代の少年ユーチューバー。別の目撃者も画像と共にインターネットで実際に何があったのかを証言している。西側世界のプロパガンダ機関に市民が立ち向かっている構図だ。 アメリカでは第2次世界大戦の後、情報を操作するためのプロジェクト「モッキンバード」がスタートしたと言われている。ジャーナリストのデボラ・デイビスによると、プロジェクトの中心にいたのはワシントン・ポスト紙の社主を務め、戦争中は陸軍の情報部に所属していたフィリップ・グラハム、大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、破壊工作を担当する秘密機関OPCの局長でダレスの側近だったフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) この4名は金融界との関係が深い。ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士であり、ヘルムズの祖父であるゲイツ・マクガラーは国際的な投資家で、BIS(国際決済銀行)理事会の初代議長、フィリップ・グラハムの妻、キャサリンの父、ユージン・メイヤーは世界銀行グループの初代総裁で、FRB(連邦準備制度理事会)の議長も務めた。 メイヤーは1933年に競売でワシントン・ポストという倒産会社を競り落とし、自分自身の人脈を利用してこの新聞社を「一流紙」と呼ばれるように作り上げた。 フィリップはキャサリーンと離婚して再婚し、ワシントン・ポスト紙を自分ひとりで経営すると友人に話していたが、1963年6月に精神病院へ入院、8月に自殺する。新聞社はキャサリンが引き継いだ。フィリップと親しくしていたジョン・F・ケネディが暗殺されたのはその3カ月後のことだ。 1970年代の半ばにアメリカの議会では情報機関の秘密工作に対する調査が進められたが、それに対抗して情報機関やその後ろ盾である私的権力は情報統制を強化、メディアの集中支配を可能にするために規制を緩和、今では有力メディアの大半を少数のグループが支配している。 2019年にはCOMCAST(NBCなど)、ディズニー(ABC、FOXなど)、CPB(NPR、PBSなど)、Verizon(Yahooニュース、ハッフィントン・ポスト)、ナショナル・アミューズメンツ(VIACOM、CBS、MTVなど)、AT&T(CNN、TIME、ワーナー・ブラザーズなど)、グーグル、ニューズ・コープ(FOXニュース、ウォール・ストリート・ジャーナルなど)というようになっている。 日本でも1980年代にマスコミの統制が強化された。その直前、毎日新聞の西山太吉記者は沖縄返還協定の背後に密約が存在する事実をつかんで報道するのだが、ライバルのメディアは何者かに操られているかのように情報の収集方法を問題にし、密約自体は曖昧なまま幕引きになった。その出来事で毎日新聞は攻撃の矢面に立たされて経営が悪化している。日米支配システムのタブーに触れると巨大メディアも潰れてしまうことが示されたとも言える。 また、1987年5月には朝日新聞の阪神支局が散弾銃を持った人物に襲われ、ひとりが射殺され、別のひとりが重傷を負った。この襲撃事件で縮み上がったマスコミ関係者は少なくない。 そして1991年。「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会の冒頭、むのたけじは「ジャーナリズムはとうにくたばった」と発言した。(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.15
シリアのアル・マシア丘の頂上にあるレーダー施設がイスラエル軍から2度の攻撃を受けた11月9日、ロシア国防省は同国の航空宇宙軍とシリアの空軍がシリア領内で合同演習を実施したと発表した。 11月11日にアメリカ中央軍はシリア領内の標的に対して攻撃を実施したことを明らかにし、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)で報道官を務めているヤヒヤ・サリーは11月12日、彼らはアラビア海でアメリカ海軍の空母「エイブラハム・リンカーン」をミサイルで攻撃したと主張している。ガザやレバノンで住民が虐殺しているイスラエルをイエメンは攻撃、そのイスラエルを支援しているアメリカの軍艦を攻撃したことになる。 11月13日にはロシア大統領の中東担当特使アレクサンダー・ラブレンチェフはイスラエルに対し、シリアの基地付近への攻撃を避けるように要求したと語った。 ドナルド・トランプはジョー・バイデンやカマラ・ハリスと同じようにイスラエルと緊密な関係にあり、次期政権の要職にシオニストを配置すると見られている。 中でも注目されているのはエリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツで、親イスラエルの下院議員であるステファニックは国連大使のポストが提示され、国務長官になると言われているルビオ上院議員もシオニスト。国家安全保障補佐官に任命されると言われているウォルツは陸軍のグリーンベレーに所属していた経歴の持ち主で、好戦的なシオニストだ。 トランプを資金面から支えていたシェルドン・アデルソンはユダヤ系の富豪で、アメリカのラスベガス(ネバダ州)、ベスレヘム(ペンシルベニア州)、さらにマカオ(中国)、マリナ湾(シンガポール)でカジノを経営、日本にもカジノを作らせるように要求していた。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とも親しく、2013年にはイランを核攻撃で脅すべきだと語っていた。2021年1月11日に非ホジキン・リンパ腫で死亡、遺体はイスラエルに埋葬されたが、アデルソンの人脈は今も生きている。 大統領選挙でドナルド・トランプの勝利が確定した後、イスラエルはこれまで以上に好戦的な姿勢を見せ、ロシア軍のシリアにおける拠点とされるフメイミム空軍基地の近くにある倉庫を空爆、ロシアを威嚇、あるいは挑発している。これまでロシアはアメリカやイスラエルとの関係を配慮してシリアやイランに対する支援を抑制してきたが、それを逆手に取っている。 これまでアメリカの外交や安全保障分野の政策は基本的にシオニストが取り仕切ってきた。トランプ政権も例外ではないだろうが、アメリカやイスラエルの軍事力や経済力の優位が失われた現在、そうしたこれまでの仕組みが機能しなくなっている。イスラエルも現状を打破するためにロシアを頼るかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.14
ドナルド・トランプはホワイトハウスから新自由主義の信奉者を排除し、1973年頃のアメリカを復活させようとしていると言われているのだが、そうした話に反することも行われている。 トランプが嫌っているというこの経済イデオロギーを広めたのはミルトン・フリードマンやフリードリッヒ・フォン・ハイエク。一部の私的権力へ富を集中させることになるが、必然的に貧富の差が拡大、国は疲弊する。 ハイエクは1929年にアメリカの株式相場が暴落した後、1930年代に私的な投資を推進するべきだと主張、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突した学者だ。ハイエクの教え子にはデイビッド・ロックフェラーも含まれている。 フリードマンは1962年に出版された『資本主義と自由』の中で、企業の利益追求を制限する試みは「全体主義」へ通じていると主張、70年9月にはニューヨーク・タイムズ・マガジンで企業の経営者は社会的な責任を無視するべきだとしていた。この政策を推進すれば富はシステム上優位な立場にある一部の人びとに富が集中、政府を上回る力を持たせることになる。 1933年3月から45年4月までアメリカ大統領を務めたフランクリン・ルーズベルトは1938年4月、人びとが容認する私的権力が民主主義国家そのものより強くなると民主主義国家の自由は危うくなり、その本質はファシズムだと主張している。新自由主義はファシズムの別名だと言えるだろう。この経済イデオロギーはネオコン(新保守)と呼ばれる政治イデオロギーと結びついている。 ネオコンはシオニストの一派で、好戦的だ。ジェラルド・フォードが大統領だった1970年代に台頭した。フォードはリチャード・ニクソン大統領が失脚した後、1974年8月に副大統領から昇格した人物だ。 ネオコンが台頭する前からシオニストはアメリカの外交や安全保障分野を仕切っていた。シオニストと対立したジョン・F・ケネディ大統領も選挙期間中は慣例に従う姿勢を見せていた。 シオニストとユダヤ人を混同する人が少なくないが、シオニズムは16世紀の後半、エリザベス1世が統治するイギリスで広がったキリスト教のイデオロギー。その当時、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が支配層の中に現れ、「ユダヤ人の国」を作らなければならないと信じるグループが現れた。ブリティッシュ・イスラエル主義だ。このカルトにはユダヤ教のエリートも加わったものの、一般のユダヤ教徒からは相手いされなかったようだ。 こうした話を信じた人の中には、スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、そしてオリヴァー・クロムウェルの周辺も含まれていた。クロムウェルは1657年にユダヤ人がイングランドへ戻ることを認めている。こうした動くと連動する形でオカルトが支配層の内部で広がっていく。 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) シオニズムという用語はナータン・ビルンバウムなる人物が1893年に初めて使ったとされているが、近代シオニズムの創設者とされているのは1896年に『ユダヤ人国家』を出版したセオドール・ヘルツル。ユダヤ教に興味はなかったとされている。 ユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配、内陸部を締め上げるという戦略を立てていたイギリスにとってスエズ運河は重要な意味を持つ。その運河近くにイギリスがサウジアラビアとイスラエルを作ることになる。 イギリス外務省アラブ局はエージェントを後のサウジアラビア国王でワッハーブ派のイブン・サウドに接触させ、1916年6月にアラブ人を扇動して反乱を引き起こした。トーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」もその部署に所属していた。オスマン帝国を解体し、中東を支配することが目的だ。 ローレンスが接触していたフセイン・イブン・アリにイギリスのエジプト駐在弁務官だったヘンリー・マクマホンは書簡を出し、その中でイギリスはアラブ人居住地の独立を支持すると約束した。フセイン・マクマホン協定である。このイブン・アリを追い出したイブン・サウドを中心として1932年に作られた国がサウジアラビアにほかならない。 その一方、イギリスのアーサー・バルフォア外相はロスチャイルド卿に宛てに出した書簡の中で「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。1917年11月のことだ。 また、イギリスとフランスは石油資源に目をつけ、サイクス・ピコ協定を1916年5月に結んでいる。フランスのフランソワ・ジョルジュ・ピコとイギリスのマーク・サイクスが中心的な役割を果たしたことからそう呼ばれている。 イギリスは1919年、石油利権を手に入れるためにペルシャを保護国にし、その2年後に陸軍の将校だったレザー・ハーンがテヘランを占領する。そして1925年にカージャール朝を廃して「レザー・シャー・パーレビ」を名乗るようになった。 第2次世界大戦後、そのイランは独立の道を歩み始め、1951年4月には議会での指名を受けて国王が首相に任命したムハマド・モサデクがAIOC(アングロ・イラニアン石油、後のBP)の国有化を決める。それはイギリスにとって死活問題だったことからアメリカに頼み込み、クーデターを実行することになる。 米英やその属国がイスラエルと緊密な関係にあるのは、こうした歴史的な背景があるからだ。「ユダヤ人が世界を支配している」という見方は正しくない。「ユダヤ人」は欧米の私的権力、古い表現を使うならば帝国主義者がカモフラージュのために使ってきたと言うべきだ。 ユダヤ系シオニストはそうした帝国主義者の手先として活動してきたのだが、ここにきて問題が起こっているように見える。帝国主義者の手先だったイスラエル人の一部が暴走し始めている。 トランプは新自由主義や新保守主義者を排除するとしているが、アメリカの有力メディアはシオニストが政府に入ると伝えている。中でも注目されているのはエリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツ。 ステファニックは親イスラエルの下院議員で、国連大使のポストが提示され、受け入れたとされている。国務長官になると言われているルビオ上院議員はキューバ系アメリカ人で、シオニスト。出世欲はあるものの、外交面の能力はないとみなされている。ロシアや中国に対して好戦的な姿勢を見せてきたが、「風見鶏」とも言われている。国家安全保障補佐官に任命されると言われているウォルツは陸軍のグリーンベレーに所属していた経歴の持ち主で、好戦的。シオニストでもある。 トランプもシオニストから離れられないようだが、そのシオニストが作ったイスラエルからアムステルダムへ乗り込んだフーリガンは乱暴狼藉を働いた。有力メディアはそのフーリガンを被害者だと宣伝しているが、その嘘は現地の少年ユーチューバー、ベンダーが撮影した映像でもわかる。しかもフーリガンは何者かの指揮の下で行動、警官隊も連携しているように見える。フーリガンの一行にイスラエルの情報機関、モサドが同行していたことをエルサレム・ポストが紹介していたことは本ブログでも紹介した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.13
次期アメリカ大統領に選ばれたドナルド・トランプが11月7日にロシアのウラジミル・プーチン大統領と電話でウクライナにおける戦争について話し合ったとワシントン・ポスト紙が10日に報じたが、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官はそれを否定、トランプの広報担当スティーブン・チュンもこのやりとりを認めていない。またウクライナ外務省は、キエフがトランプとプーチン大統領の電話会談について事前に知らされていたという報道は誤りだと述べた。 ワシントン・ポスト紙を含む西側の有力メディアは支配層が人びとを操る道具にすぎないことは明確になっている。今回の記事を書いた記者は「ロシアゲート」なるフィクションを宣伝していたひとりでもある。有力メディアは人びとに幻影を見せ、支配層が望む方向へ国を進めるのが役割であり、ワシントン・ポスト紙が事実を伝えると考えることはできない。 トランプがプーチンに対してウクライナ戦争をエスカレートさせないよう助言、アメリカがヨーロッパにかなりの軍事力を有していることを思い起こさせたと同紙は伝えているのだが、現在、ウクライナ軍は戦死者の山を築きながら後退している状況。ロシア軍は進撃のスピードを速めていると伝えられている。またロシア軍と戦うだけの戦力はヨーロッパに配備されていない。「エスカレート」なる表現が入り込む余地はないのが実態。 ウクライナで戦争を始めたネオコンは「膠着状態」を演出したかったのか、8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。国境警備隊しか配置されていないクルスクを狙ったのかもしれないが、ロシア軍はすぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けている。増援部隊を投入しようとしたとも言われているが、成功しなかったようだ。 この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入されているが、兵士の数が圧倒的に足りないため、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加、東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。 この作戦でウクライナ側はすでに3万1000人以上が死亡したとも言われている。戦死者の遺体交換でロシアは563体をウクライナ側へ引き渡し、ウクライナは37体をロシア側に引き渡したとも言われ、こうしたことからウクライナ軍の戦死者数はロシア側の10倍以上だと見られている。ネオコンはウクライナ兵に「玉砕攻撃」を繰り返させ、ロシア兵の死傷者を増やそうとしたようだが、成功したとは言えない。 プーチンはアメリカ側と話し合う用意があるとしているが、西側に対する信頼を失っているロシア政府は軍事力で解決するしかないと覚悟しているはずで、米英が得意とする「幻術」は通用しない。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの情報機関、イギリスの対外情報機関SIS(通称MI-6)のエージェントで、MI6長官のリチャード・ムーアがハンドラーとして操っているとスコット・リッターは自身が作成した2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」の中で指摘した。(パート1、パート2)イギリス、あるいはシティは厳しい状況に陥っている。 リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官。調査にはフランスの元情報機関員エリック・デネーゼが協力している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.12
ロシア国防省は11月9日、同国の航空宇宙軍とシリアの空軍がシリア領内で合同演習を実施したと発表した。シリア北西部のグレーター・イドリブ地域でテロリスト集団が政府軍に対する大規模攻撃を開始する準備を進めていると伝えられているが、その対策かもしれない。11月9日にはシリアのアル・マシア丘の頂上にあるレーダー施設がイスラエル軍から2度の攻撃を受けたともいう。 また、アメリカやイギリスなど西側諸国を後ろ盾とするイスラエルがガザやレバノンで住民を虐殺するだけでなく、イランやシリアに対する攻撃も激化させて中東の軍事的な緊張を高めていることも意識している可能性が高い。 イスラエル軍は4月1日にダマスカスのイラン領事館を空爆し、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊と言われているコッズのモハマド・レザー・ザヘディ上級司令官と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害した。7月31日にはテヘランでハマスのイスマイル・ハニヤが暗殺されたが、イスラエルが実行したと信じられている。 8月5日にはロシアの安全保障会議で書記を務めるセルゲイ・ショイグがイランを訪問してマスード・ペゼシュキアン大統領らと会談。ショイグはイスラエルに対する報復についてイラン側と話し合ったのだろうと見られている。イスラエルは「一線」を超えることでアメリカを戦争へ引き込もうとしていると言われている。 次期大統領のドナルド・トランプは2017年1月にもアメリカ大統領に就任している。その3カ月後、アメリカ海軍の駆逐艦2隻、ポーターとロスは地中海から巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したが、その6割が無力化されてしまった。 ロシア製防空システムの能力に興味を持ったのか、その年の10月5日にサウジアラビアのサルマン国王はロシアを訪問、ロシア製防空システムS-400を含む兵器/武器の購入を打診したと言われているが、アメリカの圧力で実現しなかったという。 2018年4月にトランプ政権はイギリスやフランスを巻き込み、100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したが、今度は7割が無力化されてしまう。ECM(電子対抗手段)の能力が注目されているが、前年には配備されていなかった短距離用の防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったとも言われている。 この当時、ロシアはシリアやイランへの防空システム供与に慎重だった。アメリカやイスラエルからの圧力があったと言われている。シリアに配備された新しいタイプの防空システムは基本的にロシア軍の基地を守ることが目的だったようだ。 しかし、欧米の支援を受けたイスラエルの攻撃が激しくなり、イランとイスラエルとの戦争が勃発する危険性が高まる中、ロシアはこれまで供与してこなかった兵器も渡し始めた可能性がある。 イラクにしろリビアにしろシリアにしろ、戦争に巻き込んだのはアメリカにほかならない。イスラエルへ供給されている武器の69%はアメリカから、そして30%はドイツから。輸送の拠点はイギリスで、キプロス経由で運ばれている。 中東などでアメリカが侵略戦争を本格化させたのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから。 ジョージ・W・ブッシュ政権は従属国を従えて2003年3月にイラクを先制攻撃したが、この軍事作戦は思惑通りに進まず、09年1月にアメリカ大統領となったバラク・オバマはムスリム同胞団を中心とする武装集団を編成して代理戦争を始めた。この戦術はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に考えたものだ。 オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、北アフリカからシリアにかけての地中海沿岸国で体制転覆作戦を進め始めた。いわゆる「アラブの春」だ。 オバマ政権は2011年2月にリビア、同年3月にはシリアを攻撃し始めているが、その作戦ではムスリム同胞団のほかサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするアル・カイダ系武装集団が投入された。リビアはその年の10月にムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、カダフィ本人を惨殺したが、シリアのバシャール・アル・アサド政権は倒されていない。 アサド政権を倒せないため、オバマ政権はリビアから武器弾薬や戦闘員を移動させただけでなく、新たな戦闘集団を編成している。イラクのサダム・フセイン政権時代に軍人だった人びとが参加したと言われている。 そうした動きを危険だと判断したのがDIA。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと名称が変わっても実態は同じだと指摘している。その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 DIAは報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)という形で現実になった。2014年1月にダーイッシュはファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧する。 その後、この武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘う。2015年9月30日にロシア軍はシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していくのだが、本格的な介入は行ってこなかった。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.11
アメリカの大統領選挙で勝利したドナルド・トランプは選挙期間中、ウクライナでの戦闘を終わらせると約束していた。この公約を実現できるのかどうかを人びとは注目しているが、トランプも万能ではない。 ウクライナでの戦闘は1992年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)をネオコンが作成したところから始まった。 この計画に基づいてアメリカはドイツや日本を自分たちの戦争マシーンに組み込む一方、旧ソ連圏を解体しはじめる。まずユーゴスラビアの解体を進め、NATOは99年3月にユーゴスラビアを先制攻撃して破壊している。世界制覇戦争が本格化するのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてからだ。 アメリカが旧ソ連圏の解体を進め、ウクライナの独立を認める。そこでソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部や南部の住民はウクライナからの独立や自治権獲得を望むが、これを西側は認めないのだが、それでもウクライナでは西側にもロシアにも与しないという方針を打ち出した。 しかし、ロシア征服の鍵を握るウクライナを制圧したいアメリカの支配層は中立を認めようとしない。2004年の大統領選挙で中立を掲げるビクトル・ヤヌコビッチが勝利すると、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買う。 2009年1月にバラク・オバマが大統領に就任、その翌年にはウクライナでも大統領選挙があった。その選挙で再びヤヌコビッチが勝利。そこでオバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にした。 この戦争を主導したのはネオコンで、ホワイトハウスの中では副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンが中心的な存在だったとされている。 しかし、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデタを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が勃発したのである。こうした経緯を無視してウクライナ情勢を語ることはできない。 2014年にネオ・ナチを主体とするクーデター政権が成立しているのだが、軍や治安機関の約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱、一部は東部ドンバス(ドネツクやルガンスク)の反クーデター軍に合流したと伝えられている。そのため、当初、ドンバスでの戦闘は反クーデター軍が優勢だった。 そこでロシアと戦う態勢を整えるための時間が必要になり、出てきたのがミンスク合意だ。これをアメリカなど西側諸国は時間稼ぎに使い、8年かけて武器弾薬を供与、兵士を育成、訓練、ドンバス周辺に地下要塞をつなぐ要塞線を構築した。 2021年1月にバイデンが大統領に就任、ロシアのウラジミル・プーチン大統領を人殺し呼ばわりするだけでなく、ロシアに対する軍事的な挑発を始めた。バイデン大統領の下でそうした好戦的な政策を推進していたのは国家安全保障補佐官に就任したサリバン、国務次官になったヌランド、そしてアントニー・ブリンケン国務長官だろう。 2022年に入るとウクライナのクーデター体制はドンバス周辺に部隊を集め、砲撃を活発化させた。そうした状況を見て、少なからぬ人が大規模な軍事作戦が始まると推測していた。そうした時、ロシアはウクライナに対する攻撃を始めたのだ。 こうしたアメリカの好戦派は自国の軍事力や生産能力を過大評価、ロシアの軍事力や生産能力を過小評価し、ロシアと戦争しても簡単に勝てると信じていたようだが、その背景には優生思想、あるいは信仰があるのかもしれない。 アメリカをはじめとする西側諸国はウクライナ人とロシア人を戦わせて「漁夫の利」を得ようとしていた、あるいは共倒れを目論んでいたかもしれないのだが、2022年以降、ロシアの優位は変わらないまま推移し、すでにウクライナ軍は降伏するか全滅するしかない状況だ。 ここにきて西側の有力メディアは「朝鮮兵話」を流しているが、これは西側の軍隊を入れる布石だとする見方もある。そうしたことをロシア側が認めるとは思えず、アメリカ軍とロシア軍が直接衝突することも考えられる。通常兵力では劣勢のアメリカ軍は核兵器を使うことになる可能性も否定できない。朝鮮兵の話を持ち出してきたブルース・W・ベネットはアメリカ国防総省系シンクタンクRANDの上級国際/防衛研究者である。 ロシア政府はウクライナの非武装化、非ナチ化、中立性の回復などを求めてきた。ソ連時代にロシアからウクライナへ一方的に割譲された地域のロシアへの返還も実現しようとするだろう。いかなる形でもNATOがウクライナへ入ることは許さないはずだが、西側の好戦派はロシア政府を甘く見て入ってくる可能性がある。核戦争で脅し続ければロシアは最終的に屈服するとネオコンは今でも信じているかもしれない。 ロシアが実現しようとしている目標の中で最も難しいのは非ナチ化だろう。ナチスはシティやウォール街、つまり米英金融資本から資金援助を受けていた。第2次世界大戦後はアメリカの政府機関に逃亡を助けられ、保護され、雇用され、後継者も育成されてきた。ウクライナでもナチスの後継者、いわゆるネオ・ナチが使われた。米英金融資本を中心とする西側の支配システムが存在している限り「非ナチ化」は不可能だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.10
アムステルダムで11月7日にサッカーの試合があった。イスラエルのマッカビ・テルアビブとオランダのアヤックスが対戦したのだが、その際にイスラエルのフーリガンが地元住民の家と思われる建物に飾られていたパレスチナ国旗を引きずり下ろして引き裂き、燃やすという挑発行為を繰り広げた。また通りかかったタクシーを襲撃、オランダのファンと衝突している。 これに関し、オランダの新聞が伝えた興味深い話をイスラエルのエルサレム・ポストが紹介している。オランダに遠征するマッカビ・テルアビブのチームにイスラエルの情報機関モサドのエージェントが帯同するとしているのだ。このチームはアラブ差別で知られ、アムステルダムで問題を起こすことは見通されていただろう。 11月6日から7日にかけてマッカビ・テルアビブのフーリガンはオランダ人の個人住宅からパレスチナの国旗を引き剥がし、タクシー運転手を襲撃、その様子は撮影され、インターネットで流されている。そうしたフーリガンにモサドのエージェントも混じっていた可能性が高い。 この暴動に関し、オランダのディック・シューフ首相は「容認できない反ユダヤ主義の攻撃」と呼び、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「アムステルダムのイスラエル市民に対する非常に暴力的な事件」と非難しているのだが、オランダを含む欧米諸国でもイスラエルに対する感情はさらに悪化、その怒りはユダヤ人全体に向けられる可能性もある。 ネタニヤフ政権は中東で戦乱を拡大させ、イランとの戦争にアメリカを引き摺り込もうとしているが、そうした政策はイスラム世界を刺激、イスラエルへの攻撃を招き、経済を破綻させている。その結果、イスララエルから脱出する人が増え始めた。脱出する先はヨーロッパやアメリカなどだが、そうした国々でイスラエルに対する怒りが膨らめば脱出先にはならなくなるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】https://sakuraiharuhiko.substack.com/
2024.11.09
オランダのアムステルダムで11月7日にUEFA(欧州サッカー連盟)の試合があった。対戦したのはイスラエルのマッカビ・テルアビブとオランダのアヤックス。その際、イスラエルのフーリガンが地元住民の家と思われる建物に飾られていたパレスチナ国旗を引きずり下ろして引き裂き、燃やすという挑発行為を繰り広げ、通りかかったタクシーを襲撃し、オランドの若者とも衝突したと伝えられている。 パレスチナを支持するデモは禁止されていたが、現場で取材していた記者によると、衝突は数千人のマッカビ・テルアビブのファンがデモを組織したことから始まった。そうしたファンは試合前、スタジアムに向かいながら「IDF(イスラエル軍)にアラブ人をぶっ殺させてやれ」と叫び、子どもがいないガザには学校がないとも合唱していた。 そうした状況についてオランダのディック・シューフ首相は「容認できない反ユダヤ主義の攻撃」と呼ぶ一方、フーリガンによるオランダ国民への暴行については言及していない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「アムステルダムのイスラエル市民に対する非常に暴力的な事件」と非難、救援機を派遣すると発表した。 こうした人びとや西側の有力メディアはこの衝突を「ユダヤ人弾圧」と宣伝する材料に使い始めている。オランダ第二院の第1党で反イスラムの自由党を率いるヘルト・ウィルダースは今回の衝突を「ポグロム」であり「ユダヤ人狩り」だと表現している。 タグ付けでイメージを作り出そうとしているのだが、イスラエルは実際にパレスチナやレバノンで住民の大量虐殺を繰り広げてきた。これは戦争の巻き添えではなく、計画的。ネタニヤフ首相は昨年10月7日にハマスがイスラエルへ攻め込んだ後、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という旧約聖書の一節を引用している。神の命令として、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は天の下からアマレクの記憶を消し去れと書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、歴史から彼らが存在したことを消し去るとネタニヤフは主張しているのだ。 また、サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザやレバノンでイスラエルが行っていることにほかならない。 ガザでは昨年10月7日から4万3469人がイスラエル軍に殺されたとされているが、瓦礫に埋もれ、カウントされていない死体は少なくとも数千あると推測する人もいる。ランセット誌が今年7月に掲載した論文によると、「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」。犠牲者の約4割は子どもであり、女性を含めると約7割に達する。イスラエルのフーリガンはこのことを歌ったと言える。 EU諸国の政府はイスラエルを支持、パレスチナ人虐殺を容認する姿勢を示したきたが、アラブ系の人びとだけでなく、一般の人びとのイスラエルに対する怒りは募っている。その怒りのエネルギーをイスラエルのフーリガンは刺激した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.09
今回のアメリカ大統領選挙で勝利したのはドナルド・トランプでもカマラ・ハリスでもなくネオコンだとする人がいる。トランプもハリスも外交や安全保障分野はネオコンの世界制覇戦略に従っているということだ。 ネオコンが表舞台に登場したのはジェラルド・フォードが大統領だった1970年代。デタント(緊張緩和)を打ち出したリチャード・ニクソン大統領はウォーターゲート事件で1974年8月に失脚し、副大統領を務めていたフォードが昇格したのだ。 大統領になったフォードはFBI長官だったJ・エドガー・フーバーと近く、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された後、リンドン・ジョンソン新大統領が設置した「ケネディ大統領暗殺に関する大統領委員会」のメンバーでもあった。 最高裁裁判長だったアール・ウォーレンを委員長に据え、メンバーにはフォード下院議員、ヘイル・ボッグス下院議員、リチャード・ラッセル上院議員、ジョン・クーバー上院議員、アレン・ダレス元CIA長官、ジョン・マックロイ元世界銀行総裁。主席法律顧問を務めたのはリー・ランキンだ。 言うまでもなくダレスはウォール街の弁護士で、大戦中から破壊活動を指揮、ケネディ大統領にCIA長官を辞めさせられた人物。マックロイはウォール街の大物で、大戦の後に世界銀行の総裁を経てドイツの高等弁務官を務め、ナチスの大物たちを守っている。委員会の中で唯一の専従はダレスだった。ダレスの側近で1966年6月から73年2月までCIA長官を務めたリチャード・ヘルムズによると、彼がダレスを委員にするように説得したのだという。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) フォード大統領はジョージ・H・W・ブッシュをCIA長官に、ドナルド・ラムズフェルドを国防長官に据え、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パイプスもこの時に表舞台へ出た。ラムズフェルド、チェイニー、ウォルフォウィッツ、パイプスはネオコンと呼ばれる一派に属していた。 ブッシュの父親プレスコットは銀行の元幹部で、ウォール街時代にダレスと親しくしていた。そうしたこともあり、エール大学時代にジョージはCIAからリクルートされたと信じられている。 ネオコンには「元トロツキスト」が多いと言われている。トロツキストはレフ・トロツキーの理論を信奉する人びとだが、この人物は1917年の「二月革命」当時、ニューヨークに住み、メンシェビキのメンバーだった。 トロツキーは1917年3月にニューヨークを離れたが、途中で彼の乗った船がイギリス海軍に拿捕されてしまう。釈放されたのは4月のこと。ロシアへ着いたのは5月に入ってからだ。トロツキーがボルシェビキに加わるのはその後、十月革命の直前になってからである。 ボルシェビキの幹部も二月革命当時、革命の現場にはいなかった。刑務所に入れられていたか、ウラジミル・レーニンのようにスイスへ亡命していた。そのレーニンたちボルシェビキの幹部32名をドイツ外務省は列車でロシアへ運ぶ。当時、第1次世界大戦が始まっていたが、レーニンたちは即時停戦を主張していたからだ。ボルシェビキの幹部がロシアへ戻ったのは1917年4月のことだ。 アメリカのトロツキストで有名な人物のひとりはジェームズ・バーナム。1929年にニューヨーク大学の教授に就任、30年代の半ばからトロツキストだったとされているのだが、第2次世界大戦中にアメリカの戦時情報機関OSS(戦略事務局)入りし、大戦後にはジョージ・ケナンの推薦で極秘の破壊工作機関OPCへ参加したことも知られている。バーナムの周辺からネオコンへ流れた人がいるようだ。 しかし、ネオコンの思想的な支柱はシカゴ大学のレオ・ストラウス教授だとされている。この人物は17歳の頃にウラジミール・ジャボチンスキーのシオニスト運動へ接近、1932年にはロックフェラー財団の奨学金でフランスへ渡り、プラトンやアリストテレスの研究を始めた。 ストラウスは1937年にアメリカへ渡り、コロンビア大学の特別研究員になる。1944年には教授として受け入れられ、49年から73年までシカゴ大学で教えている。ストラウスと同じようにシカゴ大学の教授を務めたアルバート・ウォルステッターもネオコンを支えたひとりだ。 このネオコンの人脈を見ると、彼らの背後にはアメリカやイギリスの金融資本が存在、トランプもハリスも、つまり共和党も民主党も米英金融資本を中心とする私的権力に操られている。ファシズム、あるいは帝国主義と呼ぶべき体制だ。アメリカにおいて選挙は単なる儀式にすぎず、この国の体制を民主主義と呼ぶことはできない。 それにもかかわらずアメリカを「民主主義国」だと信じている人が少なくないのはそのように信じさせる強力な仕組みがあるからだ。教育で思考のベースが形成され、メディアや映画などでイメージが作られている。ハリウッドにはカバラの信者が巣食っているが、CIAはシナリオをチェックしていると言われている。 CIAの検閲基準に従っても支配システム内の犯罪、悪事を描くことは許されるが、あくまでも個人やグループによるとしなければならない。システム全体は健全で、最後にはそのシステムが犯罪や悪事を正すとしなければならないのだ。ハリウッドの外でも、ある政治勢力はダメだが別の政治勢力は良い、システム内の善玉が悪玉を処罰する、といった類の話は眉に唾をつけながら聞いた方が良い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.08
アメリカ大統領選でドナルド・トランプがカマラ・ハリスを破り、次期大統領に選ばれたようだ。トランプは2016年の選挙でも勝利しているが、その際には民主党だけでなくCIA、FBI、有力メディアから攻撃を受け、国家安全保障担当補佐官に選ばれたマイケル・フリン元DIA局長がホワイトハウスから追い出されている。 2009年1月から17年1月まで大統領を務めたバラク・オバマはロシアとの関係悪化に力を入れ、2010年8月にはPSD-11を承認してムスリム同胞団を利用して北アフリカからシリアにかけての地中海沿岸国で体制転覆作戦を進めた。いわゆる「アラブの春」だ。 シリアやリビアではムスリム同胞団のほかサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするアル・カイダ系武装集団を投入、リビアでは体制転覆に成功、今では無法国家。シリアでは戦乱が続いている。 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒せないため、リビアから武器弾薬や戦闘員を移動させるだけでなく、新たな戦闘集団を編成している。イラクのサダム・フセイン政権時代に軍人だった人びとが参加したと言われているが、その新戦闘集団をオバマ政権は支援した。 そうした動きを危険だと判断したのがDIA。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと名称が変わっても実態は同じだと指摘している。その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 DIAは報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)という形で現実になった。2014年1月にダーイッシュはファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧する。 その後、この武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘うのだが、2015年9月にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。 こうした経緯があるため、フリンはオバマ政権がダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団の後ろ盾だったことを熟知していた。武装集団を操っていたオバマ政権のネオコン、CIAなどはフリンが安全保障担当補佐官として活動することを嫌っていたはずだ。 今回、トランプは民主党だったロバート・ケネディ・ジュニアやタルシ・ガッバード元下院議員を要職につけると見られているが、このふたりを民主党幹部は恐れているだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動の暗部、ロシアとの核戦争に向かった政策に関する情報が明るみに出ることも恐怖しているかもしれない。 しかし、トランプ政権が外交や安全保障分野の政策を大きく変更することはないと見られている。ウクライナでの戦闘を「現状維持」で終わらせることは不可能であり、トランプの人脈はガザやレバノンでの住民虐殺を支援している。イスラエルではレバノンへの軍事侵攻に慎重だったヨアブ・ガラント国防相が解任された。イスラエル政府は戦乱を望んでいるのだろうが、その先には破滅が待つ。ペルシャ湾岸の産油国はアメリカやイギリスの従属、イスラエルとの関係を強めてきたが、その政策を続ければ彼らも破滅する可能性が高い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.07
アメリカの時期大統領を決める選挙が実施される。民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプの争いになるそうだ。ウクライナを舞台とした対ロシア戦争をハリスは推進しようとし、トランプは止めようとしていると言われているが、パレスチナでの住民虐殺に関しては両者に大差はない。皆殺しにしろということだ。 しかし、過去を振り返ると、どの政権も政策に大差はない。外交や安全保障分野の政策はシオニストが決めてきた。ジョン・F・ケネディ政権まではそれでもイスラエルに対して厳しい姿勢を示す大統領もいたのだが、ケネディが暗殺されて以降、そうしたことは無くなっていった。 フランクリン・ルーズベルト政権は反植民地、反ファシズムを掲げていたが、第2次世界大戦後、侵略、殺戮、破壊、略奪という帝国主義的な政策を継続してきた。ベトナム戦争のようにアメリカ軍が直接出てくることもあったが、傀儡軍を使ったクーデター、アル・カイダ系武装集団やネオ・ナチで編成された戦闘集団による侵略という手法が取られることが多い。 ウラジミル・プーチンに言わせると、アメリカではあらゆる政策が大統領ではなく「黒いスーツと青いネクタイの男たち」が決めている。 イギリスをはじめとするアングロ・サクソンの支配者は19世紀以来、侵略の最終目標をロシア征服においている。1941年6月にドイツが始めた「バルバロッサ作戦」でもそうだったが、ロシアへの突入はウクライナから始まる可能性が高い。 シオニストの一派であるネオコンは1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成した。 ウクライナで実施された2004年の大統領選挙で中立を掲げるビクトル・ヤヌコビッチが勝利すると、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。 ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買い、2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利。そこでアメリカのバラク・オバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にしたわけだが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデタを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が勃発した。 アメリカ/NATOはその内戦をエスカレートさせ、ドンバスに対する本格的な軍事作戦を始めようとしていた2022年2月にロシアは機先を制してウクライナに対する攻撃を開始、その月のうちにキエフ側の敗北は決定的。そこでウォロディミル・ゼレンスキー政権は停戦交渉を開始、ロシア側とほぼ合意しているのだが、それをイギリスとアメリカ両政府が壊してしまった。彼らにとってウクライナはロシアをできるだけ疲弊させるための道具にすぎなかった。 アメリカ/NATOは兵器を供与、兵士を訓練、さらに傭兵や自国兵を送り込んできたが、限界に達している。これ以上続けるためにはアメリカ/NATOが前面に出てこなければならない状況だ。 そうした中、アメリカはジョージアとモルドバの支配を確たるものにしようとしている。ジョージアでは苦戦しているようだが、モルドバの選挙結果は反ロシア派が優勢。11月3日の投票ではハーバード大学ケネディ行政大学院を卒業した反ロシア派のマイア・サンドゥが大統領に選ばれた。 サンドゥに対抗する政党が分裂、投票率が54%にすぎない。投票率の低さは投票しにくい環境が作られていることもある。投票に向かう自動車で大規模な渋滞が発生している様子を撮影した映像も流れている。 モルドバの選挙は国外からの投票で左右されるのだが、「反EU、親ロシア」の有権者の投票をサンドゥ政権はブロックしているとする人もいる。ロシアにいるモルドバの有権者50万人のために設置された投票所の数は2カ所にすぎず、十分な数の投票用紙がなかった。反EU派の投票数を抑えたということだ。親ロシアのトランスニストリアには約45万人のモルドバ人がいるが、そこには投票所がない。勿論、西側諸国には十分な数の投票所が設けられた。 アメリカ支配層にとって都合の良い結果をもたらす選挙は何があっても「公正」であり、都合の悪い結果をもたらす選挙はどれだけ公正な仕組みでも「不正」だとされる。それが西側流の民主主義である。アメリカの選挙には事実上、選択肢がないと言う人もいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.06
ドイツ連邦議会の有力議員、ノルベルト・レットゲンはアメリカの大統領選挙でドナルド・トランプが勝利することを懸念している。レットゲンはドイツがアメリカ軍に占領されている状態を受け入れている政治家で、トランプが勝利するとウクライナにおける戦争でロシアの勝利、つまりアメリカ/NATOの傀儡軍の敗北が決まり、西側諸国は分裂するとしている。 1941年6月にドイツはロシアに対する軍事侵攻作戦「バルバロッサ」を始めるが、最初に侵攻した国がウクライナにほかならない。米英の傀儡軍事組織であるNATOがウクライナを支配下に置くことは新たなバルバロッサ作戦の始まりにほかならず、それをロシアが容認するはずはなかったが、アメリカの外交や安全保障分野を支配しているシオニストはウクライナ制圧を目論む。 ソ連は1991年12月に消滅したが、その前、1990年にウクライナ議会はソ連からの独立を可決している。それに対し、ソ連時代に民意を無視してロシアからウクライナへ割譲されたクリミアでは1991年1月にウクライナからの独立を問う住民投票を実施、94%以上が賛成しているのだが、クリミア議会は住民の意思を無視してウクライナに統合されることを決めてしまった。クリミアと同じようにロシアからウクライナへ割譲された東部ドンバスでも独立や自治権の獲得を目指した。そうした事情を配慮して1990年代のウクライナでは中立を掲げている。 それを気に入らない西側は中立政策をやめさせ、欧米に従属するように要求するのだが、2004年の大統領選挙では東部や南部を支持基盤にし、中立政策を進めようとしていたビクトル・ヤヌコビッチが勝利。その結果を翻すため、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。 ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買い、2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利。そこでアメリカのバラク・オバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にしたわけである。 このクーデターをヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部は拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは武装闘争を開始。軍や治安機関の約7割は新体制を拒否したと言われているが、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。東部や南部を制圧することは困難な状況だった。そこで西側はキエフ体制の戦力を増強するために必要な時間を稼ごうとする。そこでミンスク合意だ。 8年間に兵器を供給、兵士を訓練、地下要塞を中心とする要塞線を築き、2022年に入るとドンバス周辺に部隊を集中させ、大規模な軍事作戦を始める様相を見せた。のちにそうした作戦があったことを裏付ける文書が出てきている。 その作戦が始まる直前、ロシア軍は2月24日からウクライナに対する攻撃を始めた。ミサイルなどでドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させ、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊し始める。これでロシア軍の勝利は確定的だった。 そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役として停戦交渉を開始、双方とも妥協して停戦の見通しが立ち、ベネットは3月5日にモスクワへ飛ぶ。彼はウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功した。 その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会うのだが、その3月5日にSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。クーデター後、SBUはCIAの下部機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 こうした交渉を潰すため、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令し、4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるために戦い続けさせてきた。「総玉砕」を求めたのだ。 ロシアとの戦争で欧米は簡単に勝てると思っていたようだが、戦力的に優位だった段階でも戦況はロシアが優勢で、ロシア側の態勢が整った2023年になるとウクライナの敗北は決定的だった。アメリカ・NATOは軍事支援を強化したが、その流れを変えることはできず、ウクライナは兵士も兵器も足りなくなり、アメリカ/NATOの兵器庫も空。最近ではアメリカやその従属国からのウクライナで戦う戦闘員が増え、必然的に死傷者が出ている。 ウクライナに対する侵略作戦は1992年2月にネオコンがアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として作成した世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)と結びついている。このドクトリンはソ連が消滅、ロシアを含む旧ソ連圏はアメリカの支配下に入ったということが前提になっている。そのプロジェクトが本格始動する切っ掛けが2001年9月11日の出来事、つまりニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎への攻撃だ。 このプロジェクトはロシアの再独立で破綻するのだが、その後もネオコンは世界制覇を諦めない。その結果、西側は窮地に陥り、ウクライナでもアメリカ/NATOは敗北しつつある。その敗北をいかに敗北に見せないかを西側支配層の一部は考えているようだが、あくまでロシアと戦うと主張している人もいる。そのひとりがレットゲンだと言える。 レットゲンのような人びとの政策によってドイツ経済は壊れ始めている。そのひとつの現れがフォルクスワーゲンの工場閉鎖と従業員の大量解雇計画。国内の少なくとも3工場を閉鎖し、数万人の従業員を解雇するという情報。 ドイツを破綻に導いた政策のひとつはロシアとドイツがバルト海に建設した2本のパイプライン、「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」の破壊だ。ウクライナでのクーデターでロシア産の安い天然ガスを入手できなくなっていたが、そのウクライナを迂回して建設されたパイプラインが爆破されたのだ。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したとする記事を発表した。 ハーシュによると、アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。 ハーシュが書いているように、この破壊工作はアメリカが実行した可能性が高いことを状況証拠も示している。 例えば、ドナルド・トランプ政権下の2020年7月にマイク・ポンペオ国務長官がNS2を止めるためにあらゆることを実行すると発言。2021年1月に大統領がジョー・バイデンに交代しても状況に変化はなく、22年1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナを侵略したらNS2を止めると恫喝している。2月7日にはジョー・バイデン大統領がNS2を終わらせると主張し、アメリカはそうしたことができると記者に約束した。 破壊直後には、ポーランドで国防大臣や外務大臣を務めたラデク・シコルスキーが「ありがとう、アメリカ」と書き込み、その後、ノードストリームの破壊はプーチンの策略の余地を狭めるとも書いた。パイプラインが爆破された1分後にはイギリスの首相を務めていたリズ・トラスはiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったと伝えられている。 こうした破壊工作をドイツ政府は知らされていたのではないかという疑いがある。これが事実なら、ドイツの政治家たちはアメリカの命令に従い、自国の経済を破壊、国民を塗炭に突き落としたわけだ。ロシアとの戦争に執着するひとつの理由は、その責任から逃れたいからかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.05
アメリカでは軍も情報機関もウクライナ戦争を膠着状態と表現することはできないと判断しているという。2004年に「オレンジ革命」を仕掛け、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行したネオコンに敗北が迫っていることをアメリカの有力メディアも否定できなくなってきたようだ。 ウクライナ軍は東部戦線でロシア軍に押されて後退、クルスクに攻め込んだ部隊も壊滅状態。1万人から3万人が軍事侵攻、さらに増派したと見られているが、すでに3万人程度が戦死したと言われている。2022年2月から戦死したウクライナ兵は50万人とも言われているが、実際は100万人に達していると推測する人もいる。 西側メディアはウクライナ軍の戦死者数はロシア軍の半分だと戯言をいまだに主張しているが、実際はロシア軍の10倍程度だと見られている。ウクライナでは街中で男性が拉致され、ろくな訓練をせずに戦場へ送り込まれ、数日から数週間で80%以上が死亡しているという。 ウクライナでの戦闘はロシアの生産力が西側を圧倒していることも明らかにしている。アメリカ政府の命令に従ってきたEUの経済悪化は深刻で、これまでその経済を牽引してきたドイツではフォルクスワーゲンが国内の少なくとも3工場を閉鎖、数万人の従業員を解雇すると伝えられている。 それに対し、ロシアでは外国資本の撤退が追い風になり、国内の企業が急成長、社会生活に変化は見られない。その様子はロシアに住む外国人がインターネットで伝えていたが、タッカー・カールソンも報告していた。彼はロシアのウラジミル・プーチン大統領をインタビューしているが、それ以上にモスクワのレポートは西側の人びとに大きな影響を及ぼしたかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.04
アメリカ政府はジョージアとモルドバが自立するのを防ごうと必死のようだ。ジョージアでは2003年11月の「バラ革命」を経てヘイル・サーカシビリ政権が登場したが、その新自由主義的で反ロシア的な政策が人びとを不幸にすることを国民は知り、アメリカ離れを起こしている。モルドバも同じ道を歩み始め、その親米政権を維持することは難しい情勢になっているが、ウクライナでの敗北が決定的になっているアメリカとしては、新たなロシア侵略拠点としてジョージアやモルドバを重視しているはずだ。 サーカシビリの経歴を調べると、1994年にコロンビア・ロー・スクールで学び、翌年にはジョージ・ワシントン大学ロー・スクールに通っている。その後、ニューヨークの法律事務所パターソン・ベルクナップ・ウェッブ・アンド・タイラーで働き、そこでエドゥアルド・シェワルナゼの下で働いていた旧友に誘われて政界入りしたとされている。アメリカの支配システムの中から出てきた人物だと言えるだろう。 サーカシビリは2008年1月から大統領を務めたが、その年の8月に南オセチアを奇襲攻撃、ロシア軍の反撃でジョージア軍は完敗した。そのジージア軍に兵器を供与、兵士を訓練していたのはイスラエルとアメリカだったことは本ブログで繰り返し書いてきた。 ウクライナでクーデターが始まった2013年11月にサーカシビリは大統領を辞め、18年12月から大統領を務めているのが親米派のサロメ・ズラビシビリだ。 この人物は1952年にフランスのパリで生まれ、1974年にフランス外務省へ入っている。2003年から04年にかけての期間、ジョージア駐在大使を務めたが、2003年11月にジョージアでは「バラ革命」が引き起こされ、サーカシビリが実権を握っている。サーカシビリと連携していたことは間違いないだろう。 ウクライナへNATOを侵攻させるため、ネオコンをはじめとするアメリカ/NATOの好戦派は2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを使ったクーデターを実行したが、東部や南部をはじめクーデターに反対するウクライナ人は少なくなかった。軍や治安機関の約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。そこでロシアと戦う態勢を整えるための時間が必要だった。そこで出てきたのがミンスク合意だ。 アメリカ/NATOは兵器の供与や兵士の育成などに8年かけ、ドンバスに要塞線を築いた。マリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルの地下要塞を結んでいたのだが、今年2月にアブディフカが陥落、要塞線は崩壊。東部戦線でウクライナ軍は圧倒されはじめた。 今年8月6日にウクライナ軍は外国人傭兵を含む1万人から3万人ほどの兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、惨憺たる状況だ。当初、クルスクには国境警備隊しかいなかったことから装甲車両を連ねたウクライナ軍に攻め込まれたが、すぐにロシア側は航空兵力で反撃を開始した。ウクライナ側は傭兵を使うだけでなくドンバスから部隊をクルスクへ移動させ、虎の子の機械化部隊を投入したのだが、壊滅状態で、ドンバス戦線ではロシア軍の進撃スピードが速まっている。 ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官によると、ロシアがサンクトペテルブルクで海軍記念日のパレードを開催した7月28日、勢揃いした要人を暗殺しようという計画があったという。この計画が成功していたならロシア国内が混乱する可能性は高く、それに乗じてロシアへ攻め込むつもりだったのだろう。 クルスクの西側にあるブリャンスクでは約20人の部隊が侵入、ロシア側の反撃で侵入部隊のメンバーは死傷したのだが、死亡した4名の出身国はアメリカ、カナダ、ポーランドで、ひとりはアメリカ陸軍の第75レンジャー連隊第2大隊の入れ墨をしていた。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.03
アメリカ、ウクライナ、韓国の政府は朝鮮兵がロシアへ派遣され、ウクライナで戦うと主張しているが、これらには証拠がない。そのように批判する人は少なくない。 そうした状況の中、あるウクライナのチャンネルはドネツクのセリドボ近くで捕虜になった「朝鮮兵の身分証明書」を公表したのだが、そこに貼られていた写真は韓国のベテラン俳優だった。Netflixで配信された韓国のドラマ「イカゲーム」で主演した李政宰だったのである。短期間で嘘が発覚することは明白だったが、アメリカの大統領選挙まで騙せればと思ったのかもしれないと言われている。 アメリカの外交や安全保障分野を支配しているネオコンは2004年に「オレンジ革命」を仕掛け、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行したのだが、ソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部と南部の住民はクーデターで成立したネオ・ナチ体制を拒否、内戦が勃発した。その内戦はアメリカ/NATOとロシアの戦いになり、ロシアの勝利は決定的だと見られている。 戦闘が続いていれば配下の有力メディアを利用して人びとに「勝利の幻影」を見せることで国民から責任を問われないようにしようと目論んでいるが、ウクライナ、つまりアメリカ/NATOの敗北が決まるとこれまで以上の窮地に陥る。ネオコンに支えられ、ウクライナでの戦闘を拡大させてきた民主党政権としては、11月の大統領選挙で負けられない。 そうした状況の中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はロシアがウクライナへ全面侵攻する計画には「朝鮮の戦争への実際の関与」も含まれると述べた。さらにウクライナのメディアは「西側の外交官」の話として朝鮮がロシアへ1万人の兵士を派遣したと語ったと報道、韓国の通信社は朝鮮がウクライナ戦争でロシアを支援するため大規模な軍隊を派遣することを決定、すでに派遣を開始していると同国の情報機関、NIS(国家情報院)が推測していると伝えた。 この評価は尹錫悦大統領が緊急安全保障会議を招集した後に出され、朝鮮が特殊部隊を含む1万2000人の兵士からなる4個旅団をウクライナ戦争に派遣することを決定したとNISはしている。日本のマスコミもそうした話を垂れ流し始めた。 しかし、ウクライナ軍は兵士が足りず、市外で街を歩いている男性を拉致し、短期間の訓練で彼らを戦場へ送り込まざるをえない状況だ。そうした光景を撮影した少なからぬ映像がインターネット上を流れているが、ロシア国内でそうした光景は見られない。ロシアの兵力には余裕があり、ローテーションで交代しながら戦っているだけでなく、予備の部隊も用意されている。 イギリスの国防大臣を2019年7月24日から23年8月31日まで務めたベン・ウォレスは2023年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘した。徴兵年齢を下げる必要があるということだ。 ウクライナの武器弾薬不足も深刻。これはアメリカ/NATOの兵器庫も空になっていることを意味している。 アメリカ/NATOは核ミサイルを発射できるF-16戦闘機をウクライナへ供与し始めたが、操縦できるパイロットがほとんどいない。そこで白羽の矢が立ったのは韓国のパイロット。韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留していると言われている。韓国政府は兵器だけでなく兵士もウクライナへ送り込まなければならなくなってきた。ウクライナへの援助の増額または変更に対する国内の支持はほとんどない。 当初、アメリカの国防総省は朝鮮兵の話に対して慎重な姿勢を見せていたが、10月30日にロイド・オースティン国防長官は朝鮮兵がロシアへ派遣されたことで戦争が長期化すると述べた。また朝鮮軍の兵士約1万人がすでにロシア東部に派遣されていて、ロシアの軍服を着用、ロシアの装備を携行しているとも主張。クルスクにおけるロシアの戦闘を支援しているという様相が強まっているとしているのだが、そうした様相は見られない。 イギリスの国連常駐代表バーバラ・ウッドワードは「プーチン大統領がロシア人を砲弾の餌食として募集するのが難しくなればなるほど、彼は朝鮮に頼る用意が強くなる」と主張しているが、イギリスやアメリカはウクライナ人を「砲弾の餌食」にしてきた。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだ。だからこそ、ウクライナ兵はいなくなり、兵士の平均年齢が40歳代に上昇しているのだ。ウクライナ軍が敗走していることは西側でも否定できなくなっている。 死傷者数についても言えることだが、アメリカやイギリスの支配層は自分たちの行なっていることを相手が行っていると主張する。これは彼らの詐欺師的な常套手段だ。 2014年にクーデターで実権を握ったネオ・ナチだが、東部や南部では反クーデター軍に押されていた。そこでアメリカ/NATOは戦力を増強、ドンバス周辺に要塞線を築くことにするのだが、そのためには時間が必要だった。そこで出てきたのが「ミンスク合意」だが、この手法にロシアは2度と乗らないだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.02
イスラエル政府は安全上の懸念から首相官邸や軍の本部などで会合しないことを決めたと伝えられている。防空システムの「アイアン・ドーム」でイランやヒズボラなどのミサイル攻撃を防げないという判断からだろう。 イランは10月1日にイスラエルの軍事基地や情報機関の本部を180機以上の弾道ミサイルで攻撃、防空システムの「アイアン・ドーム」を突破している。ほとんどのミサイルを撃墜できず、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、モサドの本部やその周辺に着弾した。10月19日にはベンヤミン・ネタニヤフの自宅にヒズボラのドローンが命中している。 そうした状況を現地で取材していたアメリカ人ジャーナリストのジェレミー・ロフレドがイスラエル当局に逮捕された。10月1日にミサイルの着弾地点を取材したジャーナリストのひとりだ。ロフレドがインターネットを通じて流した映像にはイスラエル政府の説明とは違う光景が映っていた。 10月25日にイスラエル軍はイランを攻撃、テヘランを含む複数の地域で爆発音が聞こえたものの、市内の光景を撮影した映像には攻撃されている様子は映っていない。イランの防空ミサイルがイスラエルのミサイルを撃墜する際の爆発音だと推測されている。 イスラエルのミサイルと思われるものが撮影された映像もあるが、イランがイスラエルを攻撃した時とは違い、大半が撃墜されている。ロシアが防空システムを供与、ECM(電子対抗手段)も使われたようだ。この結果にイスラエル政府は動揺していると言われている。イスラエル軍は子どもや女性を含む一般市民を殺すことしかできないと評価されている。 イランを攻撃するためにイスラエル軍は100機以上の戦闘機をシリアやイラクのアメリカ軍が管理している空域へ侵入させ、200機程度のミサイルを撃ち込んだと見られているが、そのミサイルは撃墜され、イランは平穏だ。 アメリカとイスラエルには自国の軍隊を「神軍」だと信じる人が少なからず存在している。アメリカの場合ベトナム戦争で敗北、その妄想は崩れてしまい、1967年の第3次中東戦争で圧勝したイスラエル軍に飛びついた。そのイスラエル軍を「神軍」だとする妄想も崩れ始めている。西側の有力メディアはこの妄想を維持しようと必死だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.01
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