《櫻井ジャーナル》

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2014.12.06
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 アメリカ下院は12月4日、ロシアを非難する決議を411対10という大差で可決した。 ロン・ポール元下院議員の言葉を借りると、「向こう見ずな議会がロシアに宣戦布告した」 のである。すでにアメリカ/NATOはロシアとの国境近くにおける軍事を増強、その延長線上にある決議。今後、アメリカ大統領は議会を気にすることなく、ロシアと戦争を始めることができる環境が整いつつある。

 好戦性という点では上院も負けていない。今年5月に上院で提出された法案は、ポーランド、エストニア、リトアニア、ラトビアなどの軍隊を支援、そうした国々でNATOの恒久的軍事基地を建設するように考えるとされている。

 実際にそうした方向へアメリカ/NATOは動いていて、その前の月にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)の総司令官(SACEUR)、 フィリップ・ブリードラブ米空軍大将はアメリカ軍部隊をロシアに近い東ヨーロッパの国へ入れるかもしれないと語っていた 。すでに戦闘機は急ピッチで増強され、約100輌のエイブラムズ戦車や装甲戦闘車両のブラッドレーも東ヨーロッパへ配備される予定だ。

 そうした中、バラク・オバマ政権の国防長官が交代する。ネオコンに批判的で戦争に消極的なチャック・ヘイグが、朝鮮への攻撃を主張していた好戦的なアシュトン・カーターと入れ替わるのだ。今の議会なら承認されるだろう。

 ロシアの自立や中国の台頭はネオコン/シオニストにとって許しがたいこと。1991年にソ連が消滅してアメリカが「唯一の超大国」になったと浮かれた彼らは世界制覇へのビジョンを描いていたわけだが、その実現を妨げるからだ。

 ネオコン/シオニストの好戦的なビジョンは戦争ビジネスだけでなく、そうしたビジネスの投資しているヘッジファンドや金融機関にとっても世界の不安定化は悪くない。そこで後押しすることになる。EUの場合は自らを破滅へ導く戦略なのだが、エリートはアメリカに従うことでカネと権力を手に入れてきたことから逆らえない。アメリカの意に反することをすれば激しい個人攻撃にあう。

 ウクライナの不安定化は1992年に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリン(これまで何度も説明してきたので、今回は割愛)やズビグネフ・ブレジンスキーの戦略に基づいている。ブレジンスキーがソ連/ロシアの制圧プロジェクトを始動させたのは1970年代のこと。アフガニスタンやポーランドでの秘密工作から始まっている。

 ウォルフォウィッツ自身はニューヨーク生まれだが、父親のジェイコブはブレジンスキーと同じポーランド生まれ。ポールは1970年代、ジェラルド・フォード政権がCIAの内部で分析部門に対抗する形で始動させた反ソ連派のチームBに参加している。この時のCIA長官がジョージ・H・W・ブッシュだ。

 このブッシュを日本では「素人」だと説明していたが、実際はエール大学で幹部候補としてリクルートされたと信じられている。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された当時、彼がCIAの幹部だったことは公文書に記載されている。勿論、工作にはブレジンスキーも加わっている。

 ポーランドでの工作は1970年代から80年代にかけて展開された。その中心に存在していたのが「連帯」。この「労働組合」がCIAやバチカンと連携していたことは広く知られている。

 ポーランド工作で中心的な役割を果たしたのはロナルド・レーガン大統領とポーランド生まれのヨハネ・パウロ2世。レーガン政権でCIA長官だったウィリアム・ケーシー、リチャード・アレン国家安全保障問題担当大統領補佐官(1981年から82年)、ウィリアム・クラーク国家安全保障問題担当大統領補佐官(1982年から83年)、アレキサンダー・ヘイグ国務長官(1981年から82年)、バーノン・ウォルターズ元CIA副長官、ウィリアム・ウィルソン駐バチカン米国大使らも工作に参加しているが、この人びとはカトリック教徒だ。クラークの場合、妻がチェコスロバキア出身だということも本人の行動に影響した可能性が高い。

 こうした戦争への道を整備することになる今回の決議だが、その中から事実を探し出すことは難しい。ポール元議員も例示しているように、プロパガンダ、あるいは嘘の羅列にすぎないと言うことだ。

 例えば、決議は西側メディアのプロパガンダと同じように、ロシアがウクライナを侵略したと証拠を示すことなく非難しているが、今回の戦乱は今年2月にネオ・ナチのグループが始めたクーデターにある。その クーデターの準備はソ連が消滅した直後に始まっていることをアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補は昨年12月13日に米国ウクライナ基金の大会で明言 している。1991年から50億ドルをウクライナに投資したというのだ。その際、彼女の背後には巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていた。

 また、東/南部で行われた住民投票も非難しているが、これは人びとの意思を示す行為であり、その背景ではネオ・コンがキエフやオデッサで行った残虐行為がある。この非難は基本的な人権を否定する主張だ。オデッサの虐殺以降、アメリカ/NATOを後ろ盾とするキエフ軍は東/南部への攻撃を開始、破壊と殺戮を繰り返して約100万人の住民がロシアへ避難せざるをえない状況を作った。

 ウクライナからロシア軍を撤退させろとも要求しているが、ロシア軍がウクライナへ侵攻したことを示す事実はない。もし本当なら、アメリカのスパイ衛星が撮影しているはずで、1962年のミサイル危機と同じように写真を公開すべきなのだが、そうしたことはしていない。メディアは証拠らしきものを伝えたが、すぐに嘘だと言うことが明らかにされた。

 マレーシア航空17便を下院は「親ロシア派」が撃ち落としたと言い張っているが、その主張に根拠がないことは本ブログでも書いてきた通りで、キエフ側の戦闘機に撃墜された可能性が高い。ブラックボックスはキエフ政権の後ろ盾になった勢力が確保、情報を隠し、彼ら以外の調査を妨害している。

 アメリカとイスラエルの支援を受けたグルジアが南オセチアを奇襲攻撃した出来事をロシアのグルジア侵攻だと主張するが、嘘も繰り返せば事実として受け入れられると考えているのだろうか?

 シリア政府への武器供給も非難しているが、これはアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの三国同盟に支援された武装勢力の侵略と戦うため。アメリカ/NATOは侵略軍、最近はIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)の戦闘員を雇い、武器を供給、軍事訓練をしている。ISへの攻撃が茶番だということは本ブログで何度も書いた。

 ロシア系のメディアがプロパガンダでアメリカを攻撃しているともしているが、事実は逆のことを示している。本ブログでも指摘してきたが、西側メディアが事実に反する報道を続けてきたのである。これはユーゴスラビアへの軍事侵略以降、システマティックに行われているが、イラクを先制攻撃する際の嘘は当時の米英政府高官も認めている。

 こうした愚にもつかないことを書き連ねた決議を下院は採択、ロシアに対して開戦の脅しをかけているわけだが、こうしたことにロシアが屈するとはないだろう。ロシア国内で蜂起を演出しようとするかもしれないが、それが成功するとは思えない。

 アメリカでは国民の意思とは逆に、戦争へ向かって加速しつつある。2006年にフォーリン・アフェアーズ誌が掲載した キール・リーバーとダリル・プレスの論文 は、アメリカがロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できるとしていた。つまり、核兵器で先制攻撃すれば完勝できるというわけだ。この主張をアメリカの好戦派は今でも信じているのかもしれないが、そうだとすると危険だ。

 アメリカが戦争体制へ入るのに合わせるようにして、日本では総選挙が実施される。集団的自衛権によって日米安保はNATOと連携することになりそうだが、NATOではひとつの国への攻撃を全体への攻撃と見なす、つまりひとつの国が侵略戦争はじめれば他の国も参加するということになっている。アメリカの戦争へ日本も自動的に参加することになるが、その戦争では核兵器が使われる可能性が高く、日本の位置を考えるとそこに住む人びとが死滅することもありえる。





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最終更新日  2014.12.07 16:22:32


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