イスラエル軍がガザで行っていることはパレスチナ人の虐殺である。ハマスとの戦闘による「付随的な被害」ではない。そうした大量虐殺を西側の有力メディアは被害を小さく見せると同時に、イスラエル軍を擁護している。イスラエル軍を擁護する主張のひとつが「ハマスの戦闘員によるレイプ」という話だ。
この話について「紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表」のプラミラ・パッテンが率いるチームが調査し、その報告書を3月4日に発表した 。面談、写真や映像の分析を実施したというが、イスラエル側の主張を裏付ける証言や証拠は見つからなかったという。
チームが入手できた写真やビデオの医学的評価ではレイプの具体的な兆候は確認できず、性的な暴力行為を具体的に描いたデジタルの証拠はオープンソースで発見されなかったとしている。しかも調査チームはレイプの被害者をひとりも見つけられなかったことを認めた。
パッテンによると、彼女のチームはイスラエル政府系ロビー団体による「圧力」を受けて派遣され、彼女はイスラエルに15日間滞在したのの対象、パレスチナには2日間だけだったとしている。ナハル・オズ軍事基地、キブツ・ベエリ、ノヴァ音楽祭の会場、道路232号線などへの訪問はイスラエル政府の「支援」がある場合だけだったともいう。要するにイスラエル政府の管理下でなければ現場へ入れなかったということだろう。またパッテンたちはイスラエルの軍、治安機関のシン・ベト、国家警察と何度か会談しているという。レクチャーを受けたということだろう。
ハマス(イスラム抵抗運動)がイスラエルを攻撃したのは昨年10月7日だが、 その直後、IDF(イスラエル国防軍)のデイビッド・ベン・シオンなる人物が記者に語り、その話を西側の有力メディアやイスラエル外務省、そしてジョー・バイデン米大統領が広めた 。バイデン大統領は10月10日、ホワイトハウスにおけるユダヤ教の指導者たちに対する演説で赤ん坊に対する残忍な行為を描いた写真にショックを受けたと主張しているのだ。
しかし、アメリカ政府はすぐに大統領の発言を撤回、IDFも「公式には確認できない」と訂正する。
発信源のベン・シオンはヨルダン川西岸の違法入植者の指導者で、今年初めにはヨルダン川西岸でパレスチナ人に対する暴動を扇動したと伝えられている。今年2月、彼はパレスチナのフワラ村を一掃するように呼びかけていた。
ベン・シオンのような狂信的なシオニストは昨年4月1日、イスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺。4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクに突入し、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/今年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃した。そしてユダヤ教の「仮庵の祭り」(今年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。
法医学的結論は訓練を受けていないボランティアが不正確で信頼性の低い結論を出しているとパッテンのチームは批判している。 ハーレツ紙から死体を演出の材料と考えていると批判されているZAKAを指していると考えられている 。
専門知識に欠ける人は肛門拡張を肛門貫通と解釈するが、広範囲の火傷損傷がある場合は肛門拡張になり、重度の火傷による体の姿勢は開脚など、やはり性的暴力の兆候であると解釈されることもあるという。ハマスがレイプしたという話を作り上げる材料を欲しがっている人はそのように解釈することになるだろう。
イスラエル政府や西側の有力メディアを欲求不満にしているパッテンのチームだが、決して反米ではない。
アメリカ/NATOが地下要塞を建設し、ネオ・ナチで編成された親衛隊のアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)が拠点にしていたマリウポリをロシア軍が解放した際、彼女は「マリウポリでロシア兵が女性に対して性的な犯罪行為を軍事戦略として行なっていた」と発言している。
それに対してAFPの記者に証拠が示されていないと指摘。パッテンは自分がいたのはニューヨークのオフィスで、調査はしていないと開き直っている。今回のケースでは被害者も証拠も見つけられないまま、性暴力が10月7日に発生したという「明確で説得力のある」情報を発見したと主張している。