モスクワ近郊、クラスノゴルスク市にあるクロッカス・シティ・ホールを襲撃に直接関与した4名を含む11名を拘束したとFSB(連邦保安庁)のアレクサンドル・ボートニコフ長官がウラジミル・プーチン大統領に報告したと発表された。共犯者を特定するための捜査は継続中だという。
時間が経過するにつれ、興味深い事実が明らかになってきた。たとえば 事件の舞台になったクロッカスの所有者はドナルド・トランプと非常に親しいアゼリー系ロシア人 だ。
モスルを制圧する際、トヨタ製小型トラック「ハイラックス」の新車を連ねたパレードを行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられたのだが、その際にアメリカ軍が反応しなかったことも注目された。偵察衛星を運用、地上にも情報網を持っているアメリカが気づかないはずはない。
そうした武装集団の出現をアメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月の時点でホワイトハウスに警告していた 。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだと指摘されていた)で、その中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だと指摘しているのだ。2012年当時のDIA局長はマイケル・フリン中将である。
アル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだともしている)の名前も報告書の中に出している。報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュという形で現実になったわけだ。ダーイッシュは残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘っていた。
ダーイッシュにはサダム・フセイン体制下の軍人が参加したとも言われているが、サラフィ主義者やムスリム同胞団が多く、チェチェン、ウクライナ、ウイグルなどからも来ていた。そこで戦闘の経験を積み、帰国、テロ活動を広めるわけだ。ウクライナへもシリアで経験を積んだ戦闘員が入っている。
ダーイッシュの母体になった 「アル・カイダ」について、イギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックは05年7月に説明 した。「アル・カイダ」はCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストだとしている。この仕組みが作られたのはアメリカがアフガニスタンで工作に利用するためだ。アラビア語でアル・カイダはベースを意味、データベースの訳語としても使われる。
シリアで欧米支配層のためにシリア政府と戦っていた頃から言われていたことだが、ダーイッシュはイスラムとの関係が薄い。イスラムでは神聖な月であるラマダーンの金曜日にイスラム教徒が非武装の市民を虐殺するのは奇妙だとも指摘されている。
クロッカスでの虐殺に合わせるように、フランス、ドイツ、ポーランドの正規軍兵士相当数がキエフの南にあるチェルカッシーへ鉄道や航空機を利用して入った。事実上、NATO軍がロシア軍に対して宣戦布告したということになる。当然、ロシア軍は全面戦争の覚悟をしなければならない。
本ブログでも書いたが、 2月19日にドイツ空軍の幹部はリモート会議でクリミア橋(ケルチ橋)を「タウルスKEPD 350」ミサイルで攻撃する相談 をした。その幹部とはインゴ・ゲルハルツ独空軍総監、作戦担当参謀次長のフランク・グレーフェ准将、そして連邦軍宇宙本部のフェンスケとフロシュテッテ。その音声は3月1日、RTによって公開された。
ゲルハルツらは昨年10月の時点で計画の内容をアメリカ太平洋空軍司令官だったケネス・ウイルスバックに伝えていることも判明 している。ウイルスバックは2023年5月、航空戦闘軍団司令官に指名され、今年2月に就任した。
ウイルスバックの後任としてケビン・シュナイダーが太平洋空軍司令官になったのは今年2月9日。問題のリモート会談が行われる10日前のことだ。その時点でシュナイダーはウクライナでの攻撃計画について知らなかったようである。アメリカ軍幹部の一部とドイツ空軍幹部など限られたグループがロシア軍と本格的な軍事衝突を目論んでいる可能性があると推測されていたが、今回の襲撃はこの推測と符合する。
ウラジミル・プーチン大統領は2022年2月以降、戦争は始まっていないとしてきたが、モスクワ近郊での市民虐殺やNATO軍のキエフ近くへの派兵はロシアに開戦を強いることになるかもしれない。ドンバス周辺にアメリカ/NATO軍が構築していた要塞線はすでに突破されているのでNATO軍を投入せざるをえないのかもしれないが、通常兵器の戦いでロシア軍に勝てるとは思えない。今後、生物兵器や核兵器が問題になりそうだ。