イスラエルによるパレスチナ人虐殺は続いている。誰も止められないどころか、アメリカやイギリスをはじめとする西側諸国は武器を供与するなど支援し続けているのだ。
西側諸国は自由、民主、人権といった衣をまとっているが、その下から帝国主義という鎧が現れた。イスラエルを作り上げたのは帝国主義国のひとつであるイギリス。その際に利用されたのがシオニストだ。
この戦争ではアメリカがイスラエルを支援している。例えば、ドイツに駐留していたアメリカ空軍第26戦術偵察航空団第38戦術偵察大隊に所属する4機の偵察機RF-4Cが6月4日にイスラエルへ向かい、ネゲブの基地で塗装をイスラエル軍の航空機のように塗り替えた上で偵察飛行し、上空から撮影した写真をイスラエル側へ提供している。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005)
その戦争の最中、1967年6月8日にアメリカ政府は情報収集船のリバティを地中海の東部、イスラエルの沖へ派遣した。そのリバティをイスラエル軍は攻撃する。
午前6時(現地時間、以下同じ)、10時、10時半、11時26分、12時20分にイスラエル軍の航空機がリバティ近くを飛行、アメリカの艦船であることを確認した上で、14時5分に3きのミラージュ戦闘機が攻撃を開始した。
イスラエル軍機はまず船の通信設備を破壊したが、14時10分には船の通信兵が寄せ集めの装置とアンテナで第6艦隊へ遭難信号を発信することに成功、それに気づいたイスラエル軍はジャミングで通信を妨害してきた。その後もイスラエル軍は繰り返し船を攻撃、乗組員9名が死亡、25名が行方不明、171名が負傷した。
遭難信号を受信したとき、第6艦隊の空母サラトガは訓練の最中。甲板にはすぐ離陸できる4機のA1スカイホークがあった。艦長は船首を風上に向けさせて戦闘機を離陸させている。イスラエルが攻撃を開始してから15分も経っていない。そこからリバティ号まで約30分あれば現場へ到達できる。
艦長は艦隊の司令官に連絡、司令官は戦闘機の派遣を承認し、もう1隻の空母アメリカにもリバティを守るために戦闘機を向かわせるように命じるのだが、空母アメリカの艦長がすぐに動くことはなかった。リバティが攻撃されたことはリンドン・ジョンソン大統領へすぐに報告されたが、ロバート・マクナマラ国防長官は第6艦隊に対して戦闘機をすぐに引き返させるようにと叫んでいる。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005)
ちなみに、ジョンソンのスポンサーだったアブラハム・フェインバーグはシオニストの富豪で、ハリー・トルーマンのスポンサーとしても知られている。イスラエルを「建国」しようというシオニストへ多額の資金を提供していたことも有名だ。(Will Banyan, “The ‘Rothschild connection’”, Lobster 63, Summer 2012)
第6艦隊の第60任務部隊は15時16分、空母サラトガと空母アメリカに対して8機をリバティ救援のために派遣し、攻撃者を破壊するか追い払うように命令、16時前後に現場へ到着するとホワイトハウスに連絡している。
その直後にイスラエル軍の魚雷艇は最後の攻撃を実行し、16時14分にイスラエル軍はアメリカ側に対し、アメリカの艦船を誤爆したと伝えて謝罪、アメリカ政府はその謝罪を受け入れた。
リバティが攻撃されている間、イスラエル軍による交信をアメリカの情報機関は傍受、記録していた。その中でイスラエル軍のパイロットは目標がアメリカ軍の艦船だと報告、それに対して地上の司令部は命令通りに攻撃するように命令している。イスラエル軍はアメリカの艦船だと知った上で攻撃していることをアメリカの情報機関は知っていた。
交信を記録したテープは重要な証拠だが、アメリカでは電子情報機関のNSAがそうしたテープを大量に廃棄したという。複数の大統領へのブリーフィングを担当した経験を持つCIAの元分析官、レイ・マクガバンもこうした隠蔽工作があったと確認している。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005)
ジョンソン政権はイスラエル軍による攻撃を隠蔽しようとしただけではなく、ジョンソン政権こそが計画の主体だとする見方がある。この政権で秘密工作を統括していたグループは「303委員会」と呼ばれていたが、そこで1967年4月にフロントレット615という計画が説明されたという。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもので、実際、後にリバティや潜水艦は派遣された。
この計画の中にサイアナイド作戦なるサブ作戦が存在しているとも言われている。リバティを沈没させ、その責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけて戦争を始めようとしたのではないかというのだ。トンキン湾事件という偽旗作戦を利用してベトナムで本格的な戦争を始めたジョンソン政権が中東でも似たことを目論んだ可能性は否定できない。もしサイアナイド作戦が事実なら、イスラエルはアメリカの重大な弱みを握ったことになる。
イスラエル軍がアメリカの情報収集船を攻撃する様子を、近くにいたアメリカの潜水艦アンバージャックが潜望鏡を使って見ていたとする証言もある。リバティの乗組員も潜望鏡を見たとしている。ただ、記録したはずのデータは見つからない。
リバティに対する攻撃の後、アメリカ政府は関係者に箝口令を敷き、重要な情報を公開していない。イスラエルでは機密文書が公開されるのは50年後と決められているため、イスラエルが開戦に踏み切った目的、戦争の実態、リバティを攻撃した本当の理由などを知ることのできる資料が2017年に公表されるはずだったのだが、2010年7月にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は情報公開の時期を20年間遅らせることを決めている。勿論、2037年に公開される保証はない。