ハマスの指導者でイスラエルとの交渉で中心的な役割を果たしてきたイスマイル・ハニヤは彼の護衛と部屋にいるところを精密誘導ミサイルに攻撃され、死亡したと伝えられた。イランの防空システムを回避していることから、攻撃に使われた戦闘機はステルスのF-35戦闘機の可能性が高いと言われている。
暗殺の4日前、7月27には
しかし、イスラエル軍はレバノンのヒズボラが実行したと主張したのだが、言うまでもなく、証拠は提示されていない。その ヒズボラは責任を否定している。
ウクライナでも同じことが言えるのだが、ハニヤ暗殺に使われたタイプのミサイルは偵察衛星や偵察機で収集した情報が必要。つまりアメリカの軍や情報機関が攻撃を支援していた可能性がある。少なくともアメリカ政府が暗殺計画について事前に知らされていなかったとは考えにくい。これまでの経緯を考えると、イギリス政府も承諾していただろう。
勿論、イギリスやアメリカの場合、政策の最終的な決定権は政府の背後にいる強大な私的権力にある。具体的に言うならば、シティやウォール街を拠点とする金融資本を動かしている富豪だ。
昔から富豪は資産をタックスヘイブン(租税回避地)に隠してきた。ある時期まではスイス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ベルギー、モナコなどが租税回避地として有名だったが、1970年代に入るとロンドンの金融界がオフショア市場のネットワークを築き、状況は一変した。ウォール街はシティからスピンアウトして出来上がったこともあり、シティとウォール街は緊密な関係にある。
そのタックスヘイブンのネットワークはジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島、タークス・アンド・カイコス諸島、ジブラルタル、バハマ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランドなどが含まれ、しかも信託の仕組みが取り入れられているため管理人以外は誰が所有者なのかを知ることができないことになっている。大英帝国が金融帝国として復活しているのだ。
イギリスには16世紀頃から自分を「イスラエルの王」の後継者だと信じる人がいる。そのひとりがスチュワート朝のジェームズ6世(スコットランド王。イングランド王としてはジェームズ1世)。ピューリタン革命を指揮したオリヴァー・クロムウェルの私設秘書を務めていたジョン・サドラーも同じように考えていたという。クロムウェル自身はキリストの再臨を信じ、「道徳的純粋さ」を達成しようと考え、ユダヤ人をパレスチナへ再集結させてソロモン神殿を再建すると考えていたとされている。
しかし、クロムウェルの一派は倒されて国教会の君主制が復活、ユダヤ人のための国家創設提案(シオニズム)は放棄された。それが復活するのは18世紀、アメリカにおいてだ。
18世紀以降、数秘術などオカルト的な要素が加わり、優生学を結びつくことになる。アメリカを支配していると言われている「WASP」は白人、アングロ・サクソン、そしてプロテスタントを意味していると言われているが、アメリカの友人によると、「P」はプロテスタントではなくピューリタンのイニシャルであり、WASPはクロムウェルの後継者だともいう。
イギリスでは19世紀からシティを拠点とする富豪が国政への影響力を強め、ロシア制圧を目指して南コーカサスや中央アジア戦争を開始。いわゆる「グレート・ゲーム」だ。これを進化させ、理論化したのがイギリスの地理学者、ハルフォード・マッキンダーである。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配し、内陸部を締め上げるという戦略だ。
イギリス政府は1838年にエルサレムで領事館を建設、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。1868年2月から12月、74年2月から80年4月までの間イギリスの首相を務めたベンジャミン・ディズレーリは1875年、スエズ運河運河を買収。買収資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。イギリスは1882年に運河地帯を占領し、軍事基地化している。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018)
ディズレーリは1881年4月に死亡するが、その直後からフランス系のエドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルドがテル・アビブを中心にパレスチナの土地を買い上げ、ユダヤ人の入植者へ資金を提供しはじめた。この富豪の孫がエドモンド・アドルフ・ド・ロスチャイルドだ。
中東で石油が発見されると、イギリスとフランスはその利権を手に入れようとする。そして1916年に両国は協定を結んだ。フランスのフランソワ・ジョルジュ・ピコとイギリスのマーク・サイクスが中心的な役割を果たしたことからサイクス-ピコ協定と呼ばれている。
その結果、トルコ東南部、イラク北部、シリア、レバノンをフランスが、ヨルダン、イラク南部、クウェートなどペルシャ湾西岸の石油地帯をイギリスがそれぞれ支配することになっていた。
協定が結ばれた翌月にイギリスはオスマン帝国を分解するためにアラブ人の反乱を支援。工作の中心的な役割を果たしたのはイギリス外務省のアラブ局で、そこにサイクスやトーマス・ローレンスもいた。「アラビアのロレンス」とも呼ばれている、あのローレンスだ。
パレスチナではシオニストがイギリスの手先として使われることになり、イスラエルの「建国」に繋がったのだが、シオニストとユダヤ教徒を同一視してはならない。イギリスにおけるシオニストの歴史を振り返ると、始まりはキリスト教徒だ。
イスラエルが「建国」された当初、その「新国家」を支えていたのはイギリスとフランス。アメリカが加わるのはリンドン・ジョンソン政権になってからと言えるだろうが、今ではアメリカがイスラエルを支える大黒柱になっている。 そのアメリカはハニヤが暗殺された時点で強襲揚陸艦ワスプ、ドック型揚陸艦のニューヨークとオーク・ヒルをレバノンへ向かわせていた。
ハマス、ヒズボラ、イエメン、そしてイランなどを相手にした戦争でイスラエルが勝つことは難しいの見られている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は一線を超えた挑発を行い、大規模な報復攻撃を引き出してアメリカを戦争へ引きずり込もうとしているとも推測されているのだが、アメリカが勝てる可能性も大きくはない。
こうした動きの中、注目されているのが「ソロス」。ハマスは元々ムスリム同胞団で、創設にはイスラエルが関与していた。アラブ諸国がイスラエルによるパレスチナ人弾圧に沈黙する中、唯一戦っていたファタハの指導者、ヤセル・アラファトの影響力を低下させようとしたのだ。イスラエル政府はアラファトのライバルとしてムスリム同胞団のシーク・アーメド・ヤシンに目をつけ、ファタハのライバルとしてハマスを1987年12月に作り上げたのだ。
そしてヤシンは2004年3月に暗殺され、アラファトは同じ年の11月に死亡した。アラファトは毒殺された可能性が高い。この時点でファタハはイスラエルにとって脅威ではなくなり、ハマスの役割は終わったと判断されたのかもしれないが、 シーモア・ハーシュによると、ベンヤミン・ネタニヤフは首相に返り咲いた2009年、PLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとした 。そのためネヤニヤフはカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたと言われているのだ。ネタニヤフはムスリム同胞団との繋がりを維持していた。
軍事産業をスポンサーにし、金融資本とも関係があるヒラリー・クリントンはジョージ・ソロスの指示を受けていたことが明らかになっているのだが、ヒラリーの側近中の側近と言われるフーマ・アベディンはムスリム同胞団の中枢につながる家系の人間だ。そのアベディンが2010年から2016年まで結婚していたアンソニー・ウィーナーはユダヤ教徒で、ネオコンに属している。そして今年7月、彼女はジョージ・ソロスの息子であるアレキサンダー・ソロスとの婚約を発表した。そのアレキサンダーはカマラ・ハリスを次期大統領に推している。
ハリスは2004年1月から11年1月までサンフランシスコ第27地区検事を、また11年1月から17年1月までカリフォルニア州司法長官を務めているのだが、その当時、彼女は冤罪の可能性が高いと言われているケビン・クーパーという死刑囚のDNA鑑定を求める訴えを退けている。
それ以外にも司法の当事者として不適切なことを行っていたと言われていた。州司法長官時代のカマラは人びとを刑務所へ入れることに熱心で、不登校の子どもの親も刑務所へ送り込んでいたのだ。また安い労働力を確保するため、保釈金を引き上げて仮出所を拘束し続けたと言われている。
その検事時代からジョージ・ソロスはカマラ・ハリスを庇護、2020年の大統領選挙でも彼女を支援されていたのだが、脱落した。