イスラエルは7月31日にハマスの幹部でイスラエルとの首席交渉官を務めていたイスマイル・ハニエとヒズボラの最高幹部のひとりであるフア・シュクルを暗殺、ハマスだけでなくイランの最高指導者であるアリ・ハメネイも報復を誓っている。ハニエ暗殺はイスラエルにパレスチナ側と話し合う意思がないことを示している。
そうした中、ロシアの安全保障会議で書記を務めるセルゲイ・ショイグが8月5日にイランを訪問、マスード・ペゼシュキアン大統領らと会談したが、 ショイグはその報復についてイラン側と話し合ったのだろうと元CIA分析官のラリー・ジョンソンは推測 している。報復計画のほか、イスラエルとアメリカが戦闘機やミサイルでイランを攻撃した場合、ロシアがイランを支援するという事実上の合意を再確認することがテヘラン訪問の目的だろうともしている。ロシアはすでにアメリカをはじめとする西側の政府は話し合いのできる相手ではないと理解しているはずだ。
ヒズボラも報復攻撃を計画しているだろうが、 イスラエル軍の地上部隊は2006年7月から9月にかけてレバノンへ軍事侵攻した際、ヒズボラに敗北している。イスラエルが誇る「メルカバ4」戦車も破壊された。
現在のヒズボラは当時より強くなっている。2500人の特殊部隊員、訓練を受けた2万人の兵士、3万人の予備役、さらに5万人がいると言われている。つまり兵力は10万人を超え、イラク、アフガニスタン、パキスタンの反帝国主義勢力、そしてイエメンのアンサール・アッラーの戦闘員がレバノンへ派遣される可能性もある。戦闘陣地とトンネルが縦横に張り巡らされ、15万発以上のミサイル(その多くは長距離)が準備されている。こうした勢力と戦い、勝利する力をイスラエルは持っていない。
イスラエル軍が4月1日にダマスカスのイラン領事館を空爆し、 IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊と言われているコッズのモハマド・レザー・ザヘディ上級司令官と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害したが、その報復としてイランは4月13日にドローンを囮に使い、様々なミサイルを組み合わせてイスラエルの防空システムを突破して目標に命中させている。
4月1日に領事館を攻撃したF-35戦闘機が発進したネバティム基地は2本の滑走路にミサイルがヒット。これは衛星写真で確認されている。ラモン基地にミサイルが命中する様子とみられる映像も公開された。大半の弾道ミサイルは目標に命中したと報告されている。
ネゲブ砂漠のハルケレン山頂には「サイト512」と呼ばれる基地があり、イスラエルを攻撃するイランからのミサイルを監視するAN/TPY-2 Xバンドレーダー施設がある。そのレーダーはイランの攻撃に対して有効でなかった。
しかし、この時にイランが行った攻撃は警告に過ぎず、攻撃の能力を示しただけ。今回は軍事施設などにダメージを与えようとするだろう。報復は少なくともイラン、ヒズボラ、イエメンが実行すると見られているが、シリアやイラクの反帝国主義勢力も参加しそうだ。こうした勢力は連携し、個別では不可能なような攻撃を行うとされている。
その攻撃をアメリカ/NATOは防ごうとするだろう。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7月24日にアメリカ議会で演説、議員は58回のスタンディング・オベーションを行った。ネタニヤフの戦争にアメリカはどっぷり浸かっている。
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