着陸して飛行機の動きが止まると出口に急ぐのは万国共通のようである。反対側の通路に並んだS氏が日本人女性に話しかけている。離れているので、内容まではわからないが、女性の顔に迷惑そうな表情はうかがえない。
コミュニケーションが上手く成立している様子だ。
そうS氏は天性の社交家である。
私などは立食パーティーで見知らぬ顔ばかりだと、つい心細くなってしまうが、S氏は泰然自若として未知の人との会話をすこしも苦にする風がない。
S氏の風貌は日本経団連の奥田会長をもう少し若くした感じ、と思ってもらえばほぼ間違いないが、キッと人に安心感を与えるのだろう。
さてこの後、S氏は驚くべき情報をもたらした。
なんと、彼女ら三人はわれらトルコツアーの同行メンバーだというのである。
われわれは旅行社の企画したツアーに申し込んだのであるが、出発前の旅行社からの情報では、われわれ四人のみで催行とのことであったからである。
一方、関空発の彼女らには、成田から四人が一緒になり総勢七人のツアーであることは事前に知らされていたという。
ところが、その四人がおじさんばかりとは、それこそ『想定外』のことであった。イスタンブールの乗換時にも不安になって、日本人女性の四人連れを探していたという。
かくして四人の東男と三人の京女(実際には隣県)のトルコ旅が始まった。
海外旅行で一番多いのは夫婦連れ、次いで女性の友人同士、まれに一人旅といったところであろう。
男四人、別に奇を衒っているわけではないし、妻に相手をしてもらえないわけでもない。
気が合うし、楽しいからという理由は、女性のグループと何ら変わることがない。
恒例化してからトルコ旅行で三回目。
私は所用で参加できなかったが、第一回が敦煌・シルクロード、前回がエジプトであった。
われわれの旅は新宿の飲み屋での結団式から始まって反省会までほぼ一ヶ月の日程を要す。そして、旅行中の安全を祈念する出発ロビーでの小宴会が実質的な旅のスタートである。
二杯目のビールが空く頃には、気がつくと大部分の乗客が搭乗口に消えていた。
列の最後尾に並びいよいよ搭乗という時、本日は満席でございまして、お客様の席はビジネスクラスにご用意致しました、と告げられた。