手負いのダンス（後編）

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2012/02/06

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テーマ：社交ダンス(8742)

カテゴリ：競技会関連

選手控え室にはドレスやダンス用品のたくさんのお店がブースを出していました。

３階の競技会場はまだ少しはマシでしたが、１階の選手控え室は試合中は人も少なくキーンと寒かったんです。

こんなとこ長居出来ないと思いましたが、お店の方々は辛抱強かったですね。

暖かい飲み物のブースでも出てれば飛ぶように売れたんじゃないでしょうか。

もう３時を回っていてお腹がすいて仕方なかったので、私は一人、非常食用のゼリーを食べに戻りました。（大将は既に完食）

さあ食べようかと思った所に大将が飛び込んできます。

『僕たち残ってたから，食べてるヒマないよ。すぐに試合。』

とりあえず先に行っててもらって、後から追いかけました。

ずっとBフロアだったのでフロア脇に飲み物とか置いてたんですけど，そこに行ってみると大将がいません。

もう次ぎ試合なのにどこ行っちゃったのかとキョロキョロしているとまたまた息せき切ってやって来て言います。

『次はAフロアだって。行くよ。』

大将は自分のタオルとか飲み物だけもって、こともあろうに先生方が居並ぶ大会運営事務局を突っ切って行っちゃうじゃありませんか。

それはさすがにまずいんじゃないの。

かといってフロア突っ切るわけにもいかないし、外周３辺ををぐるっと回って向こうまで行くとなると時間かかりそうだな。

躊躇しているうちにアナウンスが入りました。

『B級スタンダード、最終予選を開始します。』

エーイ。もう行ってしまえ。忍者走りでなるべく周りを見ないようにダーっと突っ切りました。

私達は235番まである背番号のちょうど真ん中くらいだったので人数が減って来て後ろ半分から前半分に移動になったんですね。

スコアを見に行った大将も、最初Bフロアの方に自分たちの番号がなかったのでもう負けたのかと思ったそうです。

最終予選は36組、このうち24組が更に上に行けます。

曲がちょっと長めなので、半周しかない私達のワルツルーチンは同じことを何度も繰り返すことになっていて、スローアウェーオーバースェイもコーナーのたびにやってたんですけど，これが痛いんですよ。

ただでさえ首とか痛くなるのに右肩が痛くて首を左にキープ出来なくなって来ていました。

毎回コーナーに差し掛かるたびに，

『あー，また来たー。もういやだー。』

って心で叫んでたんですけど、その時私の名前を呼んで下さる声が聞こえたんです。

痛みをこらえながらそちらに目を向けると、昔サークルで一緒にベーシック習ってた懐かしい仲間二人が応援してくれてるじゃありませんか。

うれしかったですねー。凍り付いた大地に差し込んだ暖かい光のように感じました。

それを受けて私のやる気レベルがグーンと急上昇。

何とか最終予選を踊りきることができたんです。

最終予選に残ったことでB級維持が決まり，出た甲斐があったと大喜びだったんですが、ここで終わりませんでした。

なんと準々決勝にまで進出。ベスト24に入ってしまったんです。

『またBフロアだって。行くよ。』

大将はまた大会運営事務局を突っ切ってダッシュ。私も今度は躊躇しませんでした。

行ったり来たりでしたがここを抜ければABフロアが統合されて広いフロアで踊れるはずだったんです。

でもさすがに準決勝に残った方は皆さん上手でしたね。

大将は

『ついにハッタリがバレたね。』

なんて言ってましたが、ノーテクの私達にしては上出来です。

会場が以前住んでした家の近所だったので、当時よく行っていた天然温泉に帰りに寄りました。

まだ回数券が２枚残っていたんです。３年前の回数券が使えるのかちょっと心配でしたが大丈夫だったみたい。暖めると痛みが和らぐのでありがたかったです。

帰り道は昔話に花が咲きました。

『ここに変なスパゲティ屋さんあったよね。』

『シーフドスパゲティに入ってたタコが硬いとか言ってボクに押し付けて来てさ、硬いの丸ごと２個も食べる羽目になったんだよ。』

何でそんなこと覚えてんの？

引越の時に食べたそば屋もあったし、誕生日にケーキ買いに行ったケーキ屋さんもありました。

『そういえばこの辺にいつも空いてる中華屋あったよね。』

中華屋は無くなってました。以前住んでたマンションは相変わらず『入居者募集中』。駅前の賃貸で出入りが激しいんでしょうね。

寒くて痛くて過酷だった一日は，こうして無事終わりました。

いつも応援して下さる皆様、どうもありがとうございました。