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tajim

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Dec 15, 2005
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「もう並ぶのはごめんだ」と言ったものの、しっかり二時間前には予定の本屋に着いて列の後ろにつくと、皆月曜の徹夜で疲れたのか、前から30番目以内だった。店の前で待つこと一時間半。でも、深夜の寒空の下で7時間待ったことに比べれば、こんなことはなんでもない。
5人ずつ順番にレジに呼ばれ、サインをもらう予定のポールの初の子供向け絵本「High in the clouds」を購入した。200人と言う大人数なので、事前にサインしてある本をポールが配るだけだという噂があったけど、ここで本を買うってことはやっぱりその場でサインしてくれるのかも。

先生の後についていく小学生のように店の人の後ろに続いて二階に連れて行かれると、そこで荷物、ジャケット、および本以外の全ての持ち物を預けるように言われた。ポールに渡そうとCDやカードを用意してきた人たちは残念がってた。ポケットを裏返して中が空な事を調べる徹底振り。ジョンレノンが暗殺されて以来、ポールはセキュリティにとても厳しくなったと聞くけれど、女王にでも会うかのような厳しいチェックだった。本一冊を持って今度は三階に連れて行かれる。

そこから三階でまた1時間半ほど待たされた。下からは次々と、セキュリティチェックの終わった人々が階段をのぼってくる。階段周辺にはコワモテのセキュリティのおじさんたち。店の二階より上の階はこのイベントのために一般客には閉鎖されていた。
本屋の店員がやってきて、なにやら説明している。耳を澄ますと、なんと、これから本を回収すると言う。やはり思ったとおり、ポールは事前に本にサインをしてしまったらしい。「一人でも多くのファンに」会いたいというポールの意向らしい。「その分一人ずつ話せる時間が取れるから」となだめられながらも、「それじゃスタンプと一緒じゃないの!」なんて怒るファンもいた。まぁ、200人分サインするのも大変だろうし、会えるならいいや。
私達の後ろに並んでいた(どう見てもポールのファンには見えない)労働者階級っぽい2人の若者は、肩にサインしてもらってそれをタトゥにするんだ、と盛り上がっていた。でも、本のサイン会なんだから、そんな関係ないことはしてくれないと思うけど…

警備が厳しくなってきて、列から動かないように釘を刺される。もうすぐポールが登場するんだろう。皆で、特に警備が厳しいドアの周辺を見つめる。ここから来るのかもしれない・・・。と、本屋の店員に続いてさらっと階段を下りてくるポールの姿が!カジュアルなスーツの下には真っ赤なシャツ。63歳とは思えない軽快な足取りで、背筋をピンと伸ばし、こちらに手を振りながら歩いてくる。待ちくたびれていたファンは皆いっせいに歓声を上げた。

その後、子供向けの本だけに、呼ばれていた小学生達の前でポール本人による朗読会があった。そしてとうとう、列が動き始めた。サイン会が始まったらしい。
あと10人くらいになると、ポールの姿が見えた。なにやらファンと話している。それも結構時間をとって、一人ずつ会話している。ここに来て、急に緊張してきた。何を言うかなんて考えてない!サインをしてもらってありがとうと言うくらいかと思っていた。言うことを考えようと思いながらも、すぐ近くで普通に動き、話すポールの姿、ファンとの会話に気がとられ、思うように考えられなかった。子供連れのファンはフォトグラファーに一緒に写真を撮ってもらっていた。(どっかの子供を連れてくるべきだった!)私の前のカップルは(外人らしいアクセントで)「このためにわざわざ来たんだよ!」と言っていた。

そんなうちに、自分の番が来てしまった。目の前にはポール。テレビで見るよりもずっと若々しく、肌がつやつやしていた。とても健康そう。手を出すと、握手をして本を渡してくれた。他のファンを見ていると皆自分の名前を名乗って「Hello, Mary」なんて言われていたので、とりあえず自己紹介をした。でも、イギリス人に私の名前を言うといつも一回では分かってもらえない。何回も聞き返されたあげくに間違われたりする。ポールも例外ではなく、一瞬ちょっと困った顔をした後、代わりに「コンニチワ!」と言ってきた。あ、そうくるか、と思ったのでとりあえず「こんにちは」と返した。日本人だと分かったらしいので、その場の思いつきで「日本に来る予定はあるの?」と聞いてみた。と、予想外に「ちょうど今そんなことを話してるんだよ。」と言う。「え、日本に来るの!?いつ?」と思わず素になってしまう。「近いうちにね。来年かもしれない。」と言う返事。「絶対に見に行きます!」と言ったあたりで、私の真後ろに立っていたポールのマネージャーが軽く肩に触れた。「タイムオーバー」だ。仕方なく「ありがとう」と言い立ち去ろうとすると、後ろから「Thank you, Bye!」と聞こえた。振り返ると、もう次に待っていた私の友人と話していた。

あまり英語が得意じゃない友人に、「Do I do what!?」と聞きかえすポールの声が聞こえた。後で聞くと、彼女はロンドンでコンサートをする予定があるか聞いたらしい。ところが返事はNo。アメリカ公演から帰ってきたばっかりだし今のところ予定はない、と言われたらしい。ロンドンはNoなのに日本はYesってことは、本当に日本に行くつもりなのかもしれない。そのまま待っていると彼女の後ろの例の若者2人組みが、なんと本当に肩にサインをしてもらっている!フォトグラファーがパシャパシャと写真を撮る。「ポールは頼まれればNoと言わない」という噂は本当だったのか…。2人は興奮気味に「やったよ!」と言いながら私達の横を通り過ぎて行った。

後ろ髪が引かれる思いをしながら、セキュリティに促されて会場を後にした。緊張と興奮で、しばらくボーっとしていた。ポールとしゃべったなんて。前にも握手をしてもらったことはあった。でも、ちゃんと時間が与えられ、私のしゃべる英語にポールが反応して答えを返してくれる、という事実が不思議だった。ポールはやっぱりちょっと訛っていた。なんでもっと気の効いたことを言えなかったんだろう、という後悔があるものの、ポールと会え、会話した事実に満足だった。神様に会うようなものだ。

ずっと後ろのほうに並んでいたファンの話では、途中からやはり時間がなくなり、「長く話さないように」と忠告されたらしい。挨拶くらいしか出来なかった、と言うから、最初の数十人の中にいた甲斐があったのかもしれない。サインは事前にしてあるものだったけど、きっとその場でサインしてくれたら、ポールは下ばかり向いてちゃんと会話できなかったかもしれない、と思うと、今回の形式は逆にいいような気もした。朗読会も含めてわずか一時間で会は終わったと言うから、本当に時間がなかったんだろう。でも、そんな中でファン一人ひとりとちゃんと時間をとってくれたことが嬉しかった。きっと一生忘れられない日になるだろう。


paulsign





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Last updated  Dec 15, 2005 08:28:35 PM
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