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tajim

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Jan 18, 2006
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今週の月曜日から、毎日夜中に「人体解剖番組」をやっている。
このシリーズは(私が知る限り)二回目で、前回も結構見ていた。
番組の趣旨は、有名なドイツ人の解剖学者が観客の前で死体を解剖し、人体のつくりを説明するという過激なもの。前回のシリーズでは基礎知識的な人体構造の解説だったが、今回のシリーズは様々な病気に焦点を絞っているようだ。

そもそもこの解剖学者が有名になったのは、Plastinationとか呼ばれる特殊な方法で死体の水分を抜き、血管や皮膚、筋肉、臓器等を保存した人体標本を見せる展示会のようなもので、随分前に私も見に行ったことがあった。献体されたというたくさんの人体が、血管やら臓器が丸見えの状態で、それでも人の形をして飾られている。血管だけが残るように保存された人体や、筋肉が見えるように保存された人体は、驚くほど綺麗で、不思議と気持ち悪くは見えなかった。テレビの手術シーンでは目を覆いたくなることも多いのに、いったん死んでしまうと人間もただの「物」になるようだ。自分も含めて辺り中にいつも人間はたくさんいるのに、ほぼ絶対に見ることのない部分を見せられる。帽子をかぶってたり、馬に乗ってたり(もちろん馬も展示品)バスケットボールをしてたりと、ちょっと悪趣味な展示の仕方が笑えた。日本でも展示会をしたという話なので、見た人も多いかもしれない。

そんな解剖学者が、観客(解剖学の学生や献体希望者らしい)の前で人体を解剖していく。昨日のテーマは「癌」だった。大腸癌で亡くなったという女性の死体を解剖し、腸を引っ張り出しては「ほら、ここに癌がある!」、リンパに乗って転移しやすいと言う肝臓と肺にも癌を見つけ、「ここにも見つけた!」と、かなり強いドイツ訛りの英語で興奮気味に説明する解剖学者の姿はちょっと異様だった。それでも(イギリス人の医者の助けで)普通の腫瘍と悪性の腫瘍の違いなどをとても判りやすく説明し、どういう経緯で癌が転移するのかを解説し、最後には乳がん等の自己診断の仕方などまで教えてくれた。
説明を受けてしまえば、なんていうことはない、簡単な理屈に見える。世の中にはアレルギーや花粉症なんていう生死に関わらない病気に関する情報はあふれかえっているのに、一体どれだけの人が癌に関する正確な情報を知っているだろう。生死に関わることとなると、むしろ知りたくない、自分には関係ない、と思う気持ちが強くなるのかもしれない。触れてはいけない「謎」のようなものにしておいて、普段は考えない。

養老孟司もよく言っているが、脳化社会と呼ばれる現代では「身体」が重視されない。死体を隠し、死ぬ事実から目をそらし、脳だけで生きてるような錯覚を持つ。うちでも家族に癌が出て初めて、パニックに陥り、本を読み漁り、情報収集をするようになった。「今までは忘れてたかもしれないけど、やっぱり身体が大事でしょ」と、急に事実を突きつけられるようなものだ。
そんな時代だからこそ、身体の実感を与えることのできるこういう展示会や番組が必要になるのかもしれない。





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Last updated  Jan 19, 2006 03:22:26 AM
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