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2019年01月30日
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270:仲間入り
「みなさんの仲間入りをさせていただき、こんな楽しい塾にも参加できて光栄です」
 みんなで簡単な朝食を摂っているとき、樋口正直は笑顔でお礼を述べた。
「きみたち夫妻も、何かの講師になってもらわなければならない」
 幸史郎はコーヒーで、口のなかのトーストを流しこんで告げた。
「うちは数学の先生と幼稚園の先生ですから、やさしい数の研究あたりにさせていただきます」

「樋口さんは、パソコンに知識はないの?」
 勇太は唐突に質問した。
「多少はありますが、自慢できるほどではありません」
「おれ、おふくろの味の研究をしているんだけど、写真の整理をしたり、発信したりするのには、パソコンが必要だと気がついた」
「パソコンの知識よりも、前回の講義にあったおいしいたくあんの漬け方、のてんまつを聞かせてくれない?」
 幸史郎は笑いながら、勇太につめ寄る。
「少し無理があったみたいだ。標茶は日照時間が少ないので、軒に吊したダイコンはちっとも水分が抜けなかった」
「パソコンよりも、そっちの成功の方が先決だな」
 恭二も笑いながら、混ぜっ返す。麗奈は愉快そうに笑っている。そしていった。
「立派なお仕事をなさっている方たちばかりなのに、ここでは幼稚園の教室みたいになるんですね」
 恭二は、そのとおりだと思った。そして質問した。
「樋口さんみたいに、標茶町に移住したいという人を増やすには、どうしたらいいかな?」
「全国の大学へ通っている人たちが、友だちに標茶の魅力を数多く語ることでしょうね」
 正直はずっと考えていたことのように、即答してみせた。
「うちの旦那のいうとおりで、まずは興味を持ってきてもらうこと。そのとき、暖かいおもてなしと、町の活気を見れば、住んでみたいという気持ちになるわ。ホテルに移住者求むなんて、パンフがあれば、なおいいかもしれません」
「それグッドアイデアだね、さっそく、そんなパンフレットを作ってみよう」
 恭二もすぐに応じた。

 幸史郎は、人財資産として、ここにいる全員の名前を書いた。そして宮瀬哲伸と昭子の名前も書いている。おれが今日あるのは、これらの人たちのお陰だと心底思う。





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最終更新日  2019年01月30日 03時53分31秒
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