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2019年05月19日
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026:恋の町札幌
 停車中の電車の指定席に着くと、理佐の姿はなかった。勇太は一人で、ぽつねんと座っていた。恭二の胸のなかに、ざわざわとした風が起こる。やっぱり、何かがあったんだ。
「理佐は?」
 詩織は、無頓着に質問する。恭二に緊張が走る。触れてはいけない闇に、詩織は踏みこんでしまった。
「お姉さんへのお土産を、買い忘れたんだ。あわてていたけど、間に合うよ」
 返ってきた答えに、恭二は胸をなで下ろす。小さな紙包みを抱えて、息せききった理佐が飛び乗ってくる。背後から、発車を告げるベル音が追いかけていた。
「ごめん、心配かけちゃって」
 ペコリと頭を下げた理佐は、「勇太の買い物がのろいから、肝心なお土産を買い忘れたのよ」と矛先を変えた。

電車はゆっくりと、ホームを滑り出した。恭二と詩織の首に巻かれたそろいのマフラーを認めて、「お似合いよ」と理佐は目を細めた。その理佐の首には、ペンダントがぶら下げられていた。小さな額縁のなかに、モネの睡蓮の絵がはまっていた。理佐が大好きだ、といっていた絵である。
「勇太、おれからおまえに、プレゼントがある」
 恭二は勇太に、紙包みを手渡す。
「マスクだ。ずっと欲しかった、キャッチャーマスクだよ」
 勇太はつばを飛ばして、理佐にいった。

進行方向に向かって右の窓に、テレビ塔が現れた。勇太はその光景を、マスク越しに見ている。詩織は心のなかのオルゴールを、そって開いた。いつもなら、「月夜の散歩」が聞こえてくる。しかし今、詩織の聴いているのは、
――時計台の下で逢って/私の恋は はじまりました/黙ってあなたに ついてくだけで/私はとても 幸せだった/夢のような 恋のはじめ/忘れはしない 恋の町札幌
という曲だった。それは羊ヶ丘の石碑から、聞こえてきたメロディである。





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最終更新日  2019年05月19日 03時39分27秒
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