山本藤光の文庫で読む500+α

山本藤光の文庫で読む500+α

PR

バックナンバー

2024年11月
2024年10月
2024年09月
2024年08月
2024年07月

カテゴリ

空白

(216)

妙に知(明日)の日記

(1580)

新・知だらけの学習塾

(564)

新・営業リーダーのための「めんどうかい」

(358)

完全版シナリオ「ビリーの挑戦」

(261)

知育タンスの引き出し

(317)

営業の「質を測るものさし」あります

(104)

のほほんのほんの本

(386)

乱知タイム

(71)

国内「あ」の著者

(24)

国内「い」の著者

(28)

国内「う」の著者

(11)

国内「え」の著者

(5)

国内「お」の著者

(21)

国内「か」の著者

(21)

国内「き」の著者

(9)

国内「く・け」の著者

(14)

国内「こ」の著者

(18)

国内「さ」の著者

(17)

国内「し」の著者

(27)

国内「すせそ」の著者

(8)

国内「た」の著者

(23)

国内「ち・つ」の著者

(10)

国内「て・と」の著者

(14)

国内「な」の著者

(16)

国内「にぬね」の著者

(5)

国内「の」の著者

(6)

国内「は」の著者B

(13)

国内「ひ」の著者B

(12)

国内「ふ・へ」の著者A

(10)

国内「ほ」の著者A

(7)

国内「ま」の著者A

(16)

国内「み」の著者

(22)

国内「む」の著者

(15)

国内「め・も」の著者

(10)

国内「や」の著者

(14)

国内「ゆ」の著者

(3)

国内「よ」の著者

(10)

国内「ら・わ」行の著者

(4)

海外「ア」行の著者

(28)

海外「カ」行の著者

(28)

サ行の著作者(海外)の書評

(23)

タ行の著作者(海外)の書評

(25)

ナ行の著作者(海外)の書評

(1)

ハ行の著作者(海外)の書評

(27)

マ行の著作者(海外)の書評

(12)

ヤ行の著作者(海外)の書評

(1)

ラ・ワ行の著作者(海外)の書評

(10)

営業マン必読小説:どん底塾の3人

(56)

笑話の時代

(19)

「ビリーの挑戦」第2部・伝説のSSTプロジェクトに挑む

(124)

知だらけの学習塾

(105)

銀塾・知だらけの学習塾

(116)

雑文倉庫

(44)

プロフィール

フジミツ

フジミツ

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ガーゴイル@ どこのドイツ 高半旅館は北方庁の高半島の高半温泉であ…
リンク@ Re:■過・渦・蝸・禍・鍋の「つくり」の意味は?(08/18) 参考URLには小ちゃいミスがあります。 co…
creesxuny@ erukzlyuujbn &lt;a href=&quot; <small> <a href="http…

サイド自由欄

設定されていません。
2019年10月31日
XML
カテゴリ:
182:MRとしての出発
北大薬学部を卒業して、瀬口恭二はR製薬へ入社した。スイスに本社のある外資系製薬会社で、世界で三番目の売上を誇る。ガンの領域に特定すると、世界でナンバーワンの製薬企業である。恭二は、ここの研究所へ入りたかった。
しかし面接のときに「営業経験をしておくと、その後の研究に役に立つ。MRなら即採用できる」と説明されて、「はい」と答えている。MRとは医師の薬剤パートナー、という位置づけである。しかし実際には、他の業種の営業マンと変わらない。

 半年間の、新人MR導入研修が終了した。恭二は長かったな、と思いながら配属発表を待っている。配属希望先は、札幌支店と書いた。佐藤営業部長が、紙片を広げた。
発表は北の支店から、順番になされた。札幌支店には、恭二の名前がなかった。仙台支店にも東京支店にも、名前はない。読み上げは、関西の支店に移った。まだ呼ばれない。残るは福岡支店だけになった。
「福岡支店、瀬口恭二」
 頭のなかが、真っ白になる。研究所勤務のはずがMRになり、札幌支店配属の希望が福岡になってしまった。瀬口恭二、二十六歳。社会人としては、不幸な出発となった。

配属発表が終り、パーティがはじまった。宮原正晴がやってきて、固く恭二の手を握った。彼は四年制の理科系大学を卒業しているので、二十三歳である。研修中、恭二とは同室だった。宮原は第一希望の、名古屋支店に配属された。
「悪いな、ぼくだけが希望どおりで。でも福岡は、住みよいところだと聞いている」
「担当先が福岡市内ならまだいいけど、どこへやられるのかわからない。沖縄だって、福岡支店の管轄なんだから」
「沖縄なら、いつでも喜んで遊びに行くよ」

 しゃべりながら、恭二の胸の中に暗雲が垂れこめる。正式な担当地区は、まだ発表になっていなかったのである。沖縄を含めた、九州の地図を思い描いてみる。北海道しか知らない恭二にとって、それは異国の地図に思えた。
 希望に満ちた、社会への旅たちのはずだった。恭二は札幌で待っている、浅川留美を思う。そして六年間のルームシェアに、終わりがきたことに初めて気づく。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2019年10月31日 04時20分30秒
コメント(0) | コメントを書く
[] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: