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2019年11月18日
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カテゴリ: 空白
199:雪が溶けたら
当選後の宮瀬家には、あいさつの客が絶えることがなかった。恭二と詩織は幸史郎に招かれて、リビングでお祝いをしていた。客がくるたびに、宮瀬哲伸は席を立った。
「大変なことになったね。これじゃ先が思いやられる……私はね、絶対に落選すると思っていたから、安心していたんだけど」
 宮瀬の妻・昭子は、玄関に向かう夫の後ろ姿を見ながら、小声でいった。
「これでは、部屋のなかが暖まらない。玄関が開くたびに、冷たい風が入ってくるんだから」
 可穂の隣りには、婚約者の長島がいた。長島は可穂の話を受けて、ぶるぶる震える格好をしてみせた。

「宮瀬さんが町長になったんだから、標茶は大変身する。詩織のところを中核にして、一大温泉郷を建設するのは、普通の人ではできない発想だよ」
 恭二の言葉を受けて、詩織はすぐに続けた。
「私も同感。うちのお父さんは、宮瀬町長が決まった日に、一人で祝杯を上げてひっくり返っちゃった」
「恭二の仕事も決まったし、めでたい春になったな」
 幸史郎は手酌で冷酒を注ぎ、うれしそうな視線を恭二に向けた。
「感謝している。責任は重いけど、頑張るよ」

 宮瀬が玄関から戻ってきた。
「たまらないね。こんなにあいさつ客が多いのは、初めての経験だ」
「仕方がないわよ、町長さんになったんだから」
 昭子の言葉と重なるように、またチャイムが鳴った。ため息をついて、宮瀬は玄関へ向かう。そして大きな声で告げる。
「昭子、彩乃と恭一さんだ」
 リビングに姿を現した彩乃のお腹は、バレーボールからビア樽に変わっていた。
「お父さん、町長就任おめでとうございます」
 恭一はそうあいさつしてから、恭二を認めて「何だ、恭二もきていたのか」といった。
「恭二くんはね、今年から標茶町観光協会会長兼『おあしす』の館長だよ」
 宮瀬の説明に、恭一の顔がほころんだ。
「それはよかった。恭二、おめでとう」

 恭二は詩織と一緒に、宮瀬家を辞した。
「詩織、家まで送って行くよ」
「久し振りだね。恭二と並んで歩くのは」
 残雪に足を取られかけて、詩織は恭二の腕にしがみついた。そしてそのまま、腕を組んで歩いた。外は冷え冷えとしていたが、詩織の体温は寒気を跳ね返していた。
「詩織。おれの人生を、宮瀬さんの構想に賭けてみる。やっとやりたいことが、見つかったって感じだ」
「よかった。恭二の決意表明は、私がしっかりと聞いたからね」
「詩織、おれたち、やり直せるかもしれない。本物の春になってもこの気持ちが変わっていなかったら、おれ、きっと大切なことを詩織に告げそうな予感がする」
「恭二、雪が溶けたら何になるか知ってる?」
「水だろう」
「ブー。春になるのよ」
 笑った拍子に、二人はしっかりと手をつないでいた。 





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最終更新日  2019年11月18日 04時11分59秒
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