ミュンヘンのパッチワークファミリー
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ドナー・ケバブ、あるいは日本ではドネルケバブという表記のほうが一般的でしょうか。ここミュンヘンのある南ドイツでは、Rの発音がかなりゆるやかで「xxアー」となります(例、「バイエルン」ではなく、「バイヤーン」)ので、ドネルもドナー。ドナー・ケバブ、ドイツでは略してドナーといわれますが、もともとはトルコの食べ物。ここドイツという国は、60年代からさかんに、旧ユーゴスラビア、そしてトルコから、たくさんの外国人労働者を雇い入れました歴史があります。当時、ドイツに移住してきた人々のいまや2世、3世がたくさんドイツに住まっております。ミュンヘンでも、中央駅の南側は、リトル・イスタンブルと呼びたいほど、トルコ食料品店、トルコ散髪屋さん、トルコおみやげ物屋さん、トルコ家電ショップなどなど、たくさんひしめきあって活気がございます。街中でも、ドナーを扱っているお店はあちこちにありまして、簡単な軽食として手軽に利用されております。そして、このドナーは、うまい!ドイツ伝統の立ち食いスナック、シュローダー首相も好きだというカリー・ブルスト(カレー味のソーセージ)なんて、いかにも労働者風の食べ物で、プチブルなわたくしとしては、目にしたくもございませんが、ドナーはいいのよねー。どこがいいかって、まず、炭火、ところによっては電熱で、じっくりあぶられたお肉のこうばしさ。それに、健康的にみても、炭水化物、たんぱく質、脂質、そして野菜も一度に全部摂取できることでございます。だいたい、どこで食べてもおいしいんだけど、ミュンヘンで一番うまいと評判の「ヴェルディ」のドナーを試してみました。このヴェルディというのは、やはりミュンヘン中央駅の南側にある、トルコ・スーパーなのですが、この一角に、ドナー・コーナーがございました。 スーパーの食料品コーナーも、買い物客であふれておりますが、ドナー・コーナーも込んでいます。なんでもお昼どきには行列ができるそうですが、わたしが行ったのは、午後3時過ぎだったので、2,3人待てばすぐ順番がきました。「アイン・ドナー・ビッテ!(ドナーひとつください)」元気よく注文します。するとむこうも、「アレス?(全部?)」と聞き返します。これはどういうことかというと、後方であぶられている肉(たぶん、総重量3キロはくだるまい)をまるごと全部ほしいのか、ということではなく、オプションでドナーに入れる、レタスの千切り、トマトの輪切り、たまねぎの輪切り、ザジキというにんにく入りのヨーグルトソース、そしてチリパウダーを、全部入れるのか、と聞かれているわけです。そこでまた元気よく、「ヤー!(はい!)」と答えますと、おにいさんは手際よく、ピタパンに横から切れ目を入れてからレンジであたため、そのすきにあぶり肉を包丁で削り取り、それをちりとり状の受け皿でささっと集めて、ちょうど温まったパンにはさみこみ、やおらカウンターの前方に並べられている野菜類を順番につめこんでくれます。最後にザジキをたらーり、チリパウダーをぱっぱっと振って、いっちょうあがり。はい、どうぞ。 もたもたしていると、お肉からじんわりと染み出るあぶらや、ザジキソースが手にたれてきますので、がつがつとほうばります。うまい!ジューシーなお肉の味が、新鮮な野菜とからまって、すてきなハーモニーを奏でています。これで3.5ユーロ。うちのこどもたちも大好きな、ドイツの軽食であります。
2005.06.09
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