GOlaW(裏口)

2006/02/22
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カテゴリ: 西遊記
 黄泉の水で魂を洗え。
 さすれば、この者等の呪いは解かれん。


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 ということで、まずは冥界(陰界)についての解説に行きましょう。


 「(仙術を心得た)妖怪が幽霊にびびるな」や『黄泉がえり』を彷彿とさせるCGなど、細かいツッコミどころも満載でした(その辺りはもう、ギャグですね)。
 私が真っ先に確認したのは『幽霊に足があるかどうか』でしたが、そちらはきちんとありましたね(中国の幽鬼には足があります)。

 とにかく今回は『香取君の身体を張った演技』に尽きます。
「俺の身体、返してっ(血涙)」という展開は、私の大好きなネタの一つなんですよね(その辺りは、また改めて)。

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 さて今回の『西遊記』考察でお世話になりっぱなしの 『中国妖怪伝-怪しきものたちの系譜』 から、『第四章:あの世と術者の話』(P164-187)およびP33-38を参考にさせていただきます。

 第参話そのニ-羅刹と化す-でも少し触れましたが、中国では幽霊のことを鬼(コエ)、もしくは幽鬼と呼びます。
 中国という土地は広大で、その地域により霊魂に対する考えは様々です。「これが中国の霊魂観」というものを上げるのは非常に困難であります。
 ただ、仏教が入ってから中国における霊魂観は激変しました。そして激変しつつも、それまでの観念を加えて“中国独特”のものに変えていくのです。

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 中国にも勿論、『お盆』が存在します。
 この旧七月を中国では“地獄から幽鬼のあふれ出す月”、『鬼月(コエユエ)』といいます。
 『施餓鬼』(日本でもありますね。無縁仏の供養です)という行事では、食物の他に洗面器やタオルなどの日常品まで置いておくのだとか。

 ここから解るように、中国の幽鬼は『生活観』があるんです。あの世でお金を使ったり、食事したりしてるんですね。

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 中国ではあの世のことを現世を『陽界』、あの世を『陰界』といいます。この二つの世界は微妙に重なり合っています。
 そしてやはり“古くは科挙から始まる官僚大国”中国、『陰界』も神々が勤める官僚制度によって治められています。それこそ、山や海にまで支配が及んでいるほど。
 この『陰界』の官僚の上にいるのが、天界の朝廷です。玉皇上帝(ぎょくこうじょうてい)を頂点とする高級官僚がいます。
 つまり太上老君はこの『陰界』の神々の上司になります。

 …ドラマの中では、そんな威厳をまったく感じさせませんけどね(笑)。

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 天国に当たる存在は『天堂(ティェンタン)』といいますが、中国ではその伝承はほとんど出てきません。
 どうも中国の人のほとんどは“自分は死後、地獄に行く。先祖も皆、地獄にいる”という認識みたいです。
「天国に行きたいか、地獄に行きたいか!」
 という悟空の台詞は、中国ではあまり説得力が無いかもしれませんね(苦笑)。

 『陰界』の地下が『地獄』です。こちらの描写は、色んな話に出てきます。
 ここに入るには、『鬼門関(きもんかん)』という関所と、『奈河橋(なかきょう)』という三途の川の橋を通るとか。
 地獄の責め苦は『血の池』など、日本でも知られているものが多いですね。これも資料によってばらつきがあるそうです。

 そして地獄の奥には、非業の死を遂げた人間の幽鬼が納められている場所があります。

 地獄には羅刹や夜叉などの獄卒(この辺りは仏教の影響ですね)を始め、いろんな冥界の役人がいます。陽界で徳のある人は、死後に冥界の役人に封じられたりもします。
 驚いた事に、インドでは一人だったはずの閻魔大王も、中国では十人になっているそうです。

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『井戸の底があの世に繋がっている』
 ドラマの鍵となったこの部分。遡るとやはり、中国の話のようです。

 古い書物『子不語』(もしくは『新斉諧』。著者は袁枚)の第一巻に、
“清の時代、四川に地獄の所在地といわれる場所がある。
 故あって県令が地獄の神と直談判するため、井戸の底に降り、元人間の閻魔大王と話をする”
という話があります。

 今回の話も、大本を辿ればここに辿りつくのかな。

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『振り返らなければ、生きて戻れる』
 これは日本の神話における「黄泉国(よもつくに)」の伝承に基いているようです。映画『千と千尋の神隠し』のクライマックスにも、この伝承が出てきましたよね。
 類型としてギリシャ神話のオルフェの伝説もありますね(ちなみにこちらは『仮面ライダー555』のオルフェノクの語源となりました)。

 製作者が日本人である以上、多かれ少なかれ、こういった『日本的な観念』がドラマに投影されるのは当たり前。とはいえ、今回はそういった要素がプラスに働いていたと思われます。

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 今回は特に『異世界物』要素の強い物語であったと思います。
 “魂を井戸で洗う”というオリジナリティもすごく良かった。
 確かに『中国らしさ』は無かったけど、面白いという意味では高評価の回でした。





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Last updated  2006/02/22 09:28:31 PM


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