GOlaW(裏口)

2006/03/15
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カテゴリ: 西遊記
 半妖の血が、傷口を塞ぐ。
 黄泉路を振り返らずに、歩く。
──悟空の静かな啖呵が、私を導く。
──死ねない、まだ…!


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 さて。恒例の『展開へのツッコミ』です。
 今回はかなり多いので、前後編に分けさせていただきます。
 『そのニ』は『生死観』とキャラクターの復活に絞って突っ込みます。

 前回、かなり頑張ったのを感じました。その分だけ、今回も頑張って欲しかったなぁ(涙)。

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 『羅刹女』復活について。

 作中で『人間』と明言された『羅刹女』。
 それが首筋を引っかかれて(血糊確認済み)、意識朦朧としていたんですよね。
 せめて抱き上げた悟浄に、
「出血は大したことは無い。むしろ後頭部への打撃が…」
などと診断させるべきだったのでは(汗)。

 後は、
『結婚の時、もしくは女王になったときに、妖怪の生命力を取り入れる薬や秘術を手に入れた』 
『旦那から生命力を分けてもらった』
などの理由も考えられますね。…いずれにしても、作中で(さらりと流しても良いので)理由に触れて欲しかったです。
(ちなみに私は小説『妖魔夜行』に登場する“水波美涼”を思い出しました。この女性は中国奥地の竜宮の龍王に見初められて結婚、半人半龍の息子を産みます。そして自身も龍族の秘術によって若さと生命力を得ます)

 『羅刹女』復活理由を明言して欲しかったのは、『作中の死生観』にも関わる事だからです。
 こちらについては、次の『凛凛復活について』で力説させていただきます。

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 凛凛復活について。

「この娘には、この国でやってもらわなくてはいけないことがあるの」
 その台詞に
「それより、『なんで生きていたか』を説明する方が先だろ──!!」
と、渾身のツッコミを入れた方は少なくないと想像します(苦笑)。
 ドラマの中では、
「私が死んだら悲しい?」
と凛凛本人に問いかけさせ。

 悟空の長台詞の間も、ずっと沈黙させ。

 三蔵には、場面が変わっている時点で
「私には天竺に行く資格がありません」
と悲嘆に暮れさせ。

 …単なる“失血による昏倒”の演出なら、やり過ぎです(頭痛)。

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 ここから、思いっきり力説させていただきます。

 ファンタジーの世界観の中でも『死生観』というものが占める割合は、実は非常に大きいんです。
 つまり“どのような条件なら死に関わるのか”、そして“死後、登場人物たちはどうなるのか”という二点です。

 このドラマの『死生観』は、これまでも『第参話・夢の国』『第六話・森の国』『第八話・幽霊の国』でしっかりと描写されています
 その中で“妖怪であっても、物理的攻撃で死ぬ”、“死んだ人間や妖怪は生き返らない”、“幽霊は実在するが、いつか消える”ということが明記されました。そして、それゆえの苦しみも描かれてきたんです。

 しかし今回“瀕死になっても、すぐに復活できる”とも思える描写があったとしたら。
 それまでの『幻の母親との別離』や、『周修の死』や、『悟空の反魂』の意味も、それに対して視聴者が思ったことも、全てが無意味になってしまうんです。
 『死生観』の揺らぎは、そのまま“過去の作品の意義の揺らぎ”にも繋がることになるんです。

 その意味では、今回の“理由無しの凛凛復活”は最悪の描写といえます。

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 とはいえ。
『死んだように見えて、実は生きていました』
という展開は、何度も使えるわけではありませんが、そんなに悪くは無いと思います。
 つまりは
「その手法を使うんだったら、もっとうまく使え。世界観を壊さぬ程度に」
という結論になります(苦笑)。

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 じゃあ、どうすればいいんでしょうか。
 ここで、物語の中に出てきた、『医術を心得る妖怪』を利用します。
 この女医の口から、さり気なく“凛凛復活”の複線を張らせることは出来たはず。しかも、悟空がいない時に言わせればなお良し。
 例えば、
『私には無理ですが、更に上位の医師ならば、いかなる傷も癒せるとか…』
『先代国王は大層、お体がご丈夫であり。また凛凛様も昔は…』
『国王の杯の中には、歴代の王の生命力が籠められているとか…』
 …等々。

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 そうやって複線を予め張った後で、次のような理由を使い(あるいは組み合わせて)、復活させればよかったのではないでしょうか。
A.“バカップルと化した悟空から、如意棒を預かっていた。それが服の下で、切っ先を反らした”
B.“媚薬の箱、もしくは装飾品が切っ先を反らした”
C.“父親譲りの生命力、あるいは自己治癒能力があった”
D.“国の名医や術師が寄ってたかって治療した”
E.“国王にだけ許される秘薬や秘術があった”
F.“国王の杯が壊れた衝撃で、その籠められた力が周りに影響した”
G.“実は、悟空に甘えて、こっそり死んだ振り”
H.“短剣の麻痺毒に痺れていただけ”
 …このいずれかの描写があったら、ここまで私は吼えていません(遠い目)。

 せめて、最終回に理由を明らかにしてくれれば…(一縷の望み)。

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 でも私が一番やって欲しかった描写は、
“生死を彷徨う凛凛の意識に響く、悟空の啖呵”
だったかもしれません。

 『第八話』で、悟空は“死からの復活”を遂げています。これと同じ理由であったなら、“静かに眠る凛凛”の描写も自然でした。

 だから、こんな描写もできたかもしれません。


 慌てて引き返そうとするが、
『生き返って、王城という名の牢獄に戻るのか』『犬妖怪と結婚するのか』『悟空への空しい想いを抱え続けるのか』
 という心の声に足が鈍る。

 だが、悟空の啖呵が響く。
 そして『王位を継ぐ』ことを、自分の意思で決意し、恋心にも結論をつけ、振り切る”


 これならば、“これまで王位から逃げまくっていた”という事実にも触れ、それの克服過程も描写できます。
 なにより、過去の複線を利用しているのがいいんじゃないでしょうか。


 『その回にしか出てこない小道具』を出したり、『謎解きを延々と披露』したりするよりも。
 “過去の回に出てきた小道具や複線を利用し、山場で物語を急転させる”ことを、視聴者は求めているんではないでしょうか。
(…これは昔、『フードファイト』('00 日テレ系ドラマ。以下『FF』)を観た時に、私がテレビに向かって散々突っ込んだことです。そしてそのエネルギーが有り余り過ぎ、『FF小説』執筆の原動力に…。苦笑)

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 安易に登場人物を生き返らせては、これまでの回の物語が“死んで"しまいます。
 でも、上手く『世界観』を守り、生かしながらやるのなら、私は歓迎です。

 その辺りの配慮を、もっと考えて欲しかったと思います。





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Last updated  2006/03/16 09:36:42 PM


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