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Curiosity killed the cat
言の葉(短編小説集)
言の葉
初めに言葉があった。言葉は神と共にあった。言葉は神であった。
(ヨハネによる福音書)
それぞれのイブ
クリスマスイブの夜だった。その年はとても寒いイブになった。日曜日、午後6時。雪こそ降っていなかったが、星は見えず雲は重く低くどんよりと垂れ込め、駅のホームから見下ろす街を包み込んでいた。ホームにはクリスマスケーキの箱をぶら下げて家に帰るサラリーマンや恋人達の笑顔があった。大きなトイザらスの袋を抱えて目を輝かせながら嬉しそうに両親に話し掛ける10歳くらいの子供。隣のショッピングセンターからはクリスマスソングやジングルベルが微かに聞こえている。いつものイブと同じ光景。そして僕は、凍りつくような寒さの中、身を震わせながら独り、電車が来るのを待っていた。
この日も僕は夜勤だった。休みから突然のシフト変更で、彼女との予定はすべてキャンセルしてしまった。「仕事だもん、仕方ないよね」彼女は気丈にもそう言ってくれたが、その瞳には一瞬、寂しさが走り抜けたのを僕は見逃さなかった。”本当にごめん、いつか必ず埋め合わせするから”ほんのささやかなプレゼントに添えたカードにそう書いた。今の僕にできることはそれしかなかった。ほんのすぐ先の未来にも、その時の僕は何の約束もできなかったのだ。
電車の中は空いていた。効きすぎている暖房でも、凍えた体にはありがたい。僕は車両の真中のシートに腰掛け、ほっと一息ついて手袋をはずした。降りる駅までは約15分。それまではこの温もりに浸ることができる。電車が発車し、ふと車内を見回すと同じ車両にはこの時間でもう半分酔いつぶれているサラリーマン、数人の大学生のグループ。そして僕の向かいのシートには小学校低学年と思しき少年が、独りですわって絵本を読んでいた。イブの夜だというのに、こんな小さな少年が独りで電車に乗っているのは変に思えて、あたりをもう一度見回した。親が近くにいると思ったが、それらしき人はいなかった。寒さで真っ赤になったほっぺたに、大きな目。白いハイソックスに黒い半ズボンに青いダウンジャケット。頭にはすっぽりと青と白のボーダーの毛糸の帽子をかぶっている。絵本を読む瞳はキラキラとしていて、くいいるようだった。僕はなんとなくその少年が気になったが、すぐにバッグから本をとりだして読み始めた。
電車は二つ目の駅に到着した。前の駅には誰も乗ってこなかったが、ここではしかめ面をした一人の老人が乗ってきた。何気なく老人を見たとき、その顔の深いしわと真っ白なあごひげは70歳程度を思わせたが、180センチはありそうな身長とぴんと伸びた背筋、がっしりとした腕は、60歳を超えているようにも見えなかった。そしてその老人は先ほどの少年の隣に座った。
しばらくして気が付いたように、老人は少年を見下ろした。少年は相変わらず絵本にくぎ付けだった。老人はしかめ面のまま(多分これが真顔なのだろう)、野太い声で少年に話し掛けた。
「坊主、一人なのか?」
気の弱い子供ならきっと泣き出してしまうような威圧的な声だったが、その少年は全く動じることもなく絵本から目を離して老人の方を向いた。
「うん、そうだよ」
「親はどうした。一緒じゃないのか?」
「ママは仕事なんだ。だからクリスマスはパパと過ごしなさいっていうから、これからパパの所に行くんだ」
「パパとは一緒に住んでいないのか?」
「うん。ママとパパはリコンしちゃったんだ。僕はママと一緒にいるんだ」
「そうか。これは悪いことを聞いてしまったな」
「おじいちゃんは何も悪いことは言ってないよ」
老人は少し目を細めたようだった。笑っているつもりなのだろうか。目から険しさは消えていた。
「一人でちゃんとパパのところまで行けるのか?」
「一人ででちゃんと行けるよ。もう僕何回も一人でパパの所に行ってるんだ。この電車で終点まで行って、黄色い電車に乗り換えて5つ目の駅なんだよ」
「そうか、偉いな」
そこまで聞いたところで、僕の降りる駅についてしまった。電車を降り、再び凍りつくようなホームに立つと、僕は振り返った。電車の窓には、後姿の老人と少年の姿が見えた。端からみれば、まるで本当の祖父と孫のような後姿だった。
概視感(DE JA VU)
君はこんな話を信じるだろうか?たぶんこう言うだろう。「そんな話、昔からいくらでもあるさ」と。だけどあえて話そう。これは自分が実際に体験した話なんだから。
それは今年の夏、とても暑い8月の朝のことだ。夜勤明けの疲れた体で僕は始発の電車を待つホームに立っていた。すっかり辺りは明るくなってはいたが、まだ陽は登っていなかった。早朝独特のさわやかな風の臭いがしていた。
しかしそれはこれからはじまる暑い一日を予感させるかのように早くも消えそうになっていた。この駅のホームは下に流れる川を挟むようにしてできている。だから駅の改札を入ると長めのエスカレーターにのってホームへと上っていく。そのために住宅街にありながら周りの建物より高いところにあり、天気が良ければホームから富士山を望むことが出来た。ということは、冬は風が通り抜けるからきっとかなり寒くなるだろう。まだ僕はこのホームの冬を体験したことがなかった。
始発の電車の乗客はそれほど多くない。それにいつも顔ぶれはだいたい変わらない。釣りざおを抱えた老人や登山用の身支度を整えた中高年の夫婦、若いサラリーマン。そして時たま朝帰りの大学生など。僕はいつものように、ホームの一番前の方に向かって歩いた。そしていつもの定位置である、一番前の車両の、前から3番目の乗車口を示す白いラインに立ち、文庫本を読み始めた。電車が来るまでまだ10分ほどあった。
本を読み始めてすぐ、ふと向かいのホームに視線をやると、僕が立っている乗車口と同じ場所、つまり反対側のホームからいえば一番後ろの車両の後ろから3番目の乗車口のラインに、一人の女性が立っていた。歳は20代前半くらいだろうか。黒い髪は肩までまっすぐ伸びていて、登り始めた太陽の今日初めての日差しを受け、微かな風になびいてきらきらと光っていた。細長い整った輪郭の顔には少し大きめな瞳と控えめな鼻がバランスよく配置され、きゅっと閉じた口は薄く紅をさしていた。肌は透き通りように白く、水色のワンピースの襟からのぞく左の鎖骨の上、首に近いところにある小さなほくろを際立たせていた。
彼女も文庫本を読んでいた。べつにタイプだったわけでもなく、興味があったわけでもないのに僕はなぜか彼女から視線をそらせずにいた。どこかで会ったことがあったような気がするのだが、思い出せなかったのだ。でもこんなところに知り合いがいるわけはなく、テレビや雑誌で見かけたモデルやタレントなどでもなかった。
そのうちに、反対側のホームに電車がやってくるアナウンスが流れた。彼女は文庫本をバックにしまい、腕時計を見た。それから顔をあげた時、初めて僕と視線が合った。一瞬、彼女が微笑んだような気がした。しかし、その微笑を確かめることはできなかった。その瞬間に入ってきた電車が彼女を隠してしまったのだ。そして反対側のホームには、吹き抜ける熱い風だけが取り残されていた。
僕が乗るほうの電車もやってきて、空いた座席に腰をおろした。そして本を開いていることも忘れ、今見かけた彼女のことを考えていた。必ず、どこかで会っていた。それともこれがデジャヴというものなのだろうか。冷房が効いている車内で僕はだんだん眠くなってきた。うとうととしてまぶたが閉じようとした瞬間に閃いた。そうだ、何度か夢で見た女性だ。
2ヶ月ほど前から僕は同じ夢を3度見ていた。その夢は確かに見たと断言できる。なぜならその夢を見た日付をちゃんと記録してあるからだ。2度目にその夢を見たときに不思議なこともあるもんだとメモしておいた。そして3度目も。最後に見たのは2週間ほど前だった。その夢の内容はこうだ。ふと気が付くと僕は10メートルほどの川幅のある河原に立っていた。川の流れは穏やかで水は澄み、小魚が泳いでいるのが見て取れる。周りの景色は霞みがかかっていて何も見えなかった。しばらく河原をさまよい歩いていると、河原の向こう側に人影が浮かんできた。初めは体の輪郭がぼんやり見え、だんだん顔がわかるくらいはっきりしてきた。女性だった。彼女は何も身につけていなかった。その顔に見覚えはなかったし、これといった特徴があったわけではない。しかしただひとつ、その透けるような白い肌の左側の鎖骨の上に小さなほくろがあったことが印象に残っていた。向こう岸の彼女が僕に微笑みかけると、僕はなんだか心細くなり、彼女のそばに行きたくなった。川は浅い。多少濡れるのを我慢すれば、歩いて渡る事ができるはずだった。僕は川の流れの中に足を踏み入れた。しかしいつも決まって、そこで目が覚めるのである。
これはやはりデジャヴなのか?それとも予知夢みたいなものだったのだろうか?しかしそれ以来、始発のホームに彼女を探しても現われることはなく、夢を見ることもなくなってしまった。初めに言ったように、これは本当の話だ。
砂上の楼閣
埃まみれの風が吹き抜けていく。地平線は闇に消え、まだ夜は明けない。全身を疲労と疼痛が襲う。銃を手にしてはいたが、もう撃つべき弾は一発もなかった。気が付くと自分の周りには敵と味方の死体が累々と積み重なり、その真っ只中に自分は立ち尽くしていた。腕から出血していることに気づき、傷口を押さえた。闇の向こうから敵の軍勢が大群をなして向かってくる音が地響きのように聞こえ、だんだんと大きくなってくる。目を凝らすと生き残っている数人の部下たちが近寄ってくるのがわかった。誰一人の例外もなく、全身を血に染めていた。空を見上げれば満点の星が目を射る。この星も、見るのはこれが最後だろう。今またたく星の光は、何百万年も前に発した光だという。それに比べれば人の人生は悲しいほど短かった。自分はこの星の一瞬の瞬きほどの長さも生きていなかったのだ。「限りある命ならば、永遠に生きたい」。昔、武士の魂をもった男がその人生を終えるときに残したといわれる言葉を思いおこした。ふと目を周りに戻せば、忠実な部下たちはすべて、自分と運命を共にする決意であることをその表情から感じ取った。そこには敗北者の惨めさなどかけらもなく、目は澄んでいた。手にはそれぞれ刀をもっていた。自分も最後の武器である刀を抜いた。月の光を浴びて刃が青白く光を放つ。魔を祓うと云われた妖刀である。意を決すると、迫りくる敵に向かって歩き出した。朝が近いのだろうか、空の黒さに蒼が混じり始めた。そして再び、自分と部下たちは闇に溶け込んでいく。
旧友からの便り
まるで猫みたいな奴だ。そう思った。学生時代の友人から突然、数年ぶりにメールが来た。しかも文面は「久しぶりだな」と「元気にやってる」くらいな物。数年ぶりにやっと連絡をよこしたと思えば、たったこれだけ。でもそれがなんとなくコイツらしいな、と思った。学生時代からこんな感じだった。たぶん、それほど親しい友人は多くなく、俺はその数少ない親友の一人(だと俺はは思っていた)だった。大学が家から遠いせいもあり、俺は家に帰らないことが多かったから、学校の近くのアパートで一人暮らしをしていたコイツの家によく泊まった。俺は結構人見知りが激しかったから、初対面の人と打ち解けるのはなかなか時間がかかったが、なぜかコイツとはすぐになんでも話せるようになった。きっと話しているうちに似たような価値観や考え方をもっていることに気づいたからだろう。卒業して社会人になり、なかなか会う機会が減った。何ヶ月も音信不通で生きているのか死んでいるのかもわからなくなったころに電話があったりする。で、久しぶりに会ってもつい昨日もあったかのように普通に話をすることができる。そんなことがしばらく続いていたが、「実家の熊本に帰る。帰る前にまた連絡する」と電話を一本よこしたきり、何の連絡もなく3年が過ぎていた。そして忘れたころに、一通のメール。九州では、そうそう合う機会はないが、元気でいることがわかればそれでいい。元気ならいつかまた会えるだろう。そう思った。
路傍の石(南へ)
陽は、西に傾いていた。僕はもう何時間もバイクを走らせていた。2kmほど手前から道は海岸沿いになっている。耳に聞こえるのは風とバイクのエンジン音のみだ。2ストローク独特のかん高い音と振動がヘルメットの中でこだまする。海は波が穏やかで秋の優しい日差しが白い波間と海の青さを鮮やかに照らしていた。平日のせいか砂浜には誰もいなかった。波打ち際には海鳥が2羽水浴びをしている。
僕はひどく腹が減っていた。早朝に家を出てから途中で一度缶コーヒーを飲んで以来何も口にしていなかった。国道沿いだから、休もうと思えばレストランもコーヒーショップもあった。でもあと15kmも走れば今日の宿に着ける。そこでなら間違いなくうまいビールとピザにありつけることがわかっていた。それまで我慢しよう。そうすればいつもよりももっとうまいビールになるだろう。ただ、トイレには行きたかった。200m先にパーキングがある。とりあえず一休みだけはしよう。せっかくだから落ち着いて海も見たい。
20台ほどのスペースがある駐車場には車が2、3台停まっていた。どれもトラックでドライバーは寝ていた。仕事中のいつもの休憩ポイントなのだろう。そのパーキングには公衆トイレとコーヒースタンドがあった。エンジンを切りながら惰性でトイレの前までバイクを滑り込ませる。グローブをはずしヘルメットを脱ぎ、シートから離れる。久々に立ったから足がこわばり、少しふらふらした。
用を足し、洗面台の鏡の自分を見る。それほど疲れているようには見えなかった。外のベンチに腰掛けると、真正面に海が見える。サーファーが4、5人浜辺で何か話をしていた。今日は波が穏やかだからきっとあまりおもしろくないのだろう。タバコを1本取り出して火をつけた。気が付けばタバコも今日は全然吸っていなかった。いい兆候だ。ゆっくりと1本吸ってから立ち上がり、灰皿で火を消した。さっきよりも心なしか日差しが弱くなっている気がした。先を急ごう。バイクに戻り、再びヘルメットをかぶる。視界の端に黒いものが横切ったので、そちらの方に目を向けると、黒い子猫だった。首輪はしていなかったからたぶん野良猫なのだろう。海のそばなら食うにも困らないのかもしれない。キーを差し、キックでエンジンをかけると再びかん高い音がよみがえる。さあ、あと少しだ。
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