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虎・矢野、４１歳涙の引退「幸せでした」

テーマ：タイガース党(8334)

カテゴリ：阪神2010

虎・矢野、４１歳涙の引退「幸せでした」

　阪神・矢野燿大捕手（４１）が３日、大阪市内のホテルで記者会見し、今季限りでの引退を表明した。前日２日に南信男球団社長（５５）に引退を申し入れた功労者は「これが人生の終わりじゃないんで」と、第２の人生へ向け、力強くスタート宣言。球団は将来の幹部候補生として大きな期待を込めた。

　声を詰まらせ、じっと前を見つめた。涙がそっと頬を伝った。すべての思いを込めた男泣き。矢野が長い現役生活に終止符を打った。

　「これで人生が終わるわけではないので。僕の人生の分岐点というか、そういう時にはいつも、何か悔しい思いだったり…（しばし涙）…これからもっと、成長できるように、頑張ります」

　９１年にＤ２位で中日入団。控えの時代が続いた。若くして球界を去る仲間も目の当たりにしてきた。

　「まさかこの年まで野球ができるとは思っていませんでした。何年でクビになるのかな、というところからスタートして、阪神でこんなにいい思いができるとは…」

　転機は９７年オフの阪神へのトレード。新婚早々の激震。不安と同時に、「見返したい気持ちが強かった。悔しかった」と振り返った。そして名将・野村監督と出会い、闘将・星野監督と再会。球界を代表する捕手となり２００３、０５年と２度のＶに貢献した。しかし０８年オフに右ひじの手術を受けて以降は出場機会が激減。城島の加入もあった。悩み苦しむ日々を経て、前日２日、南球団社長に引退を申し出た。

　潔い決断。その先に、新たに描く未来がある。「一度、ユニホームを脱いで外に出て、色々なものを吸収できたら。他のチームも見てみたいし、海外の試合や練習なども見たい」。将来的な指導者について「結局は自分は野球しかできんし、やってきたことを生かして指導するというのが」と熱い思いを語った。

　もちろん球団の描く未来も同じだ。坂井信也オーナー（６２）＝阪神電鉄社長＝は「本人の意見もあるだろうし、監督手形を乱発するのもよくないだろうし…」と言葉を選びながら「我々はそうあってほしいと思っている。人柄も文句ない」と、幹部候補生としての期待を口にした。

　「僕にとっての最高の野球人生だったと思います。こうやって辞めていけるのは本当に幸せだなと」。同級生の金本、下柳には「２人がいたおかげで、がんばれた。先にやめるのはちょっと悔しいけど。これからも活躍を期待しています」とエールを送った。

　「どんな形になるか分からないですが、また、ファンのみなさんのところに帰ってこられるように頑張りたいです」

　新たな一歩へ。まずは「今できることはブルペンで受けることや、感じたことを（若手に）伝えること」と今後も鳴尾浜で練習を続け、チームの助けとなるつもり。矢野の第２章。早くも幕が開く。

■矢野　燿大　（やの・あきひろ）
　捕手。１９６８（昭和４３）年１２月６日、大阪市平野区生まれ、４１歳。桜宮高から東北福祉大を経て９１年Ｄ２位で中日入団。９８年に久慈、関川との交換トレードで大豊とともに阪神に移籍。２００３、０５年のリーグ優勝に貢献した。０３、０５、０６年ベストナイン。０３、０５年にゴールデングラブ賞を受賞。昨オフ、名前を輝弘から燿大に改名した。今季８試合に出場、打率・２２２、０本塁打、１打点。通算１６６９試合に出場し、打率・２７４、１１２本塁打、５７０打点。右投げ右打ち。年俸７０００万円。背番号「３９」

【矢野引退会見】先にやめるのは悔しい

　矢野　「今季で引退することを決意しました。振り返ると、本当に夢のような、僕の想像する以上にすばらしい野球人生を送らせてもらったと思いますし、僕にとっての最高の野球人生だったと思います」

　－－引退を決意、表明したいまの気持ちは

　「去年も働けなくて、今年も働けなくて、本当に悩んで、できるのかな、できないのかなと、毎日そういうことを考える日が続いたんですけど、自分の中でやめると決めてからはスッキリした気持ちと、ちょっと肩の荷が下りたような気持ちでいます」

　－－いつから考えて、いつ決断した

　「悩むのはここ何年か、３年くらいはずっと頭をよぎりながら、いい日があれば『きょうできた、また明日がんばれる』、悪い日があれば、『ああ、明日から大丈夫かな』と、そういう日々を過ごしていましたけど、悩みに悩んで、決めたのはちょっと前、最近です」

　－－今季１軍では、控えの捕手として試合中に投手の肩を作るのを手伝ったりサポートする姿が印象的だった

　「正直、（間をおいて）やりたい仕事ではないですし、本当はキャッチャーボックスで自分がマスクをかぶって、勝利の瞬間に球児と喜び合って、そういう自分でいたいとは思っていましたけど、今年に関しては、チームのためにできることをと思っていた」

　－－阪神への移籍は、どんなできごとだった

　「その時はすごく悔しかったし、見返してやりたいという気持ちが強かった。またキャッチャーができる喜びもありました。見返したい気持ちが一番強かったです」

　－－野村監督との出会いは

　「捕手としてたくさんのことを教えて頂いたし、もちろん、今の僕があるのは野村監督の教えがなくてはならないし、やっている時は辛かったけど、本当に感謝しています」

　－－何が辛くて、何を覚えているか

　「新聞を見るのが怖くなりましたね。次の日の監督のコメントで、『矢野のリードが』っていうのを見るのが怖かったです。唯一、１回だけ、１回だけというのは失礼ですけど、褒められたというか、頑張れというメッセージをいただいたのは励みになりました」

　－－星野監督は

　「存在が大きすぎて。入団したときもそうだし、初めて優勝させてもらったのもそう。僕の、これから野球を教える立場になっていく上でも監督の考え、教えというのは支えになっていきますし。一番の恩師です」

　－－思い出に残っているシーン

　「優勝はやっぱりすごくいい思い出ですけど。中日時代になってしまいますが、初ヒット、初本塁打、たまたま甲子園で阪神戦だったんですけど。試合に負けると近寄れないような監督が、僕に手を出してくれた。（涙を浮かべる）」

　－－同級生でバッテリーを組んだ下柳には

　「あんなにキャッチャー思いのピッチャーはいないので、僕も幸せを感じながら。捕手冥利に尽きると思いながらリードしていました」

　－－金本には

　「カネもシモも、本当に野球人として尊敬できる２人ですし、先にやめるのはちょっと悔しいけど、やってきたことは違いますし。カネもまだまだ連続フルイニング（出場）が止まってから、また違う姿を見せてくれているし、これからも活躍を期待しています」

　－－涙はどんな思いからこみ上げてきた

　「本当にありがたいというか、恵まれているなという。この２年は働けなかった悔しさと。両方です」

　（会見後、壇を下りて記者との囲み）

　－－子供が野球をわかるまでやりたいと、よく話されていたが

　「意外とあっさりしとったよ。きのう言ったけど、もう少しリアクションが欲しかった（笑）。『やめるんだ～』って。『もっとやったらいいのに』とは言われたけれど、意外とあっさり」

　－－捕手で、この年齢までやれた理由は

　「カネ、シモの存在は大きい。（先に）辞めたくないなという気持ちはあるし。一緒に辞めることがいいとは思わないけれど、それも幸せかなと想像していた。（２人がいなくて）チームにベテラン１人、高いところにいることを考えたら、２人がいたおかげで、負けているけれど、負けられんという気持ちを持てた。励みにしたし、がんばろうという気持ちが大きかった」

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