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梅林庵

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2017年03月05日

山仕事の駄賃は二八

(8)

カテゴリ：日記

平成29年3月5日(日)

　午前4時起床。夜の白み始めた時刻は4℃。晴れのち曇り。週末はいつも寝坊の妻が珍しく早起き。今日は地区の河川清掃デーでした。午前7時半から約1時間、涸川の中を歩いて空き缶拾いでした。私は親方の山に行く準備があるので妻がこれに参加。チェーンソーの刃を研いで、山用の容器にチェーンソーオイルを小分けしました。

　午前8時半出発。写真は道中、津志河内橋から九州百名山の一つ、標高582mの元越山を遠望の図です。山頂に一等三角点があります。全国各地に数ある三角点中、眺望随一とは国土地理院の某が弁。ちなみに山頂から麓まで、殆どが生産森林組合の所有であり、私がその組合の組合長です。父の山も拙宅も、この青の中にあります。どうですか、木立川の水面に映る山姿。手前に点の浮かぶ鴨は、今日か明日かの北帰行となります。

　切り出しに着きました。万両が相変わらず美しい実を付けていました。これを見て林檎の木を知らない人は、それを連想することと思います。余市を訪ねた折にリンゴ畑を見て、似ても似つかぬと判りましたが、小さい頃はこの姿を見て、林檎とはかくあるものか、幼心にそう思ったものです。

　親方が今日倒す木を見上げていました。いつもより大きめです。

　今日の始末は、護岸のない川筋に並び立っていました。足場が悪い。根元の向こうこっちで高さが違いました。切り回すのに難儀しました。写真は私です。バーが手前に跳ねることはありませんが、首のあたりにチェーンの廻るのは、気持ちのいいものではありません。

　この大きさのものを30本ばかり倒したでしょうか。午前9時から12時前までの作業。流石に疲れました。

　「へへっ、今日はおおきにの。いいしごつーしてもろーた。ほんとじゃったら1万円、いや1万5千円、2万ぁやらんけんど、今、銭ぁ1銭ももっちょらんきーやられん。どげーな、こいさ(今夜)ニッパチぃ行くな、手前んかみさんぬぅつれてくりゃーいいじゃねーか。おごっちゃるわい」

　「ほいてからの、こくーみてみーおまい。これぅ全部おまいにやるんじゃーが。たきもんにすらーいい。kusuhitoんあんちゃんもつれてくらーいいじゃーねーか」。凄い。写真の枠に入りきらない左側にも櫟の倒木がかなりありました。軽トラ5～6台分はあるな。3月も週末は忙しいぞ。

　帰りに親方の無人販売所へ寄りました。彼は県道の道路沿いに店を出しています。椎茸の駒打ち原木を売っています。

　1本500円。代金は箱の中へ。

　蓋を開けたら3,000円入っていました。このお金で今夜馳走してくれるんでしょうか。

　何という種類か判りませんが、小屋の横に蜜柑が生っていました。「これがうまいんじゃがよい」。その言葉に釣られ、3つ毟りました。帰って食べてみました。甘くはありますが、大きさの割りには皮が厚く、食べられるところは少しでした。

　帰宅途中、沖田で蝉幟(せみのぼり)を揚げていました。木立に残る風習です。男の子が生まれると、畳1畳ほどの大きさの凧をこさえます。全面に名付けた名前を大きく書きます。春のこの時期、親戚・友人を呼んで電線のない農地でこれを揚げます。畔際には重箱と酒類。昔は蓆、今はビニールシートを敷いて馳走を囲みます。凧が空風に乗ると其の儘にして、杯がすすみます。

　今日は風がありません。難儀しているようでした。

　帰宅して軽い昼を食べました。午後はネットサーフィンと読書。午後3時になってポツリ降り始めました。まずい。折角割った薪を濡らしてはいけません。ビニールを掛け、風で飛ばないよう、縛りました。次いで小雨をついて林道をひとっ走り。8km。すぐ様シャワーで流し、Gパンを履きました。妻と一緒に｢二八｣へ。

　親方が待っていてくれました。ごっつぁんになります。写真はここの店定番中の定番｢モモカラ｣。

　午前の樵、午後はラン。而してビールがすすみました。

　山師の親方も、市街地に出てくる時は小綺麗な身なりです。

　地鶏のニンニク炒め、カキフライ、ホウボウの天麩羅・・・。注文し放題。70歳で猶健啖家の親方もパクパク。写真はこれも定番の「ホル串」。

　妻は注文の品をあれこれつまんでいましたが、締めに餡かけ焼きそばを食べたいと。皿うどんでした。

　私は焼酎を2合。黒霧を流しました。締めに地鶏鍋を頼みました。ステンレスの小鍋が出てきました。

　汁を飲み干しました。

　「あなた、デザートをいただくわ」。別腹なんでしょう。親方も付き合ってくれました。

　ちゃっかりの妻です。

　勘定は親方持ち。ご馳走になりました。週末の片昼、数時間だけ倒木を手伝うだけで薪ストーブの燃料を誂えてくれます。加えてチェーンソーの消耗品を買ってくれたり、小旅行の折は餞別も。時折、今夜のように晩飯の馳走もしてくれます。長生きしてちょうだい。

　親方、また山に行くからね。彼はこれから山奥の一軒家に帰ります。奥さんと90歳になる母親にここのモモカラを2本もって。私は明日からまたネクタイ仕事ですが、彼は死ぬまで地下足袋を履いての山仕事です。親方をして、樵の仕事は世俗が無いな、いいな、と思いました。私、今の仕事は世俗まみれ。退職したら親方のようになりたいな。