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April 19, 2023
カテゴリ： 海外の絵本・童話・児童書・ティーンズ小説
みなさんこんばんは。詩人で小説家の富岡多恵子さんが老衰のため87歳で亡くなられたそうです。極地を目指すスコット隊に参加した男性と話ができる？少女の物語を紹介します。
ホワイトダークネス〈上下〉 (YA Dark)
ジェラルディン・マコックラン
The White Darkness
あかね書房
14歳の少女シムは幼い頃に父親を亡くし、それ以来母親とは何となくかみ合わない。南極オタクで父の共同経営者だった伯父ヴィクターに南極の魅力を教えられてからというもの、90年も前に南極で遭難したローレンス・オーツ大尉(タイタスとも言う)が空想上の恋人だ。遂に母親に黙ってヴィクターと南極の旅に出かけるが。
原因不明の難聴で、シムは友達と会話が成り立ちにくい。それなのに「悲劇のヒーローとして知られているスコットと対立して一人で吹雪の中出ていって遭難した英国陸軍将校」というえらくマイナーなヒーロー推しであるため、ますます周囲と話題が合わなくなっている。いきおい読書にむかった彼女の関心と知識は、ある部分についてはどんどん深まるが、これもまた同年代となじめない理由になる。同年代の友人がいないことも、母親の心配の種だ。
さて、ここまで来て、読者はまず、シムとタイタス・オーツの会話をどう捉えればよいのか悩むはずだ。フツーに考えれば数十年前に吹雪で亡くなった彼と実際に会話はできない。彼女の言うこと聞くことをその通り信じていいのか？
悩むシムを追い詰めることもなくいつも優しくアドバイスをくれる、美形、大胆で冒険心旺盛。シムの思い描くタイタス・オーツは確かにとてつもなくかっこいい。シムの理想化ならば当たり前だが、架空の存在にしか安らぎを見出せない彼女が、現実社会でうまくやっていけるのか。映画監督父子らと同行するツアーでも、シムは相変わらずで、ある意味強い精神力の持主とも言える。
ところで、ホワイト・ダークネス＝白い闇というタイトルに違和感を抱かなかっただろうか。本来なら白に闇は存在しない。しかし極地には存在する。何日も続く吹雪、極寒の地で予期せぬ故障が生じた際の人間関係の縺れ。光と闇とは簡単に反転する。ならば今シムが見ている“人間”にも言えるのでは。果たして彼等は外見通りの人達なのか。マコックラン作品には、狂信的な指導者についていく群衆という構図が登場するが、本編もしかり。ファンタジーは現実を救えるのか。
2008年マイケル・L・プリンツ賞。
ホワイトダークネス〈上下〉 (YA Dark)
ジェラルディン・マコックラン
The White Darkness
あかね書房
14歳の少女シムは幼い頃に父親を亡くし、それ以来母親とは何となくかみ合わない。南極オタクで父の共同経営者だった伯父ヴィクターに南極の魅力を教えられてからというもの、90年も前に南極で遭難したローレンス・オーツ大尉(タイタスとも言う)が空想上の恋人だ。遂に母親に黙ってヴィクターと南極の旅に出かけるが。
原因不明の難聴で、シムは友達と会話が成り立ちにくい。それなのに「悲劇のヒーローとして知られているスコットと対立して一人で吹雪の中出ていって遭難した英国陸軍将校」というえらくマイナーなヒーロー推しであるため、ますます周囲と話題が合わなくなっている。いきおい読書にむかった彼女の関心と知識は、ある部分についてはどんどん深まるが、これもまた同年代となじめない理由になる。同年代の友人がいないことも、母親の心配の種だ。
さて、ここまで来て、読者はまず、シムとタイタス・オーツの会話をどう捉えればよいのか悩むはずだ。フツーに考えれば数十年前に吹雪で亡くなった彼と実際に会話はできない。彼女の言うこと聞くことをその通り信じていいのか？
悩むシムを追い詰めることもなくいつも優しくアドバイスをくれる、美形、大胆で冒険心旺盛。シムの思い描くタイタス・オーツは確かにとてつもなくかっこいい。シムの理想化ならば当たり前だが、架空の存在にしか安らぎを見出せない彼女が、現実社会でうまくやっていけるのか。映画監督父子らと同行するツアーでも、シムは相変わらずで、ある意味強い精神力の持主とも言える。
ところで、ホワイト・ダークネス＝白い闇というタイトルに違和感を抱かなかっただろうか。本来なら白に闇は存在しない。しかし極地には存在する。何日も続く吹雪、極寒の地で予期せぬ故障が生じた際の人間関係の縺れ。光と闇とは簡単に反転する。ならば今シムが見ている“人間”にも言えるのでは。果たして彼等は外見通りの人達なのか。マコックラン作品には、狂信的な指導者についていく群衆という構図が登場するが、本編もしかり。ファンタジーは現実を救えるのか。
2008年マイケル・L・プリンツ賞。
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