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February 19, 2024
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みなさんこんばんは。ロシアのナワリヌイ氏が亡くなりましたね。プーチンの関与が疑われています。
今日もトマス・ハーディ作品を紹介します。

日陰者ジュード〈上〉
Jude The Obscure
トマス・ハーディ
中公文庫

メアリイグリーンで暮らすジュード・フォーレイは、最初から不憫だった。母親も亡くなり、父親も命取りの瘧にかかって亡くなる。身内といえば、パン屋を営む伯母のドルシラきりだ。なのに彼女すら、こんな事を言う。
「神さまが、母さんや父さんと一緒に、役立たずのお前も連れてってくださったら、なんぼよかったか知れんわい」
「なんだってお前は、先生にクライストミンスターに連れていってもらって、学者にしてもらわなかったんだね。」

 後者の先生とは、冒頭でジュードが引っ越しを手伝っているフィロットソンだ。リチャード・フィロットソン先生は大学卒業後クライストミンスターで聖職に就くつもりなので、メアリイグリーンを出ていく。てっきり前説のみの人かと思いきや、リチャードは主要人物の一人である。

「あれは光の都市だ」
「あそこには知識の木が茂っている」
「人々の師たる人物が生まれ出るところ、かつ、目指すところだ」
「学者や宗教者がたてこもる城とも呼べるところだ」


口々に人々が言うクライストミンスターの感想に、ジュードもまた憧れを抱き
「あそこは、ぼくにふさわしい場所だろう」
と思い始める。

 鳥追いをやっていて、害鳥のカラスにさえ餌をやってしまうような性格だから、ジュードには商売は向かない。ちょっとシャイだが先生もむいてそうだ。しかしどんなに渇望しても学問の道は彼に開かれない。

 そんな時養豚業を営むアラベラから、豚の陰茎を投げつけられる。肉体的快楽を求めるアラベラの登場として、陰茎は露骨な比喩だ。世間慣れしていない彼は、偽の妊娠話にあっさりひっかかり結婚。これがつまずきの始まりだ。
「彼の理性や意思をまったくかまわず、彼のいわゆる高邁な目的など問題にもしないようで、ちょうど、手荒な教師が生徒の襟首を掴んで引っ立てていくように、一人の女の抱擁に向かって彼を引きずっていくのだった。その女にはなんの尊敬も抱かず、また、その女の生活には、郷里以外、彼の生活となんの共通点もないというのに。」

 この後ジュードは憧れの従姉スー・ブライズヘッドと出会うが、彼女と彼の結婚のタイミングが合わなかったことで、この先タイミングがずれ続ける。そして教職を目指すスーに、ジュードがリチャードを紹介したことで、四角関係は見事完成。リチャードも未だ聖職に就けず、挫折した者の一人である。

想いのままに行動したいが規律に縛られるジュード&スー
想いのままに行動するアラベラ
4人中一番の“大人”リチャード 

 物語を振り回していくのはアラベラだ。小説としては悪女の役回りだが、現代感覚なら最も共感しやすいキャラクターだろう。翻弄されるジュードとスーがダブルヒロイン、リチャードはむしろ被害者だ。恋の邪魔者たるアラベラが消えた所で、スーとジュードの結婚準備は整った!ところで上巻は幕。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。


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最終更新日  February 19, 2024 12:00:24 AM
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