凍えたココロ

Thought to a ring...

シャワーを浴びる時以外は

いつも指輪が其処に在る。

この指輪は祖母のもの。

サイズが合わなくなったからと

貰った、祖母からの指輪。

正体は　『結婚指輪』

祖父は今でもずっと結婚指輪を

左手薬指にはめている。

そして其れに相対する指輪は

私の左人差し指に在る。

時々、外して此のプラチナリングを

眺める。眺める。眺める。

すると涙が　はらりと　落ちる。

船乗りの祖父が外国へ行く度

祖母の心を支えたであろうリング。

魚雷に襲撃され　祖父の船が沈没した

その時も　支えとなった　リング。

祖父の心友が　目の前で海に沈んだ時

祖父の左薬指に在った　リング。

その相方を　私は　自分の指にはめている。

祖母が病に侵され、心も殺られ

白い病室の壁に　話しかけていた時にも

はめられていた　リング、リング。

巡り廻って私の指に納まったこのリング。

歴史の重いこの指輪を　私は甘んじて受け

祖父母の歴史を思い出す。

とてもロマンティックな出遭い、結婚。

船乗りの為　年に３～４回しか

日本に戻ってくる事のできない　祖父。

その港へ　船を乗り継いで向かう祖母の想い。

ムラサキ色の空を見たのであろうか。

アカネ色の空も見たのであろうか。

沈丁花の花が咲き　馨しき芳香を放つ頃

金木犀の花開き　尊い芳香を放つ頃も

祖父と祖母の指に在った指輪。

そして私はまた　涙を落とす。

このしょっぱい　涙で

あらゆる　大きな大きな障害も

いつか消えますようにと

私の周りのみんなが　

幸せになれますようにと

幾千もの　苦しみを共に培ってきた

指輪に託す。

細やかな傷はあれども、

祖父母の時代のプラチナリングは

輝きを絶やさない。

私の温かな　救いを呼ぶリング。

消えないでおくれ

消えないで

消えないで

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