薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
薄桜鬼 薔薇王腐向け転生昼ドラパラレル二次創作小説:◆I beg you◆ 1
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 10
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
黒執事 平安昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:蒼き月満ちて 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
F&B×天愛 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 1
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事 BLOOD+パラレル二次創作小説:闇の子守唄~儚き愛の鎮魂歌~ 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
天上の愛地上の恋 大河転生昼ドラ吸血鬼パラレル二次創作小説:愛別離苦 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 2
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 3
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薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD 帝国ハーレクインロマンスパラレル二次創作小説:炎の紋章 3
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PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 1
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YOIヴィク勇火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 1
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YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
火宵の月 異世界ハーレクインヒストリカルファンタジー二次創作小説:鳥籠の花嫁 0
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
F&B×薄桜鬼 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:北極星の絆~運命の螺旋~ 1
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・愛の螺旋 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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素材表紙は、湯弐様(ID:3989101)からお借りしました。「火宵の月」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます、ご注意ください。「ルドルフ様、どうしてもあなた様にお会いしたいという方がいらっしゃって・・」「わたしには会う気がないと、言っておけ。」「は、はい・・」 侍従が慌てて執務室の前から立ち去ったのを確かめた後、ルドルフは有匡達の方に向き直った。「話の続きをお願い致します。」「わかりました。」 有匡は軽く咳払いすると、話を続けた。「大政奉還が起き、今まで信じて来たものが大きく揺らぎました。国元の父からは、このままだと近々戦が起きると、文で予言めいたものを書いていました。そして、その予言は的中したのです。」 翌1868(慶応四)年、鳥羽・伏見で約一年半も続く戊辰戦争が勃発した。 会津・桑名藩、そして新選組をはじめとする旧幕府軍は、長州・薩摩藩をはじめとする新政府軍に大敗を喫し、北上しつつ戦を繰り返した。「会津は、新政府軍から恨みを買い過ぎました。新政府軍が会津に攻め込んだ時、足手まといにならぬようにと、城に避難できなかった者達は、自ら死を選びました。わたしの父と、妻の家族もそうでした。」 江戸を出て甲府、宇都宮、そして会津へと向かった有匡と火月が待っていたものは、夥しい同胞達の血で染まった故郷だった。 半鐘が鳴り響く中、二人が火月の実家に行くと、そこは不気味な程静まり返っていた。「父様、母様、姉様!」 火月が屋敷の中に入ると、そこには自害した彼女の両親と姉の姿があった。「いやよ、姉様、目を開けて!」 絶命した姉の手には、火月に結婚祝いとして贈ろうとしていた南天の簪が握られていた。「火月の家族の骸を清め、屋敷に火を放った後、わたし達はすぐに父の元へ向かいました。父は、腹を切った後に長い間苦しんでいたのでしょう。自室の畳の上には血の跡が点々とついていました。」 有匡は、そう言葉を切った後、気持ちを落ち着かせる為に紅茶を一口飲んだ。「父を見た時、もう彼は助からないとわかりました。だから、わたしはこの手で、父の命をこの手で絶ちました。死に間際、父はわたしに“ありがとう”と言って、息絶えました。」 有匡はルドルフに全てを話すと、机の上に置かれていた刀を鞘から抜いた。 その刃は、美しい輝きを放っていた。「長い間所在不明となっていたので、刃こぼれしているのだろうと思っていましたが、綺麗な状態になったまま見つかって良かったです。きっと父の魂が、わたしとあなた方をひき逢わせてくれたのでしょうね。」「日本には戻らないのですか?」「はい。戦が終わった後、わたし達は二度と故郷の土を踏まぬと決め、全てを捨てて来ました。」「そうですか。」「喪ったものは取り戻せませんが、これからは新しい家族と築く未来が待っています。」 そう言った有匡は、刀身を鞘に納めた。「皇太子様、父の形見をわたしに戻して下さった事を、心から感謝致します。そして、この懐剣も。」 有匡と火月がホーフブルク宮殿から去った後、ルドルフは自分の隣で涙を流しているアルフレートにそっとハンカチを手渡した。「すいません・・あの方達が、今までどんな思いで生きていたのかと思うと・・」「お前は、優し過ぎる。」 その優しさに―彼の優しさにルドルフは幾度も救われて来た。 だが、その優しさは時に彼自身を傷つける。「ルドルフ様、あの・・」 ルドルフが突然自分に抱きつき、唇を塞いで来たので、アルフレートが思わず彼の方を見ると、彼はそっとアルフレートの頬の傷を撫でた。「あ、あの・・」「今、ここで抱いてもいいか?」「いけません、そんな・・」 人払いされているとはいえ、ここは皇太子の執務室である。 いつ誰かが入って来てもおかしくない場所なのに、ルドルフは欲望の赴くままにアルフレートを抱こうとしていた。「せめて、夜まで・・」「待てない。」 ルドルフはそう言うと、アルフレートの唇を再度塞ぎ、彼の首を強く吸った。「あ・・」 項に赤い痕をつけるだけで甘く喘ぐアルフレートを見たルドルフは情欲の炎に煽られるかのように、彼の華奢な身体を執務机に押し付けた。「な、なにを・・」「ここで抱く、と言っただろう?」 ルドルフはアルフレートの法衣の裾を捲り、彼のスラックスを下着ごと剥ぎ取ると、そのまま彼を己のモノで貫いた。「あぁっ!」 何かが切れる音と共に、アルフレートの肉壁がうねり、ルドルフを締め付けた。「痛い・・あぁっ!」「アルフレート、愛している・・」 ルドルフの律動が激しくなる度に、アルフレートが首に提げた十字架が執務机の角に当たり、まるで二人の罪を責めるかのようにカチャカチャと音を立てた。「もう限界だ・・」「あ、あぁっ~!」 己の中にルドルフの欲望が吐き出されるのを感じながら、アルフレートは意識を手放した。「ルドルフ、入るぞ。」 ヨハン=サルヴァトールがルドルフの元へと向かうと、当の本人は涼しい顔をして執務に励んでいた。 だが、いつも彼が隙なく着込んでいる軍服の襟元が少しだらしなく開いている事に気づいた。「どうした、大公?」「さっき女官達がお前の縁談について噂をしていたぞ。お前、これからどうするつもりなんだ?」「どうする、とは?」「俺が何を言いたいのか、わかるだろう?」「わたしは、アルフレートの手を離すつもりはない。」「ルドルフ、あいつはお前とは違う。」「話はそれだけか?」 ルドルフはそう言うと、執務室から出て行った。「ん・・」「まだ休んでいろ、今日は少しお前を苛め過ぎた。」 寝室へと入ったルドルフは、寝台の中に横たわるアルフレートの黒髪を優しく梳いた。「ルドルフ様、あの・・」「アルフレート、これは何だ?」 ルドルフがそう言いながらアルフレートに見せたのは、青い小瓶に入った透明な液体だった。「あ、それは・・」 それは、自分の為に処方された“特別な”薬だった。 アルフレートが小瓶を見て少し動揺したのを見たルドルフは、意地の悪い笑みを浮かべながら小瓶をスラックスのポケットの中にしまった。「また後で来る。」「ルドルフ様・・」 慌ててアルフレートは寝台から起き上がろうとしたが、腰の鈍痛に襲われて思わず顔を顰めた。 それを見た部屋の主は、クスリと笑った後そのまま寝室から出た。「お兄様、アルフレートを何処に隠したの!?」「何だヴァレリー、藪から棒に。」「とぼけないで下さいな!女官達が、アルフレートをお兄様が何処かへ隠したのを見たと言ったのを聞いたんですからね!」王宮内には常に人の目が光っている事をルドルフは失念していた。「アルフレートは今、風邪気味でわたしの部屋で休んでいる。お前に風邪がうつったら大変だからと、黙っていたんだ。」「まぁ、そうでしたの!?じゃぁアルフレートの風邪が治ったらお見舞いに行きましょうね、フラン!」 ルドルフが吐いた嘘を信じたヴァレリーは、フランと共にルドルフの前から去っていった。「いらっしゃいませ・・」 小瓶を売っていたのは、ウィーン市内にある、専門店だった。 店員と思しき初老の男はルドルフの姿に気づいた途端、慌てて店の奥へと消えてしまった。「まぁ皇太子様、このような場所にいらっしゃるなんてお珍しいこと。」 男と入れ替わりにルドルフの前に現れたのは、ブルネットの髪を揺らした、妖艶な美女だった。「わたしはこの店の主の、ルイーセと申します。何かこの店にご用でしょうか?」「これの正体を知りたい。」「避妊薬ですわ。売春街の女達にとっては、生活必需品のひとつですのよ。」「そうか、邪魔をしたな。」「またのお越しをお待ち申し上げておりますわ。」 専門店の主・ルイーセは、肩を怒らせながら店を出て行ったルドルフを静かに見送った。 その日の夜、アルフレートが自室で休んでいると、そこへルドルフがやって来た。「ルドルフ様、どうかなさいましたか?」「わたしを騙したのか、アルフレート。」 そう言ったルドルフの蒼い瞳は、怒りで滾っていた。「この小瓶の事を調べて来た。避妊薬だと、この小瓶を売った店主は言っていた。お前は、わたしとの子が欲しくないのか?」「そ、それは・・」「まぁいい、この避妊薬はもうお前には必要ないからな。」「え・・」 ルドルフは、アルフレートを寝台の上に押し倒した。「このまま、お前を朝まで抱く。わたしを騙した罰だ。」 ルドルフはアルフレートの夜着を剥ぎ取ると、乱暴に彼の足を割り、己の欲望を彼にぶつけた。「あっ、もう、これ以上は・・」「駄目だ、まだ足りない。」 全てが終わった後、アルフレートは寝台の中で横たわった。 ルドルフはそっと、アルフレートの薄い下腹を撫でた。「これから毎日、お前を抱く。」「ルドルフ様・・」「お前はわたしのものだ、決して忘れるな。」 そう言ったルドルフの蒼い瞳は、狂気で少し濁っていた。 その日から、ルドルフは時と場所を選ばずにアルフレートを抱いた。「ト・・アルフレート!」「すいません、ボーッとしていました。」「最近、忙しかったからねぇ。余り無理をしないようにね。」「は、はい・・」 アルフレートはアウグスティーナから出て、救護院へと向かう途中に酷い眩暈に襲われ、道端に蹲ってしまった。「大丈夫ですか?」 アルフレートにそっと声を掛けたのは、火月だった。「すいません、ご迷惑をお掛けしてしまって・・」「いいえ、困った時はお互い様ですよ。」 火月はそう言うと、アルフレートにレモネードを手渡した。「最近暑くなってきましたから、少し貧血を起こしてしまったみたいですね。」「ええ、そうみたいです・・」 火月に礼を言って、アルフレートが王宮に戻ると、廊下で彼はヨハンと会った。「お前、酷い顔をしているぞ、どうした?」「え?」「大公、どうした?」 ルドルフの声を聴いた時、アルフレートは気絶して廊下に倒れた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年11月04日
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※BGMと共にお楽しみください。「火宵の月」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「皇太子様だ!」「な、何と・・」「陛下、すぐに皇太子様をお止め致しませんと・・」「よい、あの子の好きにさせてやれ。」オーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ=カール=ヨーゼフは、次々と犬を射っては他の選手達を圧倒してゆく息子の姿をロイヤルボックスから見ていた。有匡はそんなルドルフの姿を見ながら、他の選手達と犬達の動きに注意していた。(こちらが今二点・・あちらが四点・・逆転するには、向こうに居る三人の頭と首を狙わねば・・)有匡が鏑矢を番えてルドルフの後方に居る二人の選手達に向かって鏑矢を放つと、鏑矢はそれぞれの首と頭に当たり、鏑矢が当たった選手達は戦線離脱した。(よし!)残りは後一人―有匡がそんな事を思っていると、風を切る音と共に、有匡の首めがけて鏑矢が飛んで来たので、彼は咄嗟に右腕でその鏑矢を払った。するとすぐ傍であからさまな舌打ちが聞こえたので、有匡が周囲を見渡すと、ルドルフと視線がぶつかった。ルドルフは、すぐに有匡から視線を外し、残っていた選手の頭を射った。(これで、五対四か。一発逆転するには、どちらかが頭や首を射つしかない。)有匡がそんな事を思いながら馬を走らせていると、ルドルフがわざと馬をぶつけて来た。(この・・)馬をぶつけられた衝撃でバランスを崩し落馬しそうになったが、何とか体勢を立て直し、勝ち誇っているルドルフの喉元に有匡は鏑矢を射ち込んだ。虚を突かれ、怒りに滾ったルドルフは、有匡の死角に入った。(このままで済まさんという事か。五対五でわたしと彼がどうやって決着をつけるのかを皆固唾を呑んで見守っているから、下手に動けんな・・)有匡がそんな事を思いながら周囲を見渡していると、甲高い乳幼児特有の泣き声と、犬が吠えるような声が聞こえた。いつの間に入り込んでしまったのか、五歳位の女児が泣き叫びながら涎を垂らしている犬から逃げていた。(一か八か、やるしかない!)有匡は大きく深呼吸をすると、鏑矢を番え空に向かってそれを放った。鏑矢は放物線を描いて女児に襲い掛かろうとしていた犬に当たった。有匡は泣き喚く女児を馬上から抱き上げ、母親の元へと帰した。「先生、お疲れ様でした。」「全く、面倒な事に巻き込まれたな。さっさと帰るぞ。」「はい。」天幕の中で有匡が武家装束から私服へと着替えていると、そこへエリザベート付の女官が入って来た。「皇妃様がお呼びです、すぐに来なさい。」「はい・・」どうやらエリザベートは有匡と火月を気に入ったらしく、ウィーンに工房と住居を移すよう二人に言って来た。「お言葉ですが皇妃様、わたし達は都会よりも、田舎暮らしの方が性に合っていますので・・」「あら、あなたの刺繍の腕を田舎で埋もれさせるには勿体ないわ。」「ですが・・」「あなた達もそう思うでしょう?」エリザベートはそう言うと、女官達を見た。「え、えぇ・・」「皇妃様の仰る通りですわ。」女官達は互いに目配せし合いながら、エリザベートの言葉に賛同するしかなかった。「ルドルフ、あなたはどう思って?」「わたしも母上に賛成致します。それに、わたしもあなたに興味が湧いた。もっとあなたの事を知りたいです。」「は、はぁ・・」(最初から、わたし達には拒否権はないという事か・・)「謹んで、お受け致します。わたくしのような身分卑しきものに目をかけて下さり、有り難き幸せにございます。」こうして、有匡と火月は住み慣れたバイエルンの片田舎を離れ、ウィーンで暮らす事になった。「ねぇ火月ちゃん、顔色悪いんじゃない?」「え、そうかな?」引っ越しの準備に追われる中、火月は手伝いに来ていたパン屋のおかみさんからそう言われ、鏡で己の顔を見ると、そこには蒼褪めた顔をした女の顔が映っていた。最近、立ち眩みがしたり、身体の怠さを感じたりするのは、夏の暑さの所為だと思っていた。「ねぇ、あんたもしかして妊娠しているんじゃないの?」「え・・」「あたしの知り合いに腕の良い産婆が居るから、一度診て貰った方がいいよ。」「はい、そうします。」火月はパン屋のおかみさんから紹介された産婆に診て貰うと、妊娠三ヶ月だという事がわかった。「確かか?」「はい。すいません、こんな時に。」「謝るな。これから、忙しくなるな。」「はい・・」ウィーンへと移り住んだ有匡は、身重の火月の為に仕事に励んだ。「それにしても、今こうして先生と幸せに笑って生きているのが嘘みたいですね。」「あぁ、そうだな・・」有匡が火月とそんな事を話していると、外のノッカーが誰かに叩かれる音がした。「わたしが出る。」有匡が居間から出て玄関ホールへと向かい、用心深くドアを開けると、そこにはオーストリア=ハンガリー帝国の軍服を着た男が立っていた。「皇太子殿下が、お二人に王宮へ来るようにとの仰せです。」「わかりました、すぐに参ります。」有匡と火月がホーフブルク宮殿へと向かうと、馬車から降りた二人をルドルフの侍従・ロシェクがスイス宮へと案内してくれた。「皇太子様、火急の用とは、一体何でしょうか?」「実は、このような物をイシダから預かったのだ。」ルドルフがそう言って二人に見せた物は、一振りの刀と脇差、そして懐剣だった。「これは四年前の万博の際、日本が出品した物だそうだが・・何か心当たりはあるか?」「はい。この脇差と刀は、わたしの亡き父の物でした。そしてこの懐剣は、妻に婚儀の証として贈る筈のものでした。長らく戦の混乱で所在不明となっていましたが、こうして手元に戻って来てくれた事を、嬉しく思っています。」「戦?イシダから、自分達の国は八年前に大規模な内戦が起きたと聞いているが・・」「その戦で、わたしと妻はそれぞれ家族を亡くしました。父は逆賊の汚名を着せられるのを良しとせず、自害して果てました。」有匡はそう言って言葉を切った後、涙を堪えた。彼の隣に座っていた火月は、そんな夫の姿を見て、そっと彼の背を優しく擦った。「申し訳ありません、夫の代わりに僕がお話致します。」火月はそう言うと、深呼吸して有匡と彼の父・有仁と初めて会った日の事を話した。「夫と僕は、それぞれ異人との混血児として生まれました。幼い頃、金髪紅眼という人とは違う容姿の所為で僕は苛められていました。その日も、近所の子供達から石を投げられて泣いていました。そこを、夫と義父が通りかかって助けてくれたのです。」火月は今でも、有匡と有仁に出会った時の事を憶えている。化猫、鬼の子と罵られ、石を投げつけられて泣いていた時、丁度出稽古先から帰宅途中の二人に助けられたのだった。「義父は、蘭方医としても学者としても、人としても立派な方でした。義父と夫は、僕の事を一人の人間として接してくれました。その時僕が六歳、夫が十八歳の時でした。」「え、ちょっと待ってください。という事は、お二人は今お幾つなのですか?」火月の話をルドルフの隣で聞いていたアルフレートは、そう二人に尋ねると、有匡は苦笑しながらこう答えた。「わたしが三十七、妻が二十五となります。年が十二も離れているので、最初妻の事を実の妹のようにしか思っていませんでした。妻と再会したのは、わたしが彼女の姉と見合いをした時でした。」火月には、腹違いの兄と姉が居り、その姉・美代と年が近い有匡との間に縁談がまとまるのはごく自然の流れだった。気立てが良く、美しい美代と初めて会った有匡が他愛のない会話をしていると、隣室に控えていた火月が乳母の制止を振り切って二人が居る部屋へと乱入し、こう叫んだ。「僕が、先生のお嫁さんになるの!」突然の火月の告白に、その場に居た者達は皆目を丸くしたという。「その時、わたしは彼女の言葉をただの子供の戯言と思っていたのですが、彼女のわたしに対する想いが真剣なものだと気づいたのは、わたしが二十二、妻が十を迎えた頃でした。」1862(文久二)年、会津藩主・松平容保は幕府から京都守護職を任命され、有匡や火月の異母兄・静馬をはじめとする藩士達と共に上洛する事になった。「僕も行きます!」「我儘を言うな。」「そうだぞ火月、何故待てない?」「だって、このまま先生と別れたら、一生会えない気がして・・」そう言って泣きじゃくる火月に根負けし、二人は彼女を京へ連れてゆく事にした。会津から京への長旅は、十を迎えたばかりの火月にとって過酷な旅だったが、彼女は弱音ひとつ吐かなかった。「京での日々は、色々と辛い事が多かったですが、楽しい事の方が多かったです。」流石に男ばかりの場所に火月は置いてはいけないので、有匡は有仁の知人に火月を預かって欲しいと頼んだ。京は、当時幕府要人の暗殺や“天誅”などと称した過激派浪士達の闇討ちなどが横行していたが、有匡達や江戸からやって来た壬生浪士組こと新選組が過激派浪士達を取り締まった。1864(元治元)年、新選組がその名を全国に轟かせた“池田屋事件”から一月後、長州藩が挙兵し、会津・桑名・薩摩藩と新選組が長州藩を迎え討った。会津・桑名藩兵と長州藩兵が衝突し、長州藩が御所に発砲し、会津・桑名両藩は劣勢に立たされたが、薩摩藩の援軍によって形勢が逆転し長州藩に勝利した。「戦闘は一日で終わりましたが、その後の長州勢の放火や残党狩りの為に会津・桑名が放火した所為で、京の街は炎に包まれました。わたし達に待っていたものは、全てをなくした人々からの怨嗟と憎悪の誹りでした。」有匡はそう言った後、喉を潤す為に紅茶を一口飲んだ。「それまで、わたしは京の治安を守る事に誇りを持っていました。しかし、焼け野原となった京の街を見た時、己の中の正義とは何なのかを考えてしまいました。」「その時、火月さんは何処に?」「義父の知人の計らいで、大坂に避難しておりました。」“禁門の変”と呼ばれたその戦から数月後、二人は再会した。「暫くは穏やかな日々を送っていました。三年後、幕府が倒れるまでは。」1867(慶応三)年十月十四日、徳川慶喜が鎌倉の世から約七百年握っていた政権を明治天皇に返上する、“大政奉還”が起きた。「その日から、足元の薄氷が音を立てて崩れてゆくような気がしました。」有匡がそう言った時、誰かがルドルフの執務室のドアをノックする音が聞こえた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年09月05日
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素材表紙は、湯弐様(ID:3989101)からお借りしました。「火宵の月」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。(どうして、こんな事に・・)土御門有匡は、何度目かの溜息を吐いていた。「先生、お支度、出来ましたか?」そう言いながら急ごしらえで設営された天幕に入って来たのは、有匡の妻・火月だった。「うわぁ・・」「どうした、火月?」「すいません・・いつもの洋装姿も素敵ですが、武家装束姿の先生も素敵だなぁって・・」「馬鹿を言え。さっさと終わらせて、帰るぞ。」「わかりました。」有匡と火月は、バイエルンにある小さな町で、刺繍職人として生計を立てて暮らしていた。遠い異国の地に流れ着き、右も左もわからぬ中で、二人は互いを支え合って生きていた。静かな暮らしを送っていた彼らに、まさに青天の霹靂ともいえる出来事が起きた。それは、有匡がある貴族に納品したタペストリーを、オーストリア=ハンガリー帝国皇后・エリザベートが気に入り、急遽有匡と火月はウィーンへ向かう事になったのだった。「あなたが、このタペストリーを作ったの?」「はい、皇妃様。」「もっと近くに来て頂戴。」有匡がエリザベートの前へと向かうと、彼女は優しく彼に微笑んだ。「まぁ、美しいわね、あなた。」「ありがとうございます、皇妃様。」「あなた達は日本から来たの?」「はい。バイエルンに流れ着き、地に足の着いた生活を送るまで長い年月を要しましたが、こうして皇妃様のお目にかかれて光栄です。」「謙虚な人ね。気に入ったわ。」エリザベートとの謁見を終えてすぐに帰ろうとしていた有匡と火月だったが、その場に居合わせた日本大使館の職員の思い付きに、二人は巻き込まれてしまった。「皇妃様、実は今週末、フロイデナウ競馬場で犬追物を行なう予定でして・・」「まぁ、それはなぁに?」「我が国の馬術競技のひとつでして、竹垣で馬場を囲い、そこへ放った犬を木製の矢で射るものです。」「面白そうだわ、是非見てみたいわ!」「ですが、問題がありまして・・出場する選手が少なくて困っております。」その職員はそう言いながら時折有匡の顔を見ていたが、有匡は気づかなかった。そんな彼に災難が降りかかったのは、エリザベートの鶴の一声だった。「まぁ、じゃぁあなたが出ればいいじゃないの、アリマサ。」「え?」「あなた、馬術は出来て?」「はい。」「なら決まりね。」「は、はぁ・・」一国の皇后の頼みを断る事が出来ず、有匡は犬追物に出場する羽目になってしまった。「先生、どうします?」「どうするも何も、もう決まった事だからな。まぁ、さっさと終わらせて家に帰ろう。」「は、はい・・」そして、フロイデナウ競馬場で犬追物が開かれ、そこは多くの観客達でひしめき合っていた。「先生、ご武運を。」「あぁ、行って来る。」有匡は火月とキスをした後、大きく深呼吸し、天幕から出た。熱気と歓声に包まれる中で、犬追物が始まった。「面白そうだな、アルフレート。」ロイヤルボックスでオーストリア=ハンガリー帝国皇太子・ルドルフはそう言いながらオペラグラスで犬追物を興味深そうな様子で見ていたが、彼の隣に座っている宮廷付司祭・アルフレート=フェリックスは、終始浮かない顔をしてた。「どうした?」「いえ・・あの犬達が可哀想で・・」「イシダが、“矢が犬に当たっても死ぬ事はない”と言っていただろう?」「ですが・・」「ここで見ているだけではつまらないな。」「え、ルドルフ様?どちらへ・・」ルドルフが突然ロイヤルボックスから出て犬追物の選手が集まる天幕の方へと向かっていったので、アルフレートは慌てて彼の後を追った。「こ、皇太子様・・」「わたしも参加しよう。ただ見ているだけではつまらないからな。」突然のルドルフの登場にその場に居た者達は驚いたが、ルドルフの参加を断る訳にもいかず、イシダはハンカチで汗を拭いながら、彼の参加を認めた。同じ頃、有匡は次々と犬を射ち、その度に観客席から歓声が上がるのを感じていた。(もうそろそろ終わりか・・)そんな事を有匡が思っていると、観客席からの歓声が一段と大きくなっている事に気づいた。(何だ?)有匡が周囲を見渡すと、一人の青年が騎乗して会場に入って来る所だった。癖のある金褐色の髪に、皇后譲りの美貌を持ったその青年の蒼い瞳とぶつかった時、有匡はこれから厄介な事になると思った。だが―(相手が誰であろうと、負ける気がしない!)有匡は、生来負けず嫌いな性格だった。にほんブログ村二次小説ランキングーー
2024年08月06日
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