平成30年5月9日(水)
詩集「測量船」:三好達治(70)
十一月の視野に於て
倫理の矢に命って殞ちる倫理の小禽。風景の上に忍耐
されるそのフラット・スピン!
小禽は叫ぶ。否、否、否。わたしは、私から堕ちる血を私
の血とは認めない。否!
しかし、倫理の矢に命って殞ちる倫理の小禽よ!
★
雲は私に告げる。――見よ! 見よ! 如何に私が常
に変貌するところのもの、飛び去るところのものである
か。私は自らを否定する。実に私の宿命から、かく私は
私の生命を旅行し、私自らの形象から絶えず私を追放す
る。否!…… 否!……
それに私は答へる。――君は、追求することによって
建築し、建築することによって移動する。ああ智慧と自
由の、羨望に価する者よ! ただ、しかしながらその宿
命を以て告げるところの、君や、常に敗北の影ある旅行
者よ!
(つづく)
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