平成30年5月10日(木)
詩集「測量船」:三好達治(71)
私と雪と(1)
今日私をして、なほ口笛を吹かせるのは何だろう?
古い魅力がまた私を誘った。私は靴を
穿
いて、壁から
銃を下ろした。私は
栖居
を出た。折から雪が、わづかに
眩 しくもつれて、はや遅い午後を 降り 重ねてゐた。犬は
しかし思ひ直してまた
鎖
にとめた。「私は一人で行か
う。」そして雪こそ、
霏々
として織るその軽い織ものか
ら、私は路を教へた。私はそれに従った、――
寧
ろいさ
んで。
(つづく)
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