平成30年5月23日(水)
詩集「測量船」:三好達治(90)
パン(2)
私は崖に立って、 候兵 のやうにぼんやりしてゐた
海、古い小さな海よ、人はお前に身を投げる、私はお前
を眺めてゐる
追憶は帰ってくるか、雲と雲との間から
恐らくは
万事休矣
、かうして歌も
種切
れだ
艫
を見せて、それは私の帽子のやうだ
私は帽子をま深にする
さあ帰らう、パン
私のサンチョパンザよ、お前のその短い脚で、もっと貴
族的に歩くのだ
さうだ首をあげて、さう
尻尾
もあげて
あわてものの 蟹 が、運河の水門から滑って落ちた
その水音が気に入った、――腹をたてるな、パン、あれ
批評だよ
(完結)
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