詩集「バタフライ効果」(3)
著者:金指安行(下田市在住、著者の第三歌集)
発行:二○一八年十一月三十日
発行所:ルネッサンス・アイ
発売元:白順社
手紙
昨夜は皆既月食
地球の落す影が段々と光を狭め
とうとう最後の光芒まで覆ってしまうと
月は透きとおったクラゲのように
輪郭まで消してしまった
魔術師か
一瞬のうちに鳩を隠した
そう思えるほど あっけない消滅だったが
かく言う私の輪郭も
馬齢とともに輝きを削がれて
自分では気づかないまま
空っぽに透けていくのかも知れないね
二人でいる時は
私はあなたの満月のような心を
私の影で覆ったりはしない
太陽と地球のように
程よい距離、程よい温もりを保って
あなたののびやかな風景を
いつまでも楽しんでいたいから
今夜
月の光はまだ見えないよ
遠慮がちな星たちが
二つ三つ、一つ二つ、暗い空で瞬いている
内村鑑三「一日一生」より 歓喜と希望 2022.03.15
詩集「バタフライ効果」(34) 仮想現実 2019.04.02
詩集「バタフライ効果」(33) 鏡 2019.04.01