詩集「バタフライ効果」(7)
著者:金指安行(下田市在住、著者の第三詩集)
発行:二○一八年十一月三十日
発行所:ルネッサンス・アイ
発売元:白順社
一本の糸
不思議な光景を私は見た
池には三匹の金魚がいる
一匹が体調を崩して
横になったまま漂っていた
あろうことか
後の二匹が両側から寄り添っている
そして普段の真っ直ぐな姿勢にもどると
三匹はそっと離れていった
いつもの諍いなど棚上げにして
死にかけている仲間を
なんとか呼び戻そうと必死なのだ
でもまた傾きはじめる
両側からまた寄り添っていく
取るに足らないと思った物が
人のような優しさを見せている
私は天啓をうけたような厳かな気持ちになった
燃え尽きていく命が
二つの命に最後のサヨウナラをつげている
その痛みが透明な哀しみとなって
二匹から溢れ出るのだ
私は三つの命が
目に見えない一本の糸で繋がり
眺めている私にまで延びてくるのを感じていた
病んだ魚は
とうとうぽっかりと浮かんでしまった
命の重みのような何かが
池の中から昇ってきた
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