今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

2019.03.11
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詩集「バタフライ効果」(12)

著者:金指安行(下田市在住、著者の第三詩集)

発行:二○一八年十一月三十日

発行所:ルネッサンス・アイ

発売元:白順社

不動

ある夏 戸隠の

忍者屋敷に出かけたことがあった

水平に走る廊下を

すたすたと歩いていくと

いきなり部屋が傾いて見えた

一瞬 私は目を疑った

歩いてきた廊下と

肉眼では斜めにしか見えない部屋との

日常では考えられない

線の落差

はじめから

座敷だけは斜めに造られていたのだが

廊下も部屋も水平なものと信じているから

一瞬 足が ( すく ) んだのだ

その思わぬ線の歪みは

私にひとつの映像を思い出させた

月の平面に

今しも翡翠色の地球が昇ってくる

見たこともない人の魂が

ゆっくり昇って来たかのように

月から見れば

地球の自転は一目瞭然

だが私たちは

この星も太陽を巡っているのだと知りながら

いつの間にか信じているのだ

不動という幻影を

今は秋

澄み切った蒼空のもと

今しも重心を操りながら

海を渡っていくサーファーがいる






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最終更新日  2019.03.11 07:58:58
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