詩集「バタフライ効果」(16)
著者:金指安行(下田市在住、著者の第三詩集)
発行:二○一八年十一月三十日
発行所:ルネッサンス・アイ
発売元:白順社
井戸換え
水道のない頃は
各家に井戸があって
地元の青年団が年に一度掃除に来ていた
三人一組で
空になるまで水を汲み上げ
そのあと一人が井戸に入って
コケ類を掻き落とす
底にたまった泥の水を掻い出しに掛かる
塞がった井戸に出会って
ふとそんなことを思い出した
歳のせいか
最近発見が少ないのである
脳の表面に怠惰がじわじわと触手を広げ
無為というコケになって
言葉の回路を狭めているようだ
使わないと
井戸水もいずれは枯れてしまうというから
綺麗な水が
絶え間なく滲みだすように
たまには井戸換えをしなくてはと思う
どこかで警鐘が鳴っている
段々その音が大きくなる
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