詩集「バタフライ効果」(17)
著者:金指安行(下田市在住、著者の第三詩集)
発行:二○一八年十一月三十日
発行所:ルネッサンス・アイ
発売元:白順社
手掛かり
いちめんの 薄 の野原で
人らしい影が立ち止まっている
夕方の光を浴びて
影のように薄くなったり
またはっきりと現れたりする
こんな所に投げ出されたら
誰だって戸惑うだろう
行く先は何処なのか
どこを目指して行けばよいのか
考えてみれば
みな似通っている
たまたまこの世に生み落とされて
偶然という風に運ばれ
時に抗いながら
自分の顔を探している
このうら寂びた風景のなか
行く手掛かりは有るのだろうか
影のような人の顔に
いつ目鼻は戻るのだろう
ふと見上げると
蜘蛛が一匹空を泳いでいる
下からでは
そう見えるのだ
あの虫でさえ
方向のない宙に浮かんで
確かな足掛かりを築こうとしている
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