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2011年05月29日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
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3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  6月上旬
3ヶ月以内株価予想 2100円~2300円

要点

・主力薬のエビリファイにより成長継続見込み。NC事業も利益貢献大。ただし15年の特許切れまでに後継薬の開発が必須。
・株価は需給的にも良好で底堅い推移継続の見込み。一方で積極的な買い材料も見あたらない。
・同業他社比では株式価値的な面では割安ながらも、営業利益率や配当性向の面で見劣り。
・M&Aやアライアンスによる販売規模の拡大を明確に描くことで、競争力を付けていく事が必要。


【企業概要】
昨年末にIPO。傘下に大塚製薬や大鵬薬品、大塚食品などの有力企業を抱える。グループにアース製薬(4985)も。売上の1/3を抗精神病薬「エビリファイ」が占めるが、15年には特許切れに。国内と海外との売上比率はほぼ半々。


【業績】
前期は増収増益。特に健康補助食品のNC関連事業の営業利益率が、売上の増加・円高による原価率低減・販管費の抑制により、前期の0.9%から7.1%と大幅に改善。医療関連事業においては主力のエビリファイが引き続きアメリカの医療制度改革の逆風の中でも成長が続くものの、円高により円ベースでの売上は減少。結果、2桁の増益となったものの会社計画は若干未達に。

今期も増収増益を見込むも小幅に止まる見通し。エビリファイに関しては共同販売の米社との契約により、今期からの取り分が4.5%増加。販売増と合わせて一段と利益率は改善の見込み。その他の分野でも引き続き販管費等の抑制に努める。

ただし研究開発費を惜しむわけにはいかない。特許切れ(パテントクリフの恐れ)が近づくエビリファイの後を継ぐ主力新薬開発が同社にとっての最優先命題である。そもそも上場もそのための資金獲得であるが、新薬開発は巨額の投資が必要だ。世界的に後発医薬品が幅を効かせてくる中で、新薬開発コストは一段と高くなる。

足下で後継薬と目されるうつ・統合失調症治療薬OPC-34712はアメリカでのフェーズ2試験に成功。また同社は否定しているものの、ビルゲイツ財団と組んで途上国での低価格薬の提供など、将来に対する布石ぬかりない。


12年3月期第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   295000
営業利益 31500
経常利益 35000
当期純益 23000

想定為替レート 1ドル=85円、1ユーロ=115円

同社は上半期に季節的要因のある企業であり、上半期でどれだけ稼ぎ出せるかが勝負である。第一四半期は震災などの影響もあってやや弱含むと見られるも、前期に比べて利益率は改善され、特段悪材料視されるような数字までにはならないと見る。

ポカリスエットなどは猛暑であれば販売量も増すが、今夏は節電によって室内温度が上昇することを考えると、熱中症対策等の観点からも特需が見込まれるものと思われる。このポカリを含むNC事業は利益率が高く、同社の稼ぎ頭であるため、影響度合いは大きい。

今期営業利益は研究開発費の積み増しにより1200億円と前期比2%増に止まるも、決算後に示した中期経営計画では更に2年後の14年3月期には2000億円と一気に利益の増加を加速する見込み。エビリファイの成長に因る部分が大きいが、米社との契約から同社の取り分が年々増加していく中で、達成確度は高そうだ。

ただ逆に言えば、エビリファイのパテントクリフ以後の不確定要素が強く、中期経営計画以後の事業年度の成長戦略は描き辛い。株価は概ね2014年までの業績は織り込んだと思われ、一段と上放れるには新薬の上市、大型のM&Aや業務提携といったインパクトのあるものが出てこないと、難しいだろう。

有利子負債は820億円で前期から431億円減少。現預金は3875億円で実質的な無借金。有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)も7.1%と、同業大手並の小ささ。IPOによる資金調達が大きな改善要因にもなった形。

流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は334.3%。フリーキャッシュフローは445億円の赤字。ただ970億円の預金預け入れがキャッシュフローの赤字の大部分を占めているため、問題無し。ファイナンスリスクは当面0と言って良いだろう。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額-現預金+有利子負債)は8759億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は1630億円であり、結果EV/EBITDA倍率は5.4倍となる。同業他社の平均値がおよそ7.4倍と見立てられるが、それらを元に計算した理論株価は2713円となり、現状の株価は事業価値分析上は割安と捉えられる。


【決算発表後のアナリスト評価】
JPモルガン 投資判断「Neutral」 目標株価2300円
中期経営計画は概ね妥当と見るが、株主還元策にはやや失望

みずほ証券「アウトパフォーム」 目標株価2450円


【株価推移】
公開価格2100円をわずかに上回る初値で値を付けた後は、しばらく同価格に頭を抑えられる格好で、割れた水準での推移が続いた。全体相場が比較的堅調推移だったものの、同社の持つディフェンシブ性が相対的に魅力に乏しかったこと、また同じ大型IPOの第一生命(8750)の上場後の株価推移が悪かったことの連想などが重石要因。

以後震災によって最安値1737円を付けたが、そこから株価は反転。ケガの功名で公募組の投げ売りが出尽くしに繋がり、その後は需給改善からスルスルと上値を取りに行く動きに。4/27のTOPIX算入を通過すると、益々需給は好転し、5/12には一転最高値2248円をマーク。

ただ決算後は失望感からやや値を落とす流れに。中期経営計画の強気見通しが一時的に好感されたものの、長くは続かなかった。


【テクニカル】
株価は公開価格2100円を下値に底堅い動きが続いている。更に下方には75日線、一目均衡表の雲が控えているため、底値は固いと見る。

一方で上値追いの手がかりが見えない点は否定できない。上値は25日線に抑えられ、MACDやストキャス、パラボリックは暗転しており、一目均衡表の遅行線も実線を下回ってしまった。日柄調整はまだ必要な局面。

ただし水準的にもここから改めて売るような材料は見あたらないため、雲の切り上がりに合わせて次第に上放れの動きが見えてくるものと見る。


【需給】
信用残高は上場来買いの多い状態が続いていたが、足下では売り長に転じてきており改善傾向。また公開価格割れ水準での推移が長く、2100円以下の価格帯出来高が膨らんでおり、一方で上値にはしこりが見あたらない状態。需給は良好と言える。


【同業他社比較】
同社の予想PERは14.4倍。PBRは1.0倍。今期予想営業利益率は10.3%、予想ROEは7.1%、予想配当性向は30.6%となっている。同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


武田薬品(4502)
国内製薬首位。積極的なM&Aで海外に展開し、国際競争力を付けている。特許切れの主力製品の落ち込みが響いて前期は減益。
予想PERは12.0倍、PBRは1.4倍。予想営業利益率は26.9%、予想ROEは12.0%。有利子負債は実質的に0。EV/EBITDA倍率は5.9倍。
利益率が高く、予想配当性向も56.8%と高い。無理なく業容を拡大しており、規模のメリットを生かした選択肢の多い戦略が採れる点でも有利。パイプラインには心許なさが感じられ、後発薬の追い上げに苦しめられるが、最悪期は脱した感。


アステラス製薬(4503)
製薬会社で国内2位。こちらも特許切れの主力製品の落ち込みが響いて減益。
予想PERは17.9倍、PBRは1.4倍。予想営業利益率は13.9%、予想ROEは7.9%。有利子負債0。EV/EBITDA倍率は6.3倍。
予想配当性向は71.3%と株主還元には積極的。昨年買収した米社の利益が今期から通年で寄与してくる。成長性はやはり武田に比べると劣るものの、規模の面からも引き続き攻勢をかける余地あり。


第一三共(4568)
製薬会社で国内3位。インド子会社で後発医薬品への進出を積極化。
予想PERは24.6倍、PBRは1.3倍。予想営業利益率は9.3%、予想ROEは5.3%。有利子負債比率は35.1%。EV/EBITDA倍率は8.7倍。
予想配当性向は93.9%とかなり高いものの、今期はランバクシーの業績反動減、各医薬品の販売権切れ、海外製薬会社買収に伴うのれん償却などにより減益見込み。


メルク(MRK)
アメリカ製薬大手。世界に販路があり、時価総額では武田の3倍強。
予想PERは9.4倍。予想PBRは1.8倍。予想ROEは20.4%。
2年前に買収したシェリング・プラウの収穫本格化。これによってパイプライン(新薬候補物質)が強化された上、事業の多角化、コスト節減効果が生まれた。成長への手綱を緩める気配は無い。


同業他社との比較では利益率や配当性向に弱み。その分成長余力は大きいが、株価的には概ね妥当な評価か。


【課題】
同業他社は海外の大手製薬企業を買収する事で、グローバルでの地位向上に力を入れている。同社も決算説明会などではやや歯切れは悪い感じながらも、M&Aや提携などの必要性を意識しており、この分野でも積極的な投資が図られていくことだろう。資金面でも投資余力はある。

問題はその方向性である。パイプラインの拡充か、後発医薬品などの販売力の確保か。世界的な流れでは後者の方が安定的な利益を確保できるものの、同社はNC事業という安定的な利益の源泉を既に確保しており理想的な体制が整っている。同社に関しては前者の方向性での世界的な拡大戦略を採っていくべきと見る。

一方他社との比較では製薬事業の利益率や株主還元の面では弱い。製薬事業の国内での販売を強化して為替感応度を低める、もしくはヘッジを駆使して利益の確保に努めるなどの必要性がありそうだ。

でなければ、将来的な研究開発の投資も難しくなり、生き馬の目を抜く製薬業界の中での出遅れが致命傷にもなりかねない。痛手を負う前に新薬を開発することが、製薬企業にとっての何よりの特効薬とも言える。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。





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Last updated  2011年05月29日 13時40分17秒
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