『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記

2015.10.17
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「これは経費ですか?」シリーズの短編を11月1日発行の「TACNEWS」で発表するのですが、

会計ネタではないため、おそらく角川文庫には収録しない予定です。

そして、専門分野ではない“マイナンバー”ネタということで、

事前に間違い等も見つけて頂きたいので、ここに期間限定で掲載したいと思います。

本シリーズの短編は普段からくだらない話ですので、ご期待はなさらないでください。


―――――――
『あいるさん、これは経費ですか?』シリーズ
「マイナンバー殺人事件!」

 僕はどうやったら人を殺せるのかを考えている。
 厳密にいうと、殺人事件の起こし方を考えている。
 ガチャリという音がして、僕はビクッと肩をふるわせた。会議室の入り口を見ると、入ってきたのは有明青海だった
「センパイも大変ですねえ。こんなところに一人でこもって」
 同情の眼差しで有明が言う。
「まあな」
「単なる殺人じゃありませんもんねえ。マイナンバーを使っての殺人事件。おそらく日本で最初の殺人事件ですよぉ、ヒヒヒ」
「そうなるかもな」
「それでどういう方法を考えているんでゲス。そりゃもう悪どいことばかり考えているんでしょうが。ヒヒヒ」
 ゲス顔で話しかけてくる有明。お前は一体どこの悪党の手下だ。
「いろいろと考えているさ。まずはマイナンバーが集まるところに潜入する」
「マイナンバーが集まるところ?」
「各役所やマイナンバー収集代行業者、そして一番の狙い目はセキュリティーが甘そうな会計事務所や社労士事務所だ」
「それで、そこに侵入してからどうするんです?」
「ターゲットのマイナンバー、12桁の数字を入手する。そして、インターネットにマイナンバーを入力してターゲットの住所や家族構成などを割り出し、一人でいる時間帯を特定してそこに忍び込む―――」
 僕は低い声で言う。
 ところが、有明からは気の抜けたため息が聞こえてきた。
「はぁ~。あの、話をストップしてもらっていいですか。ちょっと素人臭が強くて話にならないんですけどー」
「え?」
「もしかして、センパイ。マイナンバー1つで何でも情報が引き出せるとか思っていませんか?」
 え、違うのか?
「一元化された個人情報がどこかにあるわけじゃないんです。個人情報自体は自治体や国税庁、日本年金機構などバラバラに存在しているんです」
「でもそれはインターネットを使えば、簡単にアクセスできるんだろ?」
「簡単にアクセスして情報が引き出せたら、セキュリティーなんてないも同然……ていうかぜーんぜんないじゃないですか。あのですね、マイナンバーを使って個人情報にアクセスするには、政府の『情報提供ネットワークシステム』を通すしか方法がないんです。だからすぐに足がつきます。第一、情報提供ネットワークシステムのコアシステムに接続するためのインタフェースも今のことろ自治体とかにしかないですし、各情報保有機関をつなぐコアシステムに接続するには『霞が関WAN(政府共通WAN)』や『LGWAN(総合行政ネットワーク)』を通さなきゃならないんです」
 有明が何を言っているのか途中からほとんどわからなかったが、どうやらクリックひとつで何とかなる世界じゃないらしい、ということだけはわかった。
「えーと、そのカスミなんちゃらというヤツにネットからハッキングしてだな――」
「だ~か~ら~、『霞が関WAN』とかは社内LANみたいなものなんですから、そもそもインターネットじゃないんですってば」
 え、そうなの?
「インターネットとはつながっていないんですから、まったく別の方法を考えなくちゃいけません」
「……お前、詳しいな」
「有明は一応、事務所のシステム担当なんですから、それくらいのこと知ってますよん」
 そう言って、胸を張る。
 あ、“それくらいのこと”なんだ……。


<マイナンバー制度のシステムの主な流れ>

 自治体等にある各種業務システム → 中間サーバー → インタフェースシステム →(霞が関WAN/LGWAN)→ コアシステム →(霞が関WAN/LGWAN)→ 別の自治体等にあるインタフェースシステム → 中間サーバー → 各種業務システム → 個人情報


「だいたい、センパイの考えていることには穴がありすぎですよぉ」
 そうなのか?
 有明が僕の周りを歩き出す。
「ターゲットの住所や家族構成を割り出す? ふふふ、それならマイナンバーなんか使わなくても、今だって役所や会計事務所、会社の人事部とかに侵入すれば、各人の住所や家族構成ぐらい割り出せるじゃないですか」
 そうか。たしかに市町村にある住民基本台帳システムや会計事務所にある確定申告書の控え、会社に保管されている『給与所得者の扶養控除等申告書』には住所や家族構成が書かれてある。
「じゃあ、マイナンバーが導入されるからといって、情報が引き出しやすくなるわけじゃないのか?」
「まあ、そうとも言えますね。だいたい、マイナンバーは情報提供ネットワークを通る際に各機関別符号に変換されてからやり取りされますから、個人のマイナンバー自体があっちこっちで使われるわけではありません。つまり、自分のマイナンバーが使われる場面は限られているわけで……そうしたセキュリティーを破るのは至難の業です」
 そこまで言うと、有明がニヒヒと笑う。
「でも、穴がまったくないわけじゃありません」
 そうなのか!
「マイナンバーが、インターネットと繋がっているところもあるんです」
「どこだ?」
「『情報提供等記録開示システム』、通称マイナポータルです」

           「マイナンバー殺人事件!」字数制限のため 明日のブログにつづく
――――――――――――



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最終更新日  2015.10.18 01:53:30
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