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2007.05.14

３年連続でことしも１週間ほどドイツに出張してきたのだが、何に驚いたかと言って、物価である。上陸してすぐ売店で コカコーラ の500mlボトルを買おうとしたら、 日本円にして400円 もしたのである。

別にドイツの物価が上がっていたわけではない。たしかにVAT(売上税)がいつの間にか19％に上がっていて、買い物するたびに2割増のカネを払わなければいけなくなっていた、という側面はある。

しかし主因はそうではなく、この数年で円やドルのユーロへの対価がガーンと落ちていたことにある。

ほんの数年前までだいたい 「１ドル＝１ユーロ弱」 だったが、今では１ドルが 70セント の価値しかないのである。円に至っては、1ユーロに両替するのに 170円 （＋手数料）も出さなければならない。

ドイツの物価は、たとえばコカコーラが2ユーロ、ガソリン１リットル1.3ユーロ、近距離電車が2ユーロ、三ツ星ホテル80ユーロといったところからすると、だいたい「1ユーロ＝100円」あるいは「１ユーロ＝１ドル」の感覚だと思う。

ところが、駅で50ドル札を両替に出して返ってきたのは、驚いたことにたったの30ユーロに満たないのである。両替レートが１ドル＝0.7ユーロ弱で、手数料に5ユーロ取られたら、29ユーロしか返ってこなかったのである。
6000円以上の価値のある 50ドル札 が、ドイツでは たった3000円程度 の価値しかないことになる。

これが日本円だとすると、１万円札を出して両替に出しても、手数料を引かれると50ユーロちょっとしか返ってこない。１万円がドイツの現地ではほとんど半額程度の価値しかないのである。

日本ではいまだに１ドル120円くらいと比較的ドル高が続いているのでなかなか気づかないが、実は、円の価値はドルと 手と手を取り合って 下落しているのである。つまり、１ドル120円で円安ドル高だなあ…なんて思っていると、対ユーロではさらに輪をかけて円の価値が下落しているのである。

これはユーロに限った話ではない。
ほんの１～２年前まで、１カナダドルは85円程度だった。ちょうど円が最強だった頃の対米ドルの交換レートの感覚である。
これがいまでは、 1カナダドルが110円以上 するのである。もう米ドルと変わらない交換レートではないか。
これはきっと、対・中国元にしたってそうだ。

何を言いたいかというと、日本人はついアメリカを見ているだけで世界とつながった気になりがちだが、実際は知らないうちにアメリカはもはや世界の中心ではなくなっていて、自分自身の位置を確かめるための基準の役割を果たしていない…ということなのである。

自分とほぼ同じ速さで落下している大きな物体しか目に入らなかったために、その大きな物体を背景に見立てて「自分はやや落ち始めているようだ」…と思っていたのが、実はその物体自体が急速に落下していて、自分は実はさらに超高速で落下していた…というような状況である。

ちょうどアメリカが国際世論を無視してイラクに戦争を仕掛けた頃を境に、なんだかアメリカの知らないところで世界の中心はEUにシフトしていたのではないか…という気がしてきた。イラク派兵をはじめブシュのアメリカに追随してきた日本＆日本人は、そうとは気づかずに「皆から見放されつつある親分」の負け子分になりつつあるのではないか。

そういうビッグ・ピクチャーからすれば、円安・ドル安なんてのはそれがたまたま表出した些細な現象に過ぎないのかも知れない。米ドルで給料もらってカナダに住んでいるワタシにとっては死活問題なんだけどサ。

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