日々のあぶく?

日々のあぶく?

February 15, 2006
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カテゴリ:
The Inimitable Jeeves

donmaboさんが西之園家執事・諏訪野(SMシリーズなど)や瀬在丸家執事・根来(Vシリーズ:どちらも森博嗣)好きにお勧めと紹介していらしたので飛びついてみました。

ジーヴスの職業は「執事」と訳されているが、実は家事一般を取り仕切る(butler)ではなく、
紳士の身のまわりの世話をする紳士(gentleman's personal gentleman)であり、厳密にいうところの「執事」ではないらしい。
確かに諏訪野氏や根来氏よりも若く、主人(バーティ)に年齢が近いことを差し引いても、ジーヴスの主人に対する態度は時に不遜である。
まぁ、主人の格や彼らの性質によるものかもしれないけれど、執事よりももうちょっと近しい関係にも見える。
丁寧に対応し、主人が目覚めたきっちり二分後に紅茶を運ぶ姿は執事そのものだけれど。

とある策略に対し、主人に聞かれなかったから言わなかったなどというささやかな悪戯心(?)は短編の際の諏訪野氏っぽいといえないことはない。
まわりくどい表現をしたが、要はなんだか気に入ったぞジーヴス!ということ。

ジーヴスの主人・バーティことバートラム・ウースターはアガサ伯母さんに頭が上がらず、
恋多き友人・ビンゴに振り回され、毎回、彼への協力を断れず巻き込まれる押しの弱い男でもあり、
従兄弟の誘いにのって賭け事に勤しみ、時に彼らにお金をたかられるだけの財産はある独身男性。
働かなくとも暮らしていける、労働者階級からは煙たがられる階級。
ちなみに、この物語の語り手はバーティである。

大半はビンゴの恋が占めている。
ウェイトレス、家庭教師をした家の娘、革命家、牧師の娘などなど、彼は目に映る女性全てに恋をする(のではないかとバーティは言う)。
彼の恋の成就、時に彼の伯父への金の無心のための相談を受けるも、結局解決するのはジーヴスの知恵(策略)である。
その他にもアガサ伯母さんの推し進めるバーティの縁談を潰したり、
彼女に世話を押し付けられた知人や従兄弟の起こす問題を彼女に責められない程度にすり抜けたり、
賭け事への策略をめぐらせたり…
ジーヴスは親身に解決することもあれば、周りまわって自分の利益のために策略をめぐらすこともある。

バーティは悪い人間ではないのだが頼りなく、自分で問題を解決しようとすると裏目に出てしまい、ジーヴスの力を借りる羽目になる。
そんなところにも彼らの力関係(主従関係とは別)が現れており、
ジーヴスへの恩返しにバーティは彼(ジーヴス)の意に添わないものを手放す羽目になる。
真っ赤なカマーバンド、紫色の靴下、水色のスパッツ…誰かにあげたり、捨てられたりとジーヴスのお気に召さない主人のお召し物はそんなときにそっと姿を消す憂き目にあうのだ。
ラストはビンゴの結婚だが、彼の伯父にウェイトレスだった妻を認めさせるためにジーヴスがとった策とは…

問題解決のためには自分の主人さえもこき下ろすジーヴスにニヤリとさせられる。

ウッドハウスの小説はイギリス的笑い(ユーモア)の古典といえるくらいの代物らしい。
ジーヴスシリーズは(森村たまき訳のウッドハウスコレクションとしては)全三巻となっているので、読破していきたいと思う。





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Last updated  March 1, 2006 10:29:09 PM


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