日々のあぶく?

日々のあぶく?

April 20, 2006
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各界の「怪しいものには一家言ある」御仁たち15人と語りに語った対談集。

まず一言「濃い」(笑)
専門の方達とも対等に渡り合える京極氏の博識さには改めて舌を巻く。
彼が色々な分野(歴史学、民俗学、妖怪学など)の架け橋となり、
ますます妖怪(怪異)研究がすすめば面白そう。
実際に進んでそうであるし。
ただ、妖怪は気になったりするけど、詳しくない者が読むには興味深くて面白いのだけれど、
当たり前に話題に上る文献、事象を知らない訳で、ちと難しいところもありました。
でも、面白かった(笑)

水木しげる・
言わずと知れた漫画家であり、京極氏の師。
師弟の出会い、水木氏の妖怪界における多大なる功績をたたえ、水木ロードや世界妖怪会議、
生命の話、日本への妖怪大国への勧めにて幕を閉じる。
水木氏の国や地域によって呼び方、姿形は変わっても大体千種類くらいの妖怪が地球上の普遍的な存在とする「妖怪千体説」は
人間が形にし理解する範囲が"千"という能の限界値にも言及。

養老孟司・
脳の仕組み、変遷と妖怪、日本語について。
目の作家(視覚系)、耳の作家(聴覚系)という分類は面白い。
日本語は世界に冠たる視覚言語だと養老氏。(文体実験、言文一致か否かなどが関わってくる)
妖怪の典型として水木氏を上げる両氏。水木氏と養老氏の対談もあるらしい。気になる。
(「見える日本、見えない日本 養老孟司対談集」「水木しげるの妖怪談儀」などに入っているらしい)
脳社会、都市が出来て妖怪が誕生したという立場の京極氏。
水木氏が戦略の元「ゲゲゲの鬼太郎」を描いていたという暴露(?)もある。
都市伝説と妖怪の差異についてもちょろっと言及。

中澤新一・
言語にとっての妖怪とは。
京極氏のルーツはミステリーのルーツ(海外)ではないとの切り出しから
鶴屋南北、河竹黙阿弥、上田秋成、曲亭馬琴などについて対談。
柳田國男、折口信夫、南方熊楠らのこと、ポケモンは百鬼夜行、式神、使役に繋がるというのは他の人との対談でも出てくる。
ダンディな悪について。自然と言う意味を内包していた昔の日本語における「悪」

夢枕獏・
晴明を皮切りに話は進む。「陰陽師」をはじめる前に「今昔物語」の源博雅に惹かれ、芋ずる式に晴明に辿り着いたと明かす夢枕し。
「分かった」と言うのは嘘かもしれないのに、それで納得してしまう。
晴明=ホームズ、博雅=ワトソンの構図、憑き物落しになる構図。
「式(神)」のルーツ、役行者、修験道、密教僧、など多岐に渡って展開。
「名前」によって存在する妖怪。

アダム・ガバット・
妖怪愛好家が気付く「妖怪とはバカバカしいもの」と言うのを皮切りに豆腐小僧などについて語り合う。
笑いとオゲレツ、お約束について。

宮部みゆき・
陰陽師、晴明ブームについて、ゲームで扱われる陰陽師の位置と実際の存在、扱いの違い、違和感について。
そこから派生し、魔女について、術のリスク、闇の存在意義。
リアルと特別視、死の感覚の気薄(生活に密着しなくなった)による犯罪、
宗教と流行り神、共同体(村など)の秘密の崩壊、
死の感覚、死して残る個人ということから生まれた幽霊と妖怪の別離など。
「闇」を担う専門職が処理してきた問題を、表の人が使い始めて起こった変化。
同じだけれど、機能が違う「祝い」と「呪い」、公になることで否定され、歪む新興宗教、
京極堂シリーズを例にとっての説明ありは嬉しい配慮。
よく分からないものに形と名前を付けて、初めて退治できるシステムによって生まれた妖怪。
「百鬼夜行絵巻」、器物妖怪、狩野派の絵師による妖怪絵巻について、
現代では水木氏、手塚治虫についても。

山田野理夫・
地方の民話、妖怪を紹介している方。
「遠野物語」の誕生秘話。文学ではなく、生の資料にした柳田と、話を提供した人々の葛藤、
学問としての民俗学と言うスタンスについてなど。

大塚英志・
民俗学を学び、そこから離れてまた戻ってきた大塚氏。
柳田國男の弟子から学んだことがあるからこそ分かる、言えることからも展開。
リアリズム、反自然主義小説…

手塚眞・
妖怪好きの彼、・手塚治虫の描いた「「どろろ」秘話は貴重。

高田衛・
近世文学者。
祐天上人のこと、京極堂シリーズをはじめとする京極氏の著作から色々展開。
「八犬伝」の構図を探りつつ、小説を構想する手本は馬琴だと京極氏。
と、いうことは京極堂シリーズもえらい広がって、壮大になって、ずーーーーーっと続くということか!?
ストーリーとテーマ性のある現代小説について。山東京伝について。
鳥山石燕と馬琴。「京極 八犬伝」誕生か!?楽しみ。

保坂正康・
ノンフィクションと小説。
「京極堂シリーズ」の"死なう団事件"を例にとって、史実を扱っても知らないものにとってはフィクションとなる。
個人の自我を担い始めた「幽霊」、それまで個人の名を冠したのは祓うための「怨霊」化だったことについて。

唐沢なをき・
漫画家。雑学王の唐沢俊一氏は実兄!
「日本のお化け話」「妖怪図鑑」等、(子供向け)図鑑の変遷を思い出と共に厚く語り合う。

小松和彦・
民俗学者。
民俗学者の視点、研究姿勢から妖怪を語る。
妖怪伝承資料のデータベース化も実現。 怪異・妖怪伝承データベース
フィールドワークのついて。
「妖怪学」について。"妖怪"という名称にまつわるあれこれ(定義の難しさなど)、"妖怪"以外の命名の必要性について。
「慰霊」が新しい言葉だというのをはじめて知った。
"なぜ、水木しげるは受け入れられしか"、民俗学との位置関係。

西山克・
歴史学者。
妖怪ではなく、なぜ「恠異学」か。
歴史学の観点から「妖怪」を語る。
国家レベルで怪異を扱っていた歴史。(不吉だといって行なうお払い、それによって国を治めていたという危機管理体制について)
歴史学の中での怪異は政治の問題にも関わり、民俗学においての妖怪学とは(学問の)出発点が違う。
歴史学と民俗学、出発点は違えど、協力、交流の必要性を京極氏はどちらでも(小松、西山両氏に)力説。
「都市伝説」についてもちらっと。

:化野燐氏のことも話題に上る。:考古学をやっていたとか。
「彼」、とあるということは化野氏は男性なのか?

特別収録・鼎談(3人)
水木しげる・荒俣宏:
睡眠力こそ全ての源!
寝るほどに寿命が延びると語る水木氏に、「それならば(睡眠時間の少ない自分の)寿命は尽きている」と応える京極氏。
師を交えての鼎談らしいサービスあり。





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Last updated  April 20, 2006 12:19:28 PM


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