日々のあぶく?

日々のあぶく?

January 14, 2007
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となり町戦争 」 「 バスジャック 」に続く新作。

三崎氏はありえないような突飛な設定を、実際にあるように見せる、設定を使いこなす、構成するのが本当に上手いなぁとつくづくうならされる一冊。
人がいなくなるというのは恩田陸の「月の裏側」を彷彿とさせるが、設定、定義、それに対する人の対応などはもちろん違う。
7本の短編がそれぞれバラバラの様でいて、少しづつ進み、一本に繋がる。
少しずつ繋がりながりながら明らかになるところもあれば、ならない所もあり、そのバランスもいいように思う。
いや、町が何故人を消滅させるのか、その町にいた人々はどうなるのかが明かされないのは非常に気になるが。

三十年に一度起こる町の「消滅」。
その"町"の住民は忽然と失われ、閉鎖され、その住民にかかわるものは回収処分の対象となる。
消滅する町の住民は町に順化され、自分達の消滅を受け入れているが、
消滅するまで周囲の町の人々はそれを知らず、突然失われるのに「余滅」と「汚染」を防ぐためにその住民の消滅を表立って悲しむことは許されない。
そんな「町」によって消滅した人々の喪失を抱える人、回収に立ち会った人、闘う決意した人、それぞれの想い、悲しみが描かれる。

~ネタバレあり~

プロローグ、そしてエピローグ
潤が残した「音の種」から20年近くかけて醸造してつくりあげた「消滅対抗音」。
新たな町の消滅に対処する由佳、側には本体のひびきが。
町に潜入し、「消滅順化」に抗い、情報をもらしたため、意識を失った別体のひびき。
前統監で、新たな一歩を確信してなくなった桂子。
そして、町にはただ一人、消滅耐性を持ち、消滅に対して親和性があるのぞみが残っていた。
新たな町の消滅は阻止できるのか―
そのころ、町に取り込まれ、27歳のまま、意識上の年を取れなくなり、声を奪われていた和弘が茜のことを呼び、町から開放されていた。

エピソード1 風待ちの丘
茜に出会い、ペンションを再会する中西。由佳はペンション再開第一号となる客。
理不尽な消滅。だが、突然人を失うことは(事故などでも)ある。
何故悲しんでは、考えてはいけないのか。余滅は本当に起こりうるのか。謎は多い。

エピソード2 澪引きの海
桂子の喪失感と新たな希望が描かれる。

エピソード3 鈍(にび)の月映え
茜と和宏の出会い。
大事な人から預かった古奏器とともに、記憶のないままにギャラリーに通い続ける和宏の月ヶ瀬の家の回収に立ち会った茜は
彼の思い出せないが喪失感を彼に抱かせているる彼女(潤の姉)の絵をそこで見つける。
好きでも喪失感も手伝い茜を受け入れない和宏は月ヶ瀬に入る。
茜は少女と白瀬の協力により、和宏を救い出すが、彼の意識は「町」に取り込まれていた。

この後、和宏は声と表情を失い、現在の月ヶ瀬に意識を飛ばし絵は描けるも、
27歳の意識のまま、茜とともに過ごす日々を記憶することは出来なくなる。

切ない話だが、茜の決心、生きる姿は美しい。

エピソード4 終の響い(ついのおとない)
「分離者」「本体」「別体」とまた新たな設定が。人格分離者(一つの身体に二つの心)が実際に身体を二分できる(二人になれる)ということ。
「本体」「別体」は片方が死ねば、その時点でもう片方も死ぬ。
だが、消滅に関しては誤差が生まれる。(「町」が完全消滅する時にもう片方も取り込まれる~意識だけ町に奪われる~といった具合)

エピソード5 艫取り(ともどり)の呼び音
消滅だけでも不思議なのに、聖域の宗教観なども盛り込まれ、どんどん異世界に引き込まれる話。
脇坂の正体が明らかになり、彼と共に生きる為に試練に立ち向かう桂子。
彼の残した「澪引き」の意味とは?

何も失わずして望むものは手に入れることが出来ない。そんな厳しさもあふれる。

エピソード6 隔絶の光跡(しるべ)
美少女で孤高の存在感を見せながらも、周囲(特に男性)の騒音排除の為、由佳は同じ学校で人気の勇治に付き合う振りをしてくれと持ちかける。
彼女の目的を知らないままに協力するも、由佳に惹かれはじめる勇治。
突然の別れ、そして、数年後に再会した二人の立ち位置は大きく離れていた。

エピソード7 壺中の希望(のぞみ)
自分が消滅耐性を持つ生き残りで、実験体として扱われていたことも、両親が養父母だったことも知らなかったのぞみが、由佳、桂子、ひびき、茜らと出会う中で揺れ動く。
相変わらず茜の潔さがカッコ良い。

エピローグ、そしてプロローグ
月ヶ瀬消滅の日の潤、彼の姉、和宏が描かれる。
本当に終わりの始まり。

エピローグ~、プロローグ~のタイトルがまた秀逸。
プロロ~グ、~は時系列的には最後でありながら、それぞれが歩んできた道を踏まえ、新しい「町」との戦いの一歩を踏み出す希望と不安を描いている。
エピローグ、~は月ヶ瀬町が失われる日の住民を描いていて、潤の想い、町によって選ばれた「残る人」和宏の思いの一端に触れることができる。

細かく、長くなってきたので登場人物紹介を兼ねたつれづれメモは→ コチラ





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Last updated  January 17, 2007 02:33:38 PM


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